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『読書』通常攻撃が全体攻撃で二回攻撃のお母さんは好きですか?


 おはようございます。秋雨です。
 タイトルの作品、井中だちまさんの『通常攻撃(略)ですか?』が話題になっていたので、読んでみました。

 ファンタジア文庫の大賞作品で、かなり売れているみたい。売れているということは、たくさんの人に支持されていて、支持されたぶん、評価がたくさん分かれてるということ。


 わたし個人の「好き」か「嫌い」かでいうと、結構、微妙なところ。
 理由をあげてみます。


 まず始めに読んでいて思ったのが、これは『お母さん』を擬人化した作品なんだなぁ。ということ。

 艦これをきっかけに、一時期いろんな『擬人化』ものがでていた記憶があります。こちらの作品も『お母さんというモノ』の特徴から、カワイイ二次元美少女に変換したタイプの作品です。

 ゲームのことはなんにも知らない。なのに色々と勘違いして口出してきてうっとおしい。でもそういう欠点やマイナスポイントを、美少女がやっているのだからカワイイ。許しちゃうぜ。

 さらに俺のために不慣れなことを、一生けんめい頑張ってくれてるぜ。お母さんなので料理や掃除は得意だぜ。萌えるぜ☆ 

 という『お母さん』擬人化。
 タイプは違えど、のじゃロリ、のような属性をもったキャラクターですね。

 お母さん。サブヒロインで熱心な信者がつくパターンだと思います。だけどこれはメインヒロイン(仮)に、お母さんを持ってきた。義理でもなく、血が繋がっているので、ルートは無い。たぶん無い。


 これ、ぶっちゃけ言うと、わたしの大好きな『冴えない彼女の育て方』の、加藤恵さんにそっくりなんですわ。というか加藤を幻視した。


加藤(お母さん):
「もう~、本当に毎日ゲームばっかりして。しょうがないなぁ。
 わたし本当に知らないからね。でも仕方ないから付き合ってあげる。
 君が大好きな、ゲームのこと、わたしにも、教えて?」

加藤(お母さん):
「どうして、って? そんなこと言わせないでよ。だって君のことが、私にとって、一番たいせつだから。君を一番たいせつにしているせいで、悲しいことが起きたり、つらいことが起きたりもするけど、今は君が一番なんだから、仕方ないよね?」

 
 加藤、結婚しようぜ。

 いや、そういうことを言いたいんじゃない。

 いわゆる「なんなの? 女神なの? ダメ男製造機なの?」というタイプ。一歩間違えると、ただのダメな男にひっかかるダメな女性の心理なんですけど。だがそれがいい。という。うん。そういうの。

 ただ、『加藤』という女子高生が、この世に実際にいるか。と言われたら、結構それは都合が良い話で、いるけどいない。たぶんこういう子はいるけど、私のところには現れない。という絶妙なラインに在るのに対して、このお話の『真々子』さんは、外見はありえないにしても、かなり確実にいる。

 現実のご家庭、1クラスのお母さんに一人ぐらいの割合、5%でドロップする程度のレアアイテムと同じぐらいの確率で実際にいる。外見を除いて。と感じさせるところが、おもしろいと思う。


 たぶん、というか確実に、こういうキャラクターをだすなら、義理の母や、お姉ちゃんにした方がいいのでは? とか、これなら主人公の他に、身内に妹や従妹もオプションでつけたら? という意見は絶対にでると思うし、たぶん私も口を挟んでしまうけど、そういった『二次元特有のありがちなイメージ』を排除して、メインヒロインを実母にして、子煩悩だから、子供は一人で長男しかいない。やや過剰な愛情を注いでいるのだ。という設定に説得力をもたせている。

 イコール、作者の方が『そこだけはぜったいに譲らん』という強いイメージをもって書いたのが分かった気がして、むしろその点が一番おもしろかった。(こういうのを想像して、一人で勝手に笑ってしまう)


 でも同時に、物語の難易度は非常に高くなる。


 冴えカノの例をだしたから、加藤で例えてしまうけど、加藤の強みはやっぱり、何も知らない無垢で普通の女の子。という要素があった。

 この子がどんどん、オタクになっていく。最初はどれだけ熱量を持ってゲームやアニメを語っても「あ~、はいはい」と言ってたのが、だんだんと「あー、はいはい、こういうこと?」「あー、はいはい、じゃあこういうのもいいんじゃないの?」「あ~、はいはい、言ってることはなんとなくわかるよ。でもそれってこういうことでもあるよね」

 と、言ってることや、態度はまったく同じなんだけど、あきらかに、理解深めてるよな。コイツ、ぜったいに俺のこと好きだぜ……という錯覚(幻聴)に浸らせてくれるわけだけど、『お母さん』は、それが難しい。

 べつに加藤に限らず、戦艦を擬人化した『艦娘』との妄想だったら、提督(=プレイヤー)と恋人になったり、結婚したり、子供作ったりと、一般の人でも妄想がはかどるわけだけど、

 この作品は『お母さん』を擬人化している以上、どうしてもブレーキがかかってしまう。物語を続ければ続けるほど、アクセルが強く踏み込めず、現実に引き戻されるというか、冷静な判断が働いてしまう。

 ようするに、リアリティが、足を引っ張ってしまうのだ。

 ストーリーも、異世界転生ものによく似た構成だから、おそらく話を続ければ続けるほど、『お母さん』の可愛さが、それこそ本当に求められるストーリーにとって、うっとうしい、と思われる懸念が発生する。

 その点をクリアするのは、本当に、ものすごく難しいと思う。

 話の変換先としては、主人公と同境遇のワイズちゃんがいるから、この子とくっついて、お母さんは応援する。という形にできなくもない。

 でもやっぱり、それなら、二次元寄りのありふれた設定、義理の母子にしたり、同じ家に妹やら従妹やら幼馴染がいたり、の方が向いている。

 実母、長男一人の『リアリティ』を優先したために、じゃあ、物語が大きくなっていくと、どうやってお客さんの関心を惹いていくのか、『お母さん』よりも魅力的な女の子を、恋愛対象としてメインに据えるのか。それとも主人公の成長や変化に重きをおくのか。この辺りの要素が、ものすごく複雑で難しくなるなーと思ったり。

 それで話を戻すのだけど、「好き」か「嫌い」かでいうと、微妙だと思ったのは、続きの妄想が捗らないからという、超個人的な事に気がついてしまった。うん。最低な理由だなぁ(諦観)
 

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