茶番の閑話
読み飛ばし推奨
【渇望のセレナ】
「しくしくしく……」
「あら? ねえケンツ。あそこで誰か泣いているわ」
「あれってもしかしてセレナさんじゃないか?」
ケンツとシャロンは河原でシクシク泣いているセレナを見つけた。
「あの、どうかされたんですか?」
「何か悩みがあるなら聞くぜ」
「うう、実はあまりにも私の扱いが酷い事に絶望しまして……」
「ああ、魅了されて痴女化したり……」
「牛でブモーで蒸し焼きですもんね……」
「そして今日久々に再登場したと思ったら悪の女幹部みたいなノリじゃないですか。しかも自分から服脱いで股開く痴女ぶり!」
「あれは作者もやりすぎだよなー」
「きっと読者さんも離れたと思うわ」
「でしょう! あの映像が200年も人族の目に……もう女としても母親としても完全に終わりです。だからこれ以上生き恥を晒すくらいなら川に身を投げて死んでしまおうかと……」
「いやセレナさん。あんたもう死んでるから」
「死んでるのにまた死ぬなんて無理ですよ」
「やってみないとわからないじゃないですか! 覚悟があればもう一回くらい……そうだ!」
「なんだ?」
「どうかしましたか?」
「シャロンさん。あなたも確か一回死んでましたよね。そして生き返った。その時の聖女と死神を紹介してくれませんか?」
「へ? いやまあいいですけど」
「紹介してどうするんだ?」
「決まっているじゃないですか。生き返ってからまた死ぬんです!」
「わけわからん」
「無意味だわ。それに今の時間軸でも死んでから200年経ってるし。いくら聖女でも無理だって前回レイミアさんが言ってたでしょ?」
「ふええええええん!」
「ああまた泣き出した」
「大丈夫ですよセレナさん。死ぬとかはおいといて、このケンツがきっと何とかしますから」
「ええ、俺ぇ!?」
「そうよケンツ。ケンツがセレナさんをハッピーエンド路線に乗せるの!」
「本当ですかケンツさん! 私、死んじゃってるけどハッピーエンド路線とか乗れますか?」
「いやー、流石にハッピーエンドは無理じゃ……」
「セレナさん、きっと大丈夫! なんとこのケンツは信じられない事にこの物語の主人公なんです。主人公補正できっとなんとかなるわ!」
「お、おいシャロン!?」
「え? この物語の主人公はバークって人じゃないんですか?」
「違います。主人公はケンツです! ねえケンツ♪」
「お、おう一応はな……でも700年も前のダゴンの嫁を生き返らすってのは流石に無理が……なあ作者、可能か?」
ブンッブンッ
どこかで作者が首を振る気配がした。
「作者のやつ全力で首を横に振っているようだが」
「違うわケンツ。あれは首の運動よ」
「そうかなぁ……」
「セレナさん安心して。このケンツがあなたをバッドエンドにはしないわ!」
「バッドエンド回避!? 本当ですか!?」
「いや、もうバッドエンドのエピソードが終わった後だし。確定しちゃってるし」
「ふええええええん!」
「ケンツ! この小説の最大のキーワード(タグ)は!?」
「ハッピーエンドだぜ」
「そうハッピーエンド。だから主人公のケンツには登場人物全員をハッピーエンドに導く義務があるのよ!」
「そんな無茶な! コルト国王とパーラ・ナンチャラとかもハッピーエンドなのかよ!」
「ケンツなら出来るわ!」
「無理無理無理無理。だいたいやつらを助けたらセレナさんが嫌がるだろう」
「あ、そうか。じゃあセレナさんだけハッピーエンドで」
「私からもお願いします。私もシャロンさんみたいに生き返ってハッピーエンド路線に乗りたいです! 家族と幸せに暮らしたい!」
「前向きに善処するぜ(汗)」
「セレナさんきっと大丈夫よ。なんせケンツは主人公だし私を甦らせた実績もあるから」
「くぅ。主人公の座をバークに押し付けて逃げてーぜ」
「ありがとうございます! ありがとうございます! その日が来るまで私はこの河原で石を積みながら待ちます! 一つ積んではアークのため~、二つ積んではカレンのため~、三つ積んではダゴンのため~……」
「おいおい、俺達の時間軸までの500年をここで石を積んで待つのかよ。セレナさんの遺体とかとっくに骨になってるぜ」
「責任重大ね。頑張ろうケンツ♪」
「頑張ろうケンツ♪――じゃねえ!(後でセレナさんの墓に線香供えてそれで許して貰おう)」
果たしてセレナのハッピーエンド路線はあり得るのか?
それはケンツの頑張りと作者の貧相な発想力にかかっているのであった。