https://kakuyomu.jp/works/16817330649026392153/episodes/16818093088064984426そんなわけで第十二話です。
「黒龍野会戦」は『幻獣召喚士』に出てくる話です。
『魔導士物語』は、『幻獣召喚士』の世界線を引き継いでいますが、前作を読んでいなくても理解できるよう配慮しています。
そのため、今回の冒頭ではその説明が出てきます(「黒死山の館」でも、ちょっと触れています)。
リリはその中に出てくる、いわば〝チョイ役〟です。
登場時には、本人が「王都の劇場で働いていた」と言っていました。
どういうことかと言えば、彼女は魔導院を卒業して、すぐに大道具係として採用されたのです。
なにしろ、彼女の幻獣の力を借りれば、実物と変わらない背景を自在に出したり、消したり、変えたりできるのです。
劇団としては、観客にリアルな舞台装置を見せて、驚かすことができますし、何よりも経費節減となります。
ただ、リリが現実に見たり、記憶した物しか出せないので、彼女はモデルとなる実景を見に行くため、駆けずり回らねばなりませんでした。
魔導院では十二年も同じ屋根の下で暮らしますから、ほぼ家族同然です。
そのため、彼女は先に卒業した先輩を訪ね歩き、彼らが召喚した幻獣に会わせてもらいました。
その中には、見た目が恐ろしい怪物も混じっていましたから、冒険活劇でそれを舞台に登場させたところ、観客の度肝を抜いて大反響となりました。
そのように、最初は〝便利な大道具係〟だった彼女も、慣れてくるにつれて余裕が生まれ、演劇そのものに興味を抱いていきます。
もともとリリは文学好きでした。
劇団の芝居や脚本をその目で見、学んでいくうちに、自分でも脚本が書きたくなってきました。
仕事が終わって下宿に帰ると、密かに脚本を書くのが楽しみになっていました。
そして、大量に溜まった自作の中から、これはという自信作を、思い切って座長に見てもらったのです。
一読した座長はリリの才能と脚本の完成度に驚き、ただちに上演へと動き出しました。
満を持して発表した新作は、大ヒットを記録し、一年を超えるロングラン公演を達成します。
これをきっかけに、彼女は舞台装置と脚本家の兼任となり、やがて演出も手がけるようになります。
ただ、彼女は極度の人見知り、かつ恥ずかしがりやで、大きな声を出すなどとてもできません。
そのため、劇団の役者に大声で威張る男を演じてもらい、それをもとに架空の監督を作り出しました。
シルヴィアはまったく気づいていませんが、今回リリと一緒にいた監督は、実は幻影だったのです。
さて、シルヴィアの推理に穴はないのか?
リリは妖精の秘密を明かし、後輩である彼女を助けようとします。
ということで、どうか次回をお楽しみに!
楳図かずおさんの訃報が飛び込んできました。
私が小さいころから、恐怖漫画といえば楳図さんでした。
心からご冥福をお祈りします。ぐわしっ!