• に登録
  • SF
  • エッセイ・ノンフィクション

孤立無援だったあの頃の君へ

やあ。
久しぶり。この日記を書いているということは、君はそれから10年以上先まで生きているということだ。安心するのか落胆するのかは好きにしていいけれど、10年後の君自身がどうなっているか、ちょっとだけ報告しておこうと思う。

多分おおよそわかっていると思うけど、将来の君は大して成長していない。もしかしたら堕落の一途をたどっているのかもしれないけれど、その原因はちょうど今この時間に君がどこで原稿を書いているのか、原稿を書いているふりをしながら何か物思いにふけっているそぶりを見せながら、実は何もしていないその癖がそのまま10年経ってもずっとそのまま続けていたらどうなるのかを想像してくれればいいと思う。

遠回しで独特な物言いで、個性的な書き方の理由が、癖とか個性ではないことがわかったよ。今の君は周囲から孤立しているだろうし、きっと誰からも君自身を理解されていないだろう。
君は周りを理解しようとしているだろうか。
死ぬ気で理解しようとして、全国を旅してまわったり、一日中街並みを見下ろしていたり、雑踏を見てまわったりいろんな人と会ったり会わなかったりしているのも。
そういえばそんなこともあったね。
君は誰も理解できていなかったよ。すごく、遠回りをして、結局君が望んできたものは手に入れられなかった。
中途半端に世間からずれたまま、あるいは周囲に才能と呼ばれるほどの気狂いにもなれずに、君は普通の人と異常者の間の深い溝に落ち込んでしまう。
今君が思っているその想いは、きっと10年経っても何も変わっていない。
上向きにも、下向きにも。君は何も変わっていない。
しいて言うなら経済的には自立してしまったかな。誰からも頼りにされることもなく。君は町の中の片隅にひっそり生きている。

マンションのテラスから見た風景は綺麗かい?
ここから見える風景はだいぶ違うけど、感想はだいたい似たようなもんだよ。寒いし殺風景だし、気が滅入るくらいに一人だ。

ベランダのアボカドの木がそろそろ枯れそうだ。
もしも寒くなったら、木は必ず部屋の中に入れるんだよ。

風邪など引かずに、これからも元気でね。
10年後の自分より。

コメント

コメントの投稿にはユーザー登録(無料)が必要です。もしくは、ログイン
投稿する