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記憶の魂。


 ――科学的根拠のない話。

 〝臓器〟を他人に移植すると、元の臓器をもっていた人間の趣味や嗜好が、移植先の人間へのり移る可能性が確認されている。

 それは、移植先の人格を変えてしまう程であったり、時に幻覚や幻聴を巻き起こすといった場合も見られる。

 しかし「記憶」という媒体を司るのは、一般的に「脳」のはずである。

 特に海馬といった部位は最重要機関であり、日常生活を始めとした、長期的な記憶から瞬間的な記憶をも蓄積するといわれるが、これとはべつに、脳以外の肉体組織にも、実はそれぞれに「記憶」を保持する何らかの機関、あるいは細胞が存在するのではないかと言われている。

 一部では、これを『記憶の魂』《メモリアル・プシュケー》と
 呼んでいるそうだ。

 すなわち、人間には、科学的根拠で解析された「記憶」の他に、いまだ科学では判明しきれない、霊的な存在――魂のような概念が『記憶』といったモノにも存在する、あるいはそれこそが、真の魂《プシュケー》と呼ぶべき存在ではないかという考え方だ。

 もしも、それが実在したら。

 人々は臓器の移植をせずとも〝最少の記憶単位〟として、その魂の抽出を可能とする技術が誕生するかもしれない。

 そしてやがては、その技術が『共有して可視化される未来』を引きおこし、自分の肉体を《転送》して再現してみせたり、架空の機械生命体に植えつけたりすることも可能になるかもしれない。

 わたしは考える。

 ――さて、この「記憶」は、一体どこからやってきたのだろう?

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