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彼女の名前はレステ


11/6

今朝は不吉な夢で目が覚めた。長年、叶わぬ想いと希望を目の前で打ち砕かれてきたことが夢に出てきたのだろうか。
久しぶりに疲れた頭を振り起こし、ベッドから出たのは正午少し前だった。
暑苦しいこの砂漠では、昼に動くものはラクダと愚か者だけという。だがそのラクダも、気温が50度を超える時はオアシスの木の陰にかくれて、じっと太陽が見えなくなるのを待つ。
私は壺の中にためた水を一口飲み、喉の渇きを潤した。

暑く乾燥した熱風がこのキャンプを絶え間なく流れる。この何もない砂漠にいて、少しでもこの疲れた身を癒してくれるのはこの風だけだ。
砂漠の民は、この風に名前をつけている。はるか東方の地では東から吹く風を「こち」「ならい」と呼び、また西から吹く風にもあらゆる名前を付けて呼ぶ。この砂漠の地でも同じだ。だがどちらもその風が吹く季節に対して、人がどのような営みをするのかの意味合いをつけることが多い。
レステ。この地に吹く風の名前だ。

その風は、心変わりの激しい女が男の肌をそっとなでるように、優しく、時として乱暴に、あるときはぱたりとその男に興味を無くしたかのように撫でるのをやめたり、なにかをねだるようにそっと男の耳になにかをささやく。
男は彼女のささやきに心がないことを知りながらも、その胸の内に情熱をたぎらせ、まだ見ぬ異世界に希望を見出すのだ。
彼女の心はうつろいやすい。
風のささやきに、私はもう一度自らの運命を変えて見せられるのだろうか?

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