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『彼方へと送る一筋の光』20更新しました(ネタバレあり)

『彼方へと送る一筋の光』20を更新しました。
ロスマリン救出作戦後半です。事件は今回をもちまして収束、いよいよ物語も佳境へと向かいます。
今回の更新箇所では本当に色々なことがあるのですが、活動報告ではちょっと長い話をさせていただこうと思います。
ここ数回の展開で、もしかしたら「うん?」と思っておられるかもしれない人物。
『それでも朝日は昇る』本編では描かれなかった側面がどんどんあらわになってきた男、セプタード・アイルについてです。


さてセプタード。
『それでも朝日は昇る』本編、カイルワーン側において最も重要なサブキャラクターです。
カティスのように対等ではなく、年上の存在としてカイルワーンを支えるもの。
市井にあって、カイルワーンの居場所となるもの。
カイルワーンの一人の人間としての幸福を思い、その運命を思い嘆くもの。
カイルワーンに「一人の人間としての最大限の幸福」をもたらす役割を果たしてくれたのがセプタードです。
そんな彼が本作最強の剣士だったというのは、今回突然付与された属性ではなく、本編を書いた時から決められていたことでした。
(アルベルティーヌ潜入の時「俺のことなら心配いらない」とセプタードは言いますが、その時ブレイリーとカティスが止めもせず返事もしなかったのは、そういう理由です。セプタードに危害を加えられる奴なんかこの世にいない、と二人は思っている)

私の中の剣術レベルチャートとしては

セプタード>>>(越えられない壁)>>>フィリス>エスター>カティス>ウィミィ・ブレイリー>リワード

ぐらいになっていまして、とにもかくにもセプタードは別格。
それなのに本編のアルベルティーヌ城解放戦で全然活躍しなかったのはどうして、という話になるのですが、つまり奴はあの時、全然本気を出していなかった、ということになります。
(とはいっても、十数人の騎士団員を、イルゼと二人というか実質一人で片付けているんですけども。凄くさらっと書いていますが)
ではどうして、カティスとカイルワーンの大事においても奴が本気を出さなかったのか。
どうしてこのグリマルディ伯爵事件でこんな鬼神モードに入ってしまったのか。
結局それについては、本作では語りようがありませんでした。

本作は自サイト『miniature garden』からの転載なのですが、この『彼方へと送る一筋の光』は7年間の更新停止をはさみ、完結に11年もの時間を要しています。
どうしてそんなことになったかといえば色々あったのですが、結局「本作の初期プロットが不出来だった」の一語に尽きます。

『彼方から届く一筋の光』を書いた時、これはこの話だけでは終えられない、どうやって禁書が生み出されたのかを記す別作品を書かなければならない、とは思ったんです。
それで本作の連載を始めたのですが、まあこれが難産でした。
今になってみれば判る。元のプロット、あまりにも色々なところが足りない。
特にグリマルディ伯爵事件が始まってから、ラストまでが全然足りない。
書いている私が面白くない、納得がいっていないものを書けるわけがないんですよね。
ちなみに元のプロットでは、単純に伯爵がロスマリンを自らのものにしようとしただけ。メルル・ブランもいなけりゃカイルを巡る陰謀もありません。
それをブレイリーが仲間たちの力を借りて助け出して終わり。
二人は気持ちを確かめ合い、事件解決の功績をもってバルカロール侯爵は二人の結婚を承諾する――という流れ。

面白くないねえ……。
盛り上がらないねえ……。

どうして7年前の私はこのプロットでいいと思ったんでしょうかねえ。
自分でもそう思います。
それでどうしてこのような形になったかというと、以前もここに記しましたが、ひょんなきっかけで本シリーズの時間軸を全てセプタードの視点で見直した結果でした。

実感しました。
ブレイリーのことって、本人の視点では何も判らないんだな、と。

物凄く沢山のことが腑に落ち理解でき、それを素に本作のプロットを再構築したのですが、同時に問題も生じました。

セプタードの視点でのみ理解できることは、ブレイリーの一人称である本作では描けない。
本作だけでは、今回のグリマルディ伯爵事件の全ての真相には辿り着かない。

というわけで次回更新より本作は終幕へと向かっていくわけなのですが、申し訳ないことに謎は残ります。
まだ自サイトにも掲載していない、新作に持ち越さざるを得なかった話が色々あります。
本作の転載と再録本の刊行が終わり次第執筆に入りますので、もしよろしければ本作終了も引き続きお付き合いいただければ何よりです。

さて次回より、最終段である第4部。
お互いへの気持ちを確かめ合った二人ですが、ゴールへと辿り着くまではまだまだ乗り越えなければならない問題が山積みです。
これからクライマックスに向け全力疾走して参ります。

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