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【自主企画】読んでいきます。②

(ちょっと修正)

【紅心中】
 mifaさんの作品。たぶん完結済・全文68000字。
 

 あらすじ初見感想:
 人食いもの。あるいは『人食い』の価値観と、それに絡めた恋愛物語。
 ライトノベルで類似テーマを描いた作家さんとして『電撃文庫作家:紅玉いづき』さんがいる。脳内で勝手に比較しつつ読んでしまうと思った。
 
 主人公が喫茶店店主。そこで「食う対象」を網を張って待ち構えている。要素としては、けっこう目新しいのではないか。あとラノベのテーマで「喫茶店」というのは『要素として強い』ように思う(個人的主観)。
 読書好き=コーヒー=喫茶店 とかの因果関係が成り立つからかなぁ。最近の日本だと『タレーランの事件簿』をはじめ、海外でも喫茶店のオーナーが探偵役を担ったり、刑事の相方として活躍する著作は多い。人気もある。誰かこの辺りの因果関係を論文で発表してください。あれば教えてください(個人的興味)
 
 ・ch7が面白いとのこと。喰らうシーンはch5かららしい。
 興味があるのでch5から読んでみる。

ーー*

【本文を読んで思ったこととか】 

 ・主人公が変態だな(褒め言葉)
 ・一人称が「僕」の男による、人肉の描写が延々と続く。
 ・変態である(強調)
 ・最期まで食わずに逃げた。ヘタレの変態である(ひどい)

 ・シーン切り替え、ウル独白。
 食べなかった理由が述べられる。理由は「今は満足できないから」
 ヒロインがもっと美味くなる可能性がある。

 こう書くと誤解を受けるかもしれないし、貶しているわけでもないけれど【オタの妄想の極致】である。素敵である。二次元で現れた好きな子を、自分好みに育てあげ、美しく育ったところを「食べる」。

 作品の要、ヒロインの「ノラ」をどれだけ可愛く書けるか。萌えられるかですべてが決まるといっても過言でない、一点特化の作品。

 ノラの属性をあげるとすれば『薄幸の美少女』である。

 作品の構成的には、喫茶店を営むお兄さんの下に、薄幸の少女がやってくる。可愛いぞ。手を出しても肉体を損傷レベルで食っても強い抵抗を示さない。やったぜ。という内容。

 マナは誰だろう。ウルの奥さん? 
 途中から読んだので勘違い。ウル・ノラ・マナ・店長。ウルが店長ではなかった。ジュリアも出てきた。

【気になった点】
 あらすじから読んだので何とも言えないけど、世界観がやや不明。
 キャラクターの名前に統一感がない気がする

 「ウル」「ノラ」「マナ」「ジュリア」。

 ノラは和名で(野良)だろうけど、そうすると「マナ」が(真奈)とかの和名にも引きずられてしまう。ジュリアはたぶん欧米、ではあまり馴染みのない「ウル」はドコの人って、疑問が浮かぶ。

 フルタイムという単語が出てきた。意味はわかる。ただフルタイムという言葉が日本発祥なのか、元から海外で存在するのかちょっとわからないので、世界観がゆるんだ。
 とりま、ウルが働くのはチェーン店の喫茶店なのかな。店員さん多いし。先入観から個人店かと思ってた。

 ヴィジュアルとしては、金髪碧眼青年の主人公に、黒髪東洋系ヒロインの組み合わせでいいのだろうか。海外文学テイストの色が濃くなってきた。以前その手の作品を読んだ気がする。思い出した。

「ステファニー・メイヤー」さんの「トワイライト」である。主人公のエドワードが完全無欠のイケメンヴァンパイア。エリートで金持ち。ヒロインを食べたいけど食べたくない。二人は同じスクールに通っている。当然彼の方はモテモテであるんである。どう見ても少女マンガです。いわゆる女子が憧れるシンデレラストーリーの形式になっていた。

 で、ちょっと疑問。余計なお世話を承知で浮かんでしまう。紅心中のメインとなる対象読者は「男子」と「女子」のどちらなのか。この話の設定は、登場人物の名称や「人食いの種族」という特徴的なところから、現代ものではない。※後注:現代もので舞台は日本でした※
 
 ただ、ジャンルとしては、間違いなく【ファンタジー】である。類似作品としてあげた紅玉さんの人食い話であるが、これもやはり男性側が「王族など身分の高い存在」として登場し、自らを食べてほしいと懇願する少女を(結果として)救済する存在として現れる。

 そういったところまで吟味すれば、主人公ウルの経歴や立場が、やや強味に掛ける。最初の印象では、彼が喫茶店の店長(オーナー)であろうと思ったぐらいだし。という感じで余計なことを煮詰めていくなら、ウルの社会的地位を上げた方が、読者からは好まれるという印象を受けた。この作品をチームで売り物として作っていくなら、話は必ずそちらに傾く。

 ノラがタバコを吸う。むむ、イメージとまたズレてきた。

 未成年だと思ってた。未成年が吸うなら吸ってもいいけど、場にいる誰もが咎めないということ。あと、未成年でないにしても、拒食症の気があり、気になる痩せた女の子がタバコ吸ってるのを見て、ウルは一声もかけないのかなぁとは思う。美味い人肉の味が恋しいのなら尚更のこと。

 風のクロノア、ファントムマイル。という単語。ゲームが元ネタ?
 わふー。裏メニュー、店長特製唐揚げおにぎりがでる。
 ……おにぎり、ということは、やはり日本……?

 やっぱり舞台となる喫茶店の背景が、ややちぐはぐな印象を受ける。冒頭から読んでいれば違うのかもしれないし、おにぎりは作品の緩急をつける為のコメディとして出されているのかもしれないが、「これはこういうものだろうな」と抱いている印象を、予備動作なくして仕込むのは、それまでの『作品のイメージ』をも崩してしまう。

 登場人物の名前に関してもそうであるのだが、なんらかの『一貫性』や『法則』がほしい。作者の方が大事にしているものに優先順位をつけ、それを読者と一部共有する形で、情報リソースとして提示してほしい。

 たとえば喫茶店の店内で、古いジャズが流れるのあれば、古いジャズ以外は基本的にかけないということだ。コーヒーを出すならソフトドリンクは出さない。海外の曲名とアーティストの実名が出るなら、日本の書籍作家は出さない。
 そんな感じで情報を取捨選択すれば、作中でジャズのうんちく話ができる。喫茶店のメニューも想像がつく。お店に立ち寄るお客さんの性別や年齢も『自然にイメージができあがる』そしてもっとも大切にできあがるのが【この喫茶店に行ってみたくなる】ということだ。

 余談だが、異世界転生はそういう意味でもやはり「強い」。
 
 イメージが可能であるということは『作者と情報共有できる』ということでもある。ちなみに、わたしもよく兄に叱られる。人のことは言えない。

 ただ今の状態だと読む途中で「あれ?」と首をかしげてしまうことが多い。文章が上手いし、作中の雰囲気が良いだけに、非常にもったいない。

 ch5から、???まで読んだ感想メモ書き。
 ch6を飛ばして、ch7を読む。

ーー*

【感想メモch7過剰書き】
 ・ウルがタバコを吸う。とても絵になる。描写がとても良い。
 ・「線香」という単語が登場。舞台が日本であると確信。
 作中イメージを変えて固定。
 ・ウルのお父さんらしき人が登場。身分高そう。

 ・ノラの投身自殺。さすがに驚く。ch6の間でなにがあった。
  父親との会話から偽装の死の可能性もある。
  あるいは、タイトルの紅心中という内容からウルも死ぬ?

【結末予想】:
 死は偽装。ウルとノラが身分を隠して、二人でひっそり生きる。仮にその結末が正解ならひとつの王道ではあるが【ハッピーエンド】に結びつくかは解釈のわかれるところ。


【素敵文章(引用)】:
 つくづく、一族のコネクションは強大だ。長命という特徴が、それほどまでに権力に直結するのだろうか。それとも、円滑に生きながらえるよう、程よく「不老不死」という単語を使って誘惑しているのか。
 もしそうならば、例えばどこかのお偉いさんは、僕らに口利きをしてくれる見返りとして、一族の血肉を食べるようなことをしているのだろうか。同じ人間の肉を喰らってまで、死にたくないのだろうか。

 作中のテーマないし、雰囲気がすごく出ている。ウルがタバコを吸っているという絵も、ハードボイルド的な印象を醸しだしている。静かなバックミュージックが脳内で響いた。

 確かにここがクライマックスで、あとは一息に完結に向かって物語が流れるという雰囲気。人食いという形にどう決着をつけるか。とても気になる。

【シーン変化。ウルとジュリアの会話】
 ジュリアの性別がよくわからない。男なの? 
 ジュリアって基本は女性名の気がした。舞台背景の設定でもそうだったけど、やっぱりこういうところが、すごくもったいないと思う。普遍的なイメージとズレがあるというか、作中の文章や雰囲気はとても良いのに(上記のウルがタバコを吸うシーンとか)、反して設定が取り入れ過ぎというか、作者さんの好きなもの、あらゆるジャンルを一つの物語の中にすべて放り込んでしまっているせいで、そこが合わないと、一度物語の外へ弾かれてしまう。

 ただ逆を言えば、作中のキーワード、趣味嗜好にぴったりハマる人がいた場合、この物語が強烈に突き刺さるということになる。それは読んでいてすごく感じる。
 おそらくその人にとっては、世にでて市販されたものよりも、この作品をずっとずっと大切にしてくれる。それは凄く素晴らしいことで、ネット小説なのだから、個人の作品とは本来かくあるべき。という主張になるかもしれない。

 でもわたしは今回『感想を書く側』である。感想を募って、あらすじまで描いて頂けたのがこの作品である。
 だから作者さんと同様に『わたし個人の意見』を優先するんである。その上で伝えるなら、このままじゃもったいないよ、である。

 各種設定に統一感を持たせて、一部の単語や構成をちょっと変えるだけで、これを「おもしろい」と言ってくれる人、最初から最後まで読了できる人は、かなり増えると思う。思うっていうか、確実に増える。ただその代わり、あなたの作品が、過去最高だと言ってくれる信者の人の評価は落ちるかもしれない。

 シーン切り替え。
 ウルと父親による電話の応答。不死者の死生観。殺意の実行。

 【殺意】の是非に、読んでいて少し疑問。
 ちょっと長くなりすぎたので割合。

【結末】
 ノラは生きていた。ウルは選択する。恋と死は同義。二人で死のう。
 心中はノラの願いでもあった。屋上から飛び降りる。
 ノラは死ぬ。ウルは『残機が一つ減って蘇生』
 裏切られる結末。
 最後はノラの独白。ウルの後日談とか、マナの内心とか。

 読者に「ノラ」は生きているのかな。と思わせて、やっぱり死んでいたという、ある意味で救いのない最期の構成が見事。途中から読んだのに、喪失感がものすごい。これはすごい。

 1章から読んでいて物語にハマっていたら、数日寝込む自信がある。

 ノラ、なんでや……なんで二次元の薄幸の美少女は死んでしまうん……ヘタレ男は生き残る可能性が高いのはなんでなん……。

 解釈としては、ノラが明確に死ぬ事を選択したトリガーは、ウルに一口だけかじられたから、でいいのかな。

 元々、世の中に対して希薄で死にたかったノラだけど、せめて最期ぐらいは『誰かの役に立ちたかった』と感じていた。だからウルに食べられてもいい。贄としての死を迎えるのが理想だった。

 でもウルは一口だけノラを齧ったあと、怖くなって逃げ出した。ノラは自分に贄としての価値観がないのだと判断した。もう死にたい。でも一人で死ぬのはやっぱり怖い。ウルが一緒に死んでくれないかなぁ。

 ウルはノラのことが好きになり一緒にいたかった。しかし人食い故に、彼女に生きることを強いたところで、最終的には自分が彼女を食べなくてはいけない。殺してしまう。それはできない。しかし好きな相手の願いは叶えたい。結論、じゃあ一緒に飛び降りて死ぬしかない。というラストシーン。しかし自分だけが生き残るウル。彼女を一口かじって、不死の力を手に入れてしまったことが要因。ただし『残機』が存在し、自殺を繰り返している間に、いつかは死ぬことができる。それを夢見て生きている=ヒロインであるノラと同じ立場になる。意志がループする。

【PR文章のあらすじ以外も読んでみたいと思うか】
 読みたくなった。というか、読まなくては、ノラの心情とか張り巡らされている伏線が理解できない構成。作者さん自身による「オススメの箇所」と、ラストシーンを読んだが故に惹き込まれた。最初から読みたくなった。

 設定がライトノベル的な要素がたくさんあったので、たぶん、ヒロインのノラが駆けあがる、シンデレラストーリーの一種だよねと思ったら、見事に(いい意味で)裏切られてしまった展開。

 後日、ちゃんとしたレビューになるように、きちんと感想を書きたい。ただこの話、結末ですべて持っていく話だから、ネタバレ除いて書いていくと難しそう……がんばります。

(5月15日)感想メモ初稿。

ーー*

2件のコメント

  • お読み頂きありがとうございます。
    あらすじが下手くそだったばっかりに、混乱を招いてしまい申し訳ありませんでした……。

    非常に丁寧な考察、指摘に感激致しました。せっかくなので、少しずつ手直ししていきます。誤字脱字も山ほど見つかりましたし……。

    秋雨さんの作品も必ず読ませていただきますので! ありがとうございました!
  • おはようございます、秋雨です。
    こちらこそ、上から目線の感想を押し付けて、自分の至らなさとか、いろいろ申し訳なく思ってます。
    (冒頭から読んでいたら、舞台背景が現代日本であることはすぐに把握できたと思うのに、その辺りの指摘もやってしまった)

    誤字脱字は、わたしも読んでていくつか見つかったので気になりましたが、省略しております。(でも評価が落ちるというレベルでは全然なかったです)

    作品楽しませていただきました。それではー。
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