https://kakuyomu.jp/works/16817330649026392153/episodes/16818093081976455488そんなわけで、第二十二話です。
私が幼いころの話です。
父親の田舎に遊びに行くと、厩で馬を飼っていて、その二階では蚕を飼育していました。
田舎の爺ちゃん婆ちゃんは、蚕(幼虫)のことを「お蚕さま」と呼んでいました。
近くの池に釣りに行くつもりで、軒下を掘ってミミズを探していると、婆ちゃんが「ほい」と言って、蚕を釣り針に刺してくれました。
ちょっと引くくらい大きかったです。どんな釣果を期待したのでしょうか?
っていうか、「お」と「さま」をつけるくらい大切な幼虫に、何という仕打ちを……w
「お蚕さま」は白くてすべすべとした手触りで、とても可愛かった記憶があります。
今回は、この養蚕に関わる話が出てきます。
蚕はクワコという野生の蛾を飼いならしたもので、品種改良を繰り返した結果、完全な家畜と化した珍しい昆虫です。
約五千年前には家畜化されていたと言われています。
つまり、蚕はもう、人間がいないと生きていけないのです。
本文にも書いていますが、蚕の幼虫は人間が餌(桑の葉)を与えてくれるのを、じっと待っています。
いつまでも餌を与えないと餓死してしまいますが、それでも飼育箱を逃げ出して、餌を探しに行こうとはしません。
羽化した成虫は、羽根があっても飛べません。
そして、ひたすら交尾をしています。いつまでもつながったままなので、人間が引き離してあげなくてはなりません。
今回登場する「細い生糸が採れる新品種」にはモデルがあって、「黎明」や「はくぎん」といった品種です。
通常の繭糸は3デニールなのに対し、これらはその半分の細さだそうです。
ちなみに、本文中で使用している「生糸」は、繭の糸をより合わせたもので、加工された「絹糸」の前段階のものを指します。
さて、次回は再びエイナたちの方に話を戻す予定。どうかお楽しみに!
オリンピックで毎日眠いw