人間の『性』というものの、本質的な非対称性。
帯もタイトルも、少しドキリとする文字が並んでいますが
至って、著者の語り口が穏やかでやわらかいので
不思議な魅力を持った本になっています。
『性食考』赤坂憲雄著、2017年、岩波書店。
男性性、女性性、というものに
改めてスポットライトの当たっているこの時期に
本として出されたことが面白いなぁと思います。
性徴という差異を与えられた人間同士が
その性を介して、関係を築こうとするとき
向き合うのは、あまりにありふれた光景の中にある、
非対称性なのだということ。
そしてそれが『食べる』という行為の非対称性にも通じる
との指摘には、なるほど!と合点がいきました。
日常生活で「性」を意識する場面が無くとも
「食」を考えない日は無い。それゆえの説得力なのでしょう。
けれどもその説得力に対して、あるべき対称性を求めること、
社会的な仕組みとして、育てていかなくてはいけないという問題も、
あるのです。
神話や生物学などへの言及もあって、
この領野の入り口を探る上でも、とても興味深いです。
さて、これからどんな読書ができるでしょうか。
楽しみです。