『彼方から届く一筋の光』第2回目の更新(転載)を行いました。
今回の更新にて「オフェリアの救済」と銘打ったこの物語が、実際にはどういうネタなのかお判りいただけたかと思います。
再び「時の鏡」
再びタイムスリップです。
どうして作者はそんなことを企んだのか。
そのシチュエーションを用いて、何をもたらそうとしているのか。
それはこの先の更新を読んでいただければ明らかになることとして、まずは記しておきたいことがあります。
そもそも私が、どうしてこんな物語を書こうと思ったのか。
『それでも朝日は昇る』本編を完結した際、ありがたくも様々な感想をいただきましたが、その中で最も多かったのが「で、オフェリアはその後どうなったの?」でした。
当然です。
投げっぱなしです、彼女のこと。
しかし本編がアイラシェールとカイルワーンの視点で描かれている以上、本編にそれを挿入する余地はない。
ならばいずれ、番外編で描くしかない。そう思ってはいたんです。
が、当初考えていたプロットを、私は全く書くことができなかった。
どんなに考えても、そのプロットにオチがつかなかった。
オフェリアの夫に当たるガルテンツァウバー皇太子がどういう人物であったのか、ガルテンツァウバー皇宮で何があったのか、なんで皇太子ではなくて皇帝がちらちら話題に上るのか、そこら辺はそう遠からずはっきりしますが、本編執筆当時、私はオフェリアのその後をロシアのエカテリーナ2世でイメージしてました。
愚鈍な夫を、優秀な愛人と共に退けて即位し、広大な帝国を支配した偉大な女帝。
エカテリーナとはあまりにも背景が違いますが、オフェリアの場合は皇帝と皇太子、そしてグラウスとの四者の間で、国の命運を巻き込んだ愛憎劇を繰り広げるんだろうなあと、そんなことを思っていたんですよ、当時は。
でも、どんなに頑張っても、オチがつかない。
色々なパターンを考えてみました。でもどんなに考えても、一つの話としてまとめ、物語を終えられる着地点が、ガルテンツァウバーのどこにもない。
オフェリアがガルテンツァウバー皇后として生きる道にも、女帝として君臨する道にも、私自身が納得するオチがつかなかった。
かなりぐるぐる悩んだんですが、その理由がいずれ判りました。
そりゃオチないよ。
だってそのどっちの道にも、オフェリア自身の救い、全くないもの。
オフェリアの幸せ、彼女の望みが何であるかは、本編で当人がはっきり喋っています。
それを叶えてやる道が――ぶっちゃけた話、彼女を救済する道が、ガルテンツァウバーとグラウスにははなからないんです。
だとしたら、そんな彼女を救済するためには、何が必要?
どうしたら、それが叶えられる?
悩んだ結果が、この力技。
再び『時の鏡』にお出ましいただくこととなったのです。
今回オフェリアにタイムスリップさせたのは、「歴史が変えられるか否か」という問題に直面させるためではありません。
オフェリアのタイムスリップは、皆様お気づきのことと思いますが、アイラたちの時と大きく状況が異なります。
彼女の場合は「自分が存在している時間へのタイムスリップ」です。
これによって生じてしまう様々な不都合を利用することで、オフェリア救済の道を強引にひねり出しました。
ここまで強引なことをしないと、あの人は救済できない。
その救済とはどういうことなのか。
その手段とはどういうことなのか。
それをこれから綴っていこうと思います。
よろしければどうぞまた来週、お付き合いください。