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とある海獣の国

10/2


いじいじ。ぐじぐじ。本日の悪夢は泣き虫な酒飲み虫。
将来は大きな竜になるぞと言われ続けてそれを信じていたのに、いつまで経っても竜になるどころか、竜にない脚だか腕だかがどんどん生えてきて、醜いミノムシみたいな姿になった人面獣。。。人面ですらないな、ただの泣き虫のおっさんだ。成人を過ぎているので酒も飲む。さらにタチが悪い。
海底の窪みに隠れていつも上を見ている。たまに海面上に出てくることもあるけれど、最近はお肌が乾くのが嫌で太陽の出ていない日にしか出てこない。おかげで肌はぬるぬるツルツル、手入れをしていない鉤爪はボロボロ、ヒレも穴だらけで覇気がない。
たまに口を開けば、くっさい紫色の吐息を吹き出す程度。こんな生き物でも生きられるのが深海なのに、深海にいると気が滅入るからってたまに気晴らしも兼ねて水面から顔を出すとか、どういう生き物なんだろうね。

この世に生まれてきたことに絶望しているくせに、誰よりもこの世に未練タラタラで、いっつも海の底でぐうたらしているだけのくせに、俺はいつか竜になるんだって、大きな言葉を口から出して小さな泡をぽこぽこさせている。

醜いね。
こういう醜い生き物の名前をなんて言うんだっけ。
ああ、百科事典にも載ってないや。


「うるせえ」

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