「やがて恋するヴィヴィ・レイン2」を読み終えました。
最近は資格取得に向けて、専門書や技術書ばっかり読み漁る日々です。その他、兄上から進呈された経済の本も少々。さらに合間に、好きな作家さんのライトノベルを読むのが日課になりつつあります。
タイトルは、ヒロインのお姫様に恋した魔王の胸中と、わたしのメインヒロイン、アステルちゃん様の名言から。動かないアステルちゃんをお世話したい。今日の晩御飯はカレーうどんだよ。散るよ。誰か早くアステルちゃんに「あーん」できるアプリを開発するんだよ。3万円までなら課金します。はやく。
軌道修正。
やがて恋するヴィヴィレインは、19世紀ロンドンの産業革命を下地に制作されているらしいです。煙突の煤埃で、肺炎を患う労働者や、水質汚染の問題が、作品にも顕著に反映されています。
そんな「奴隷」階層から、魔王として成り上がるルカを描いた中世ファンタジー小説です。こう書くとアレですが、魔法はでません。イメージでどうにかする描写もありません。
犬村先生の作品の主人公男子は「世間知らずのお坊ちゃん」をテンプレとした発言や行動が目立つのですが、今作の主人公「ルカ」は、最初から身分が低く、両親もおらず、一人で地べたを這いずり回って生きてきた経歴を持つので、最初から大人びています。
ただ、現代の社会性のおかげで、辛酸をなめているので、金に意地汚いというか、直接的な損得を尊重している。2巻で彼をよく表している描写が下記。
(引用)
「……命令です。重くても背負いなさい」
「……無茶苦茶です。……おれにメリットがない」
「……報酬が必要ですか」
「……ただ働きは、ちょっと」
(中略)
「……不足でしょうか」
「あ、いや、お釣りが……」
我ながらなんという情緒のかけらもない台詞、と絶望するが、思考回路はぐだぐだにとろけて使いものにならないので仕方ない。
「……ふしだらな女だと、軽蔑しますか」
「い、いや、全然! ていうか、あの、おれ、いまなにしました?」
「お……覚えてないの!?」
(ここまで)
ルカ、この野郎。
ここでか! ここでヘタレ王子(カル)の遺伝子を引き継ぐかよ!? 犬村さんは、ヘタレ男とツンデレを書かせたら、天下一品だと思います。このシーンの直後で、悪い大人が「貴様ァ! 下賎の身でありながら姫様になんてことを!」とか言うのですが、わたしも混じりたかった。「貴様ァ! もっとしっかりしろー! キスで済ませるとかそれでも男子か貴様!(ネタバレ)」
軌道修正(二回目)
物語の特徴としては、騎兵戦が主となる戦場の中で、オーバテクノロジとして(戦車や飛行機という兵器をすっとばし)「二足歩行のロボット」が存在するという点です。
このロボットは、上層エデンと呼ばれる「謎の場所」から下賜されてきます。下賜される物を頂戴するには、彼らに「GP(グレイスポイント)」と呼ばれる、独自の通貨を払わねばならない。
この通貨には関税の自主権というものはなく、完全にエデン人の気まぐれで値を設定されているようです。
地上の民は、エデン人が求めるものを行う――それは宝石や人材を送ることであったり、戦争を「見世物」として行う――代わり、一方的な額のGP(ゲームのゴールドやギルと同じく、仮想上の値と思われる)が付与されます。
いわば、通常の王政貴族の上に、さらに上の『天上人』が存在する構成になっています。SFっぽいですね。
さらに下賜されるロボットは下位の者のみであり、自我を持つ最上位型は、もはや過去の遺物、古代技術となっていて、エデンですら再現できない代物だという。それぞれの機体には『現実の天使名』が付与されており、最上位の一機は「ミカエル」の名を冠している。
アステルちゃんはミカエルに搭乗するが、わがまま天使に「我を乗りこなしたければ、ヴィヴィ・レインを連れて参れ」と言われ強制射出されてしまう。
ヴィヴィ・レインとは、なにものなのか。どうも人名らしい、という事は把握できましたが、それ以外の一切が不明です。魔女っぽいから、正体は女性かそれに近しい一族。と予想はできますが、その正体を探っていくのも面白いところ。――と、ストーリー、キャラクターも魅力たっぷりなのですが、わたしが特に好きなのは、この世界の舞台設定です。
ヴィヴィ・レインの世界は三層構造に分かれています。
エデン、グレイスランド、ジュデッカ。この三層は3000Mの壁で分け隔たれており、行き来できるのは「機械竜」と「飛行船」を持つ、高度文明のエデンのみ。
2巻までは、ルカ達が暮らす王政政府のグレイスランドが描かれます。残るは「魔物」が跳梁跋扈するという、最下層ジュデッカ。ここに古代兵器の秘密がありそうな雰囲気たっぷりです。
きっとジュデッカにある迷宮パンデモニウムを下層部まで降りていったら、遺都シンジ〇クとか出て来てユグドラシルシステムがうんぬんでさらに奥深くにはコアがあって(削除されました)
上述したとおり「魔法」や「魔術」といった超概念は存在せず(存在していたと思われるが既に失われている)旧式の長銃を持った歩兵や軍馬が入り乱れる戦場に、GPで買い取った、量産型ロボットが戦場の要として暴れる。という絵になっています。
その中で、ロボット自体をぶっ潰すパワーを持つ、我らがヒロイン星昌獣を召還……ではなく、アステルちゃんが活躍するのもポイント。1分だけ暴れると腹ペコになって動けなくなる可愛さよ。
文章にまとまりがまったくありませんが、平たく言えば、
ファンタジー+(ひっそり)SFでしょうかね。
超わかりやすくいえば、ふぁいにゃる・ふぁんにゃじー6 です。
犬村小六さんの作品は必ず、普通の地球上にはない法則だとか、世界の境界的な概念が存在して、その線を超えない内側で収束する物語である特徴があります。そういうの、すごく好きなので、次巻も楽しみです。
なにより、2巻でアステルちゃんの生存フラグらしきものが立ちました。
もう大丈夫! 大丈夫だよね! モブ、脇役は容赦なく殺す犬村先生だけど、アステルちゃんメインヒロインだから関係ないもんね!!
闇の声:
「しかし人造人間ゆえに、寿命がなくなり、ルカが死んだ後も生き続けるエンドとかになったらどーする?」
わたし:
「あああああああああああああ!! アステルちゃんんんん!!!!」
ダメだ。不安しかない。3巻買ってきます。