本当にご無沙汰しておりました。
予告をしてから数年、ようやくお目にかけられます。
『それでも朝日は昇る』番外編、『蒼天抱くは金色の星』第1回更新です。
前番外編終了から、沢山のことがありました。
いいこととは再録本を発刊し、沢山の方に手に取っていただけたこと。
よくないことは、愚痴になるのでこの場には記さない方がよい、誰もが避けられない人生の岐路に立っていたこと。
その諸々に過去は区切りがつき、ようやく最初の一歩目を踏み出せます。
連載頻度はおそらくローペースになってしまうと思いますが、お暇がある時に思い出していただければ幸いです。
さて。
『それでも朝日は昇る』という物語に、長編で番外編を書くのはこれで3作目になります。
予告したとおり、主人公は『粉粧楼』主人のセプタード・アイルです。
前作『彼方へと送る一筋の光』もロングタームの物語でしたが、今回はそれ以上。
セプタードが10歳から41歳までの31年間の物語です。
本編の副主人公カティスと共に育った子ども時代、主人公カイルワーンとの出会いと別れ、そして何より。
生涯の相棒であるブレイリーと共に歩んだ、本編その後の14年間を描きます。
『それでも朝日は昇る』は言うまでもなく、アイラシェールとカイルワーンの物語です。
「定められた運命」の中で、泣き笑い自分の人生を選び全うした、二人の子どもの物語です。
である以上、言い方は悪いですが、本編において他の登場人物たちは、二人の物語を描くために配置されたことになります。
彼らにも別の人生があり、二人に出会うまでの過去があり、本編においての言動や行動にはそれが背景としてあるのですが、それは本編で全ては描かれてはいません。
本編には「描くことかできなかった」もしくは「あえて描かなかった」ことが存在します。
『それでも朝日は昇る』本編は、欠落したパーツがあるいくつかあるジグソーパズルのような作品だと、最近になって思うようになりました。
全体の像は判る。欠けている部分があっても、何が描かれているのかは判別できる。
けれども、ところどころ欠けている。そこに何かがあっただろうことは判るけれど、欠けているものが何かがわからない。
無論、物語とはそういうものだとは思います。
すべてを作者と作品が明らかにしてしまっては想像の余地もなくなりますし、そこを読者に委ねるのが「行間を読む」ことだとも思います。
本編を書いた段階ではあれでいいと思っていましたし、単体で読む分には今でもいいと思っています。
ただ『彼方へと送る一筋の光』のあの結末は、この欠落した部分がないと本当のところが判らない。
それをどうやって描くか、そう考えた結果、出た結論は「『彼方へと送る一筋の光』でこれを描くことは、ブレイリーの視点でこれを描くことは、無理である」でした。
これを明らかにできる視点を持つ者は、セプタードただ一人だと。
逆にセプタードの視点からすべての時間軸を俯瞰した時、私自身が判っていなかった欠落したパズルのピースが埋まる感覚を得ました。
ああ、そうか。
そういうことだったのかと。
というわけで本作は長い時間軸の中で、一つ一つ今までなかったピースをはめていく物語です。
今まで意図的にスルーしたこと、あるいは回想などで何でもないことのようにあっさりと語ってきたこと、それを一個ずつ拾い上げていきます。
それでもすべてのピースが回収できるわけではありませんが、終了した時、かなり色々なことが腑に落ちる。そういう作品を目指しています。
最初のピースは「セプタードはなぜアデライデと結婚したのか」です。
アデライデが「成り行きで結婚した」と語った、セプタードの精神が大クラッシュを起こしたという事案は、「六月の革命」直後に起こりました。
ここから過去へと物語は向かい、大陸統一暦1000年に戻り、1014年のグリマルディ伯爵事件で閉じます。
この物語のよいところは、すでにこの事件の結末がどうなるかを読者の皆さんが知っていることです。
ちゃんと本作は『彼方へと送る一筋の光』と同じ結末に辿り着きます。
あの大団円は覆りませんので、その点については安心してご覧いただければと思います。
長い連載になると思います。
私生活がなかなかしんどい状況なので、ハイペースで執筆することはできないかもしれません。
ですがもしよろしければ、時折思い出してブックマークをたどって来てくださればありがたい限りです。
それではどうぞこれから、よろしくお願いします。