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【魔導士物語】第三十一話「壁」を掲載しました

https://kakuyomu.jp/works/16817330649026392153/episodes/16818093083635736088

そんなわけで、第三十一話です。

前回もフランツ中尉のおまけ情報を書きましたが、その続きですw

フランツがマグス大佐の部隊に在籍していたのは結構前で、カメリアがまだ副長を務めていた時代です。
今回、本文で彼の系統が明かされていますが、フランツを実際に鍛えたのはカメリアです。
カメリアはもともと重力魔導士だったのですが、自らを桁外れの魔力と創意工夫で、敵を殲滅する戦力に創り変えた稀有な人物です。

重力魔法は術師の体内に、非常に太く強固な魔導回路を構築する傾向があります。
そのため、別系統の魔法回路を開く余地がなくなり、専業魔導士になってしまいます。
(当時、マグス大佐の副官をしていたイアコフは、万能型の魔術師で重力魔法も使えますが、これは彼が天才だからできることで、普通は無理ですw)
カメリアはその性質を逆手にとって、重力魔法を基礎にした攻撃魔法を開発したのですが、体内で出来上がっている魔導回路に横穴をあけてつなげるという、無茶をやっています。
普通の魔導士だと、まず真似はできません。

しかし、フランツには才能があったらしく、カメリアから教わったコツのお陰で、同じような技術を習得してしまいます。
この結果には、マグス大佐もカメリアも大いに驚き、フランツを徹底的に鍛えることとなりました。

そうした意味では、彼の師匠はカメリアということになりそうですが、実はマグス大佐もちゃんと教育に加わっています。
彼女は主に戦闘における〝勘所〟、つまり状況に応じた魔法の選択と使い方(敵のどこを崩すか)を教え込みました。
これは大佐が自分の膨大な経験から会得した技術であり、のちに独り立ちしたフランツを、何度も危機から救ってくれました。
そのため、フランツはマグス大佐を師匠、カメリアを師範代のように考えています。

閑話休題、マグス大佐がフランツの復職に動いていることは、前回書いたとおりです。
大佐は部下の面倒見がよい人で、これに限らず自分のもとを巣立った部下の支援を、まめに行っています。

元部下が功績を上げたと知れば、昇進の嘆願書を上程し、よい役職が空いたと聞けば、元部下を推す推薦書をしたためます。
そうした手紙を、机に向かってかりかり書いている姿を、カメリアは半ば呆れて見ていました。
ある時、彼女は大佐にコーヒーを淹れ(カメリアのコーヒーを淹れる腕は、大佐に絶賛されている)、こんなことを訊ねました。

「また推薦書ですか?
 部下思いなのはよいですが、軍内で大佐の影響力は大きいのですよ。ほどほどになさったら如何ですか?
 人事部が困っている……という噂もあるそうですよ」
「可愛い部下を応援するのは、元上司として当然の務めだ。言いたい奴には言わせておけ」

「まぁ、ご立派ですこと!」
「何だ? ずい分と棘のある言い方ではないか?」

「気のせいです」
「貴様、怒らないから正直に言ってみろ!」

「本当ですか? いえ、元部下が出世すればするほど、ご自分の評価も上がるとお考えではないかと……。
 いかにも大佐らしいです」
「そうかそうか、貴様は私をそういう女だと思っていたのだな。
 よろしい、もう貴様には男を紹介してやらん!」

「ずるいです! 怒らないっていったじゃないですか!?」
「うるさい! 大体、貴様は望みが高すぎるから行き遅れるんだ。
 『逞しくてち●ぽのデカい男がいい』とか、子どもみたいな身体のくせに、どの口が言う! 下の口か?」

「大佐こそ!『細身で美少年の新兵を探してこい』なんて、少しは年齢を考えるべきです!」

 大佐の野戦テントの外で立哨を務めていた、イアコフとイムラエルは密かに溜息を吐いたのであった。

      *       *

そんなわけで、次回をお楽しみに♪

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