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【魔導士物語】第十八話「ドブ川」を掲載しました

https://kakuyomu.jp/works/16817330649026392153/episodes/16818093081271836386

そんなわけで、第十八話です。

いろいろと補足です。

まず、感知魔法について。
魔力は生体エネルギーの一種で、人間なら誰しも持っています。
ただ、魔導士は突然変異的に大量の魔力を保有しており、それは体内に溜めきれずに、一定の割合で常時放出されています。

感知魔法はそれを観測する魔法なのですが、基本的には戦場など野外での使用が想定されたものです。
というのも、都市部だと人は基本的に建物内にいますから、微弱な放出魔力が石壁に遮られてしまうからです。
それでも、エイナが同じ第四軍の魔導士を感知できたのは、彼女の能力が高いことの証拠です。

ところが、通信魔導士になるのは、軍の採用基準に満たない魔導士で、当然魔力量も大きくありません。
そのため、都市部では発見が困難で、地下室に潜んでいたら、いくらエイナでも感知できません。

ここで「あれ? だって、前にカメリア少将が採石場の地下にいたのを、エイナはちゃんと感知してたじゃん」
と思った方、そういう細かいことを気にするようでは、長生きしませんよw
あれは、坑道を閉鎖している扉が隙間だらけなのと(そのため、エイナの魔法で発生した液体窒素が大量に流れ込んできた)、換気用の空気穴があったため、そしてカメリアの保有魔力量が桁違いに大きかったからです。

次、エイナの言葉遣いについて。
軍服に着替えたエイナは、元の上官口調に戻りました。
部下たちはこれを残念がります。私服の時のエイナの口調は女らしく、かわいらしかっらからです。
ケヴィンが看破したように、エイナは上官言葉を無理をして使っています。
しかも、手本がマグス大佐ですから、結構偉そうというか、仰々しいのです。
軍には召喚士を中心に、ある程度の女性士官がいますが、同じ上官口調でも、もうちょっと柔らかいですw

ここで、注目したいのは、最初のころエイナを「小隊長殿」と呼んでいたケヴィンが、彼女が私服に着替えて言葉を素に戻してから「小隊長」と、「殿」を省略していることです。
もちろん、「小隊長殿」の方が丁寧ですが、「小隊長」自体が敬称なので、部下がそう呼んでも無礼ではありません。
この辺の変化は、ケヴィンがエイナに対する心の距離を詰めている証拠です。
一方のウィリアムが、いまだに「小隊長殿」呼びなのと、対照的ですね。

ちなみに、コンラッド曹長はエイナのことを「少尉殿」と呼んでおり、一度も「小隊長殿」とは呼んでいないことも、覚えておいてください。

三番目は、し尿処理の話です。
本文では省いていますが、歩きながらの会話で、エイナはし尿を利用した堆肥の作り方を、部下たちに説明しています。
未処理のし尿は、石壁造りの水槽のようなもの(いわゆる「肥溜め」)に入れられ、家畜の敷き藁や、刈ってきた青草を入れ込み、微生物によって分解・発酵させます。
十分に発酵が進むと堆肥の出来上がりで、これはあまり臭くなく、寄生虫の発生も抑えれます。

完熟には時間がかかるため、貧しい農家などでは発酵が不十分な堆肥を液肥として使用することがしばしばで、これが寄生虫の蔓延につながっています。
し尿に等級があるのは、豊かな暮らしをしている人の家から出るし尿は、よいものを食べているから栄養価が高い――という迷信に基づいて、根拠に乏しいです。
日本の江戸時代においては、大名屋敷のし尿がこれに当たり、汲み取り権が投機の対象にもなっていました。
汲み取りは過当競争が続き、料金の値下げ要求も、たびたび起こっています。

さて、次回は何やら事件が起きそうです。どうかお楽しみに。

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