『彼方へと送る一筋の光』18回更新です。
今回は出陣前の一時。戦いを前にして、ブレイリーの物思いが意外な方向に向かっていった回になります。
本作は『彼方から届く一筋の光』で生じた謎に対してのアンサーとして存在している作品です。
なぜレインの祖先である『初代』はこんな計画を立てたのか。
禁書はどうやって作られたのか。
その所以を記す物語です。
そしてその初代とは実は一人ではなく、初代夫妻のことであったことは、もう皆さんお気づきのことだと思います。
前作でシェイラが「初代」といった時はブレイリーを。
レインが「初代」といった時はロスマリンをさしていました。
ですから二人の語る「初代像」がずれていましたし、矛盾していたんです。
そしてここに至るまでロスマリンがどんな女性で、どんな風にカイルたちにであってどんな思いを抱いて成長してきたのか、本作は克明に記してきました。
そして彼女の伴侶となるブレイリーが、カティスたちと別れレーゲンスベルグに帰還した後、どんな風に街を守ってきたのかをこれまで記してきました。
でも、それはブレイリーの視点でのみ記されたものです。
皆さんご存知のように、革命後のブレイリーはとても卑屈になっている。
そのもだもだっぷりに「ああこの男殴りてえ……」と思われた方もおられるのではないかと思っています。
その上恋した相手が歴史に残る才女で、この国一番の身分の貴族。
卑屈になるのも仕方ない、と一見思える。
でもなぜ、ここまでブレイリーは卑屈の病に囚われたのか。
そして彼は本当に、そんな風に卑屈にならねばならぬほど。取るに足らない存在なのか。
あの革命から14年。
「街も傭兵団も大きくなった」とブレイリーはさらりと記しましたが、それはそんな一言で言っていいことなのか。
その過程は、労苦は、並大抵のことではなかったのではないか。
それを彼の傍らで見ていた人たちは、何を思いどんな感情を抱いていたのか。
本作はこれからロスマリンの救出と共に、そのことが鍵となっていきます。
それと同時に、こう思った方もおられるのではないでしょうか。
あ、ブレイリーこいつ、なんか隠してるな、と。
謎めきつつ物語は進みます。
次回は救出作戦開始。長い一夜の物語が幕を開けます。