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【追放した側のファンタジー・英雄ケンツの復活譚】089第三十六話 01 関連エピソード その四

【告】ネタバレ注意!



【ユリウスvs召喚勇者アキヒロ】



「よう、さっきはよくも恥をかかしてくれたな!」


 予想どおりだ。

 俺達の前に、召喚勇者アキヒロ達が現れた。


「やはり現れたか……」

「テメー、一体何者だ?」
「ティラノドラゴンを屠ったり、アキヒロの斬撃を受け止めたり」
「もしかしてアメリカかロシアからの召喚者じゃないか?」


 ロシアというのは知らないが、アメリカは確か召喚勇者|オスカー・ブラウン《ハヤト》の故郷だったな。


「|生憎《あいにく》俺はこの世界の住人だ。アメリカでもロシアでも日本でもない。で?おまえ達、いったい何のようだ?」


 アキヒロ達は俺の質問には答えずに抜剣。ヘラヘラしながら間合を詰めて来る。


「なんだよ、現地人の猿だったか。じゃあ何も遠慮はいらねーな」
「さっきのティラノドラゴン討伐は、やはりたまたまだったか」
「そんじゃあ……死ねや!!!」


 突然襲い掛かる召喚者達!

 いきなりかよ!


 ― ブオッ!


 三人の剣と戦斧による凶撃!


 ― ガキッ!ガキンッ!ガッキンッ!


 後ろにはミヤビがいる!

 三人の攻撃を躱さず聖剣を合わせ、全て力ずくで払いのける!


 ― ベシン!


「「「 ぐおぉっ!? 」」」

「ミヤビは後ろに下がって! |デフォイメント《アーマー展開》!」


 ― ヒュイイイイン……


 一瞬にして白銀の鎧に身を包み、アキヒロ達を迎え撃つ体勢を整える!


「なんだよ、その鎧は!」
「丁度いい、防具を失っていたところだ。その鎧は俺が貰う!」
「いーや、俺が貰ったぜ!」


 魔法付与された大剣を構える魔法剣士トシオ!

 同じく魔法付与された戦斧を構える魔法戦士カズシゲ!


「食らえ!魔法剣、|ウインドセイバー《裂刃の風斬》!!!」
「爆ぜろ!魔法戦斧、魔爆怒号撃滅破!!!」


 ― バシュッ!シュガアアアアアアアアアアアアア!!!
 ― ドガッ!ドゴゴゴオオオオオオオオオオオオン!!!


「ふん、悪くはない……が、召喚者にしては大した事はないな!それ!」


 ― ズオッ! ザンッ!


 力を込めた聖剣の一振り!


 ― バギュンッ!ベシンッ!


 ただそれだけで魔法剣・|ウインドセイバー《裂刃の風斬》と魔法戦斧・怒号撃滅破が消滅!


「なんだと!?」
「バカな!?」


 驚くトシオとカズシゲの背後で、バチバチと聖剣が雷(いかずち)を纏いうなっている!


「テメー、生意気なんだよ!食らえ、勇者必殺の|ジゴブレイク《勇者の雷斬》!」


 ― バチバチバチバチ、カッ!ザキュウウウウウウウウウン!!!!!


 召喚勇者アキヒロの聖剣から放たれる|ジゴブレイク《勇者の雷斬》!


「ぬぅぅぅぅぅ……でえええええええい!」


 そのアキヒロのジゴブレイクに対して、またも聖剣の一振り!


 ― バジュゴオオオオオオオオオオン!!!!


 やはり霧散するジゴブレイクの雷斬波!


「な、バカな!俺の最高の一撃だぞ!?それを剣の一振りで消滅させるだと!?」
「嘘だろ!?」
「なんだよ、こいつ!?」


 あり得ない事態にパニックに陥るアキヒロ!

 そして顔を引きつかせるトシオとカズシゲ!


「ふん、ヒロキの|ジゴブレイク《勇者の雷斬》と比べりゃ線香花火みたいなもんだな!ジゴブレイクって言うのはこうやるんだぜ!それ、|ジゴブレイク《勇者の雷斬》!」


 ― カッ!ガラガラガラ、ドシャゴオオオオオオオオオオオン!!!!


 聖剣から迸る超極大の雷斬波!

 それが縦一閃、アキヒロ達を襲う!


「ぎゃああああああああああああああああああああ!!!」
「どっへえええええええええええええええええええ!!!」
「うびゃびいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!」


 ― ガラバゴオオオオオオオオオオオン!


 俺の放ったジゴブレイクは、アキヒロ達三人の間を縫うように叩きつけられ、大きく地面が割れた!

 その迫力と衝撃に、腰を抜かしてへたり込むアキヒロ、トシオ、カズシゲ。


「いいいいい、今のはジゴブレイクか!?」
「ままままま、さかこの野郎は!?」
「ししししし、真正勇者か!?」

「さあ、どうかな」

「有り得ねえ!連邦の真正勇者は、半月ほど前から無政府地帯に向かって留守のはずだ!」


 む?アドレア連邦の真正勇者も無政府地帯へ向かったのか?

 もしやチャイ帝国やマウリア共和国の真正勇者にも、すでに神託が下って動き出しているのかもしれないな。

 それにしても|無政府地帯《あそこ》には一体何が有るんだ……

 おっと、いかん。そんな他所事を思っている場合じゃないな。


「おい、おまえ達。勇者云々はどうでもいい。それより、おまえ達が俺達とあの村に干渉しないのであれば見逃す。そうでないなら……」

「「「そそそ、そうでないなら?」」」

「この場で屠る!さあ、好きな方を選べ!」

「いいい、いいのかよ!俺達には勇者法によって……」

「|ライディーン《勇者の雷》!」


 ― ガラガラガラが、ドッシャアアアアアアアアアン!!!!


 煩い!とばかりにアキヒロ達の周りに雷(いかずち)を落した!


「ひぃぃぃいいいいいいいいい!!!!」
「こここ、今度はライディーンかよ!?」
「まままま、間違いない、こここ、こいつは真正勇者だ!!!勇者法は通じねえ!!!」


 まさかの真正勇者の登場に、激しく狼狽しまくるアキヒロ達!

 まあ、まだ野良だけどな。

 というか、出来ればずっと野良のままでいたいなぁ。

 ほんと、大異変なんて起きない事を祈るぜ。そうすりゃ神託なんて下りないし。

 そんでもって、早くカンデュラに移住して結婚式を挙げて幸せな新婚生活を……


「はっ!」


 ぶるるるる、いかんいかん!また他所事を考えてしまったぜ。


「俺も急いでいる。返事が無いのなら拒否と受け取り今すぐ屠るぞ」


 そう言ってアキヒロ達に返事を迫った!

 だが、こいつらの運命は恐らく決まっている。


「わ、わかった降参だ!」
「あんたとあの村には手を出さねえよ!」
「だから早く行ってくれ!」


 アキヒロ達は、涙目になって降参。こちらの条件を飲んだ。


「いいだろう。おまえ達、さっさとここから立ち去るがいい」


 そう言いうと、俺は普段着姿に戻り、聖剣を鞘に納め踵を返した。

 直後!


「バーカめぇ!」
「俺達相手に簡単に背を向けやがって!」
「調子に乗り過ぎなんだよ。ターコ!」


 スキを見せた途端、三人揃って背後から襲いかかってきた!

 もちろんこうなる事は読んでいた。

 出来れば外れて欲しいと微かに期待をしたのだが無駄だったようだ。


「食らえ!スーパージゴブレイク!」
「切り裂け!ハイパーウインドセイバー!」
「爆ぜろ!超ド級魔爆怒号撃滅破!」


 アキヒロ達の三位一体の攻撃!


 ― ジゴワッシャアアアアアアアアア!!!
 ― バクフウウウウウウウウウウウン!!!
 ― ドッゴオオオオオオオオオオオン!!!


【聖雷】【爆風】【怒爆】三つの異なる力が一体化し、超暴力的な波動が迫る!

 しかし――


「 炎 獄 流 星 斬 ! 」


 ― ボウッ!グゴゴゴゴオオオオオオオ……ドオオオオゴワアアアア!!!!


 こうなることを予想して、予め大技の溜めは整えていたのだ!

 敵の三位一体の攻撃に対し、炎獄流星斬の極炎斬波が迎え撃つ!


 ― ジュバアアアアアアアアアアアアアア!ザシュンッ!


「ぎゃああああああああああああああああああ!!!!身体がああああ!!!」
「あじいいいじじじじじじじいじいいいいいい!!!!肉があああああ!!!」
「げべええええええええええええええええええ!!!!焼き裂かれるぅ!!!」


― シュゴゴゴゴ……


 アキヒロ達の超暴力的な波動は炎獄流星斬の極炎斬波にかき消され、アキヒロ達も大ダメージを負った!

 周囲に焼けた臭いが漂う。

 自分で繰り出した剣技だが、人の焼ける臭いは本当に嫌なものだ。


「おまえ達の行動は、まことに分かりすいな」


 そう言いながら俺は目を細めてトドメを刺しに……


「ま、まってくれ!」
「お、俺達が悪かった!」
「ど、どうか勘弁してくれ!」


 身を裂かれ、身体を焼きながら、土下座して必死で許しを請うアキヒロ達!


「駄目だ、二度目のチャンスは無い!」

「「「 ひいいいいいい!!!! 」」」

「……と言いたいところだが、どうやら俺が手を下すまでもないようだな」

「「「 え? 」」」


 先程まではアキヒロ達を蔑視していた俺だが、今は憐みの視線を向けている。

 何故なら……


 ― シュウウウウウウウゥゥゥゥゥゥ……


「うぉ、なんだよこりゃ!?」
「身体が黒く変色する!?」
「なんだ、どういうことだ!?」


 アキヒロ達三人は、己の身体が黒く変色し始めた事に激しく狼狽した。

 召喚者達は、魔力を使い果たすと『身体が黒く変色して黒き塵と化す』か『廃人』となる。

 どうやらアキヒロ達は、今の攻撃でちょうど魔力を使い果たしたようだ。

 それにしてもまだ若そうなのに、今までどれだけ魔力を振るい暴れて来たんだ?

 召喚勇者|オスカー・ブラウン《ハヤト》の場合は前異変にも参加して、その|後《ご》五年も経ってから黒き塵と化したと言うのに……

 だがこいつらの末路は決まった。気の毒だが、三人は黒き塵となって、このティラム世界で人生を終えることとなる。


「残念だが、おまえ達の命はあと一分ほどだ。もうどうあがいても助からん」

「そんな!嘘だろ!?助けてくれよ!」
「なんでだ!なんで俺達がこんな目に!」
「俺はこの世界の頂点、勇者なんだぞ!こんなことあっちゃいけねえ!!!」


 ― パラッ……


「「「 !!!??? 」」」


 アキヒロ達の全身は完全に黒化し、パラパラと崩壊が始まった。


「ひっ!身体が!?」
「ひ、拾え!散らすな!」
「俺達が悪かった!どうか助けてくれ!」

 俺に縋ろうとアキヒロは手を伸ばす。


 ― バサリ


 しかしその手は、俺に触れる前に崩壊して地に落ち崩れた。


「ひいいいいいいいいいい!!!俺の腕が!腕があああああああああ!!!!」


「諦めろ、もうどうしようもない。せめて死ぬ前に今まで仕出かした事を懺悔するんだな。運が良ければ魂は浄化されて、この世界で転生できるだろう。次は良き人生を送る事を祈る」


「いやだああああああ!死にたくねぇえええええええええええ!」
「助けて!助けて!助けてええええええええええええええええ!」
「なんで俺様がこんな目にいいいいいいいいいいいいいいいい!」


 ― バサッ!……


 アキヒロ達三人は、大絶叫の直後に身体が崩れ、黒き塵となってティラム世界から消滅した。


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【討伐完了報告】


 
「一族から聞いてはいましたが、本当に召喚者は【魔力切れ】を起こすと消滅するのですね」


 ミヤビは、先程迄まで召喚者達であった黒い塵の小山を呆然と見ていた。


 ― ゴリゴリゴリ……


 俺は穴を掘って黒い塵を埋葬してやり、アキヒロの持っていた聖剣に一文掘りこむ。


『異世界から召喚されし勇者アキヒロ、魔法剣士トシオ、魔法戦士カズシゲ。
 リットールの地にて魔力切れを起こし帰らぬ人となる。
 ティラム歴2021年1月某日。』


 ― ドスッ!


「これでよし」


 アキヒロの聖剣を墓標代わりにして地に突き刺した。


「ちゃんと埋葬されるのですね」

「ん?まあね。こいつらは自分の意思でティラム世界に来たわけしゃないからな。召喚されなければ、『アース世界で普通に暮らしていたのでは?』と思いもするのさ。見方を変えれば俺達のために犠牲になった被害者とも言えるからな……だから弔ってやらないと」

「ユリウスさんは優しいのですね」

「そうかな?」

「そうですよ。その優しさを見込んで一つお願いがあるのですが……」


 なんだろう。何か悪い予感がする……


「実は私達ラミア族は絶滅危惧種で……」

「却下!」

「なぜ!? まだお願い事を言っておりません!」

「 種だろ! 」


 ― ギクッ!


「な、なぜわかるのです!?真正勇者様には読心術が御有りなのですか!?」

「レイミアさんにも頼まれたんだよ!『勇者なのに絶滅危惧種を見捨てるのか!』って脅されたし」

「あんのバカ姉!余計な事を……」


 ― ギリリリぃ


 そんな歯ぎしりするほど悔しいの?


「いや、ぶっちゃけ絶滅を防ぐなら、勇者みたいなレア人間なんかじゃなく、誰でもよいのでは?」

「何を言っているのです!?私達ラミア族がレッサーラミアやゴブリンみたいに相手を選ばなくなったらこの世の終わりですよ!」


 ミヤビは真顔で反論する。えらい迫力だな。


「そんな大げさな」

「ユリウスさん、忘れていませんか?私達には|ラミアの魅了《ラミアテンプス》という能力があるんですよ!もし心悪しき者の種を受ければ、五割の確率で心悪しき因子を持つ亜人ラミアが生まれるんです!そんな心悪しきラミア人が国盗りでも画策すれば、魅了を駆使して容易く政権を奪ってしまいますよ!そして悪政を敷いて民を苦しめます!いいんですか!それでも!」


 うぉ、すごい剣幕!?

 ミヤビのマシンガントークとその内容にたじろいでしまう。


「え、えらい具体的だな……でもそんなこと現実には……」

「400年程前、実際に起きた事なんです!」

「げ、そうなの!?なるほど……ラミア族が相手を選ぶ理由がわかったよ。軽率な意見を言ってすまない」

「じゃ、じゃあ!」

「それでも却下」

「ぶー!」


 ラミア族に生まれる事はなかなか大変なんだな。

 俺、ちょっと甘く見ていたよ。

 そして、ミヤビ……

 清純そうに見えても、中身はラミアだと言う事が、よーくわかった。






 *





 ◆リットール中心街 冒険者ギルド



「嘘でしょ!?あのティラムドラゴンをアンタなんかが討伐するなんて!?」


 受付嬢ベラは、紅い目をさらに赤くして、討伐依頼完了のサインと討伐部位を交互に見ながら驚愕した!


「じゃあ約束通り出禁は解除。討伐料は全て現金で頂くぜ」

「ぐぬぬぬぬぬぬ……」


 悔しそうな顔をしていたベラだが、突然ニヘラと人を見下した笑みを浮かべた。


「いいえ、認められませんね。ユリウスさん。あなたを文書偽造と窃盗の疑いで警察に引き渡します!」

「はぁ?何言ってんだ、あんた!」

「だってこの書類のサインはきっと村長ではなく、あなたが偽造したものでしょう?討伐部位の魔核にしてもどこかで盗んだものに違いありません!」


 ニヤニヤと勝ち誇った顔のベラ。

 この笑顔……こいつ人をイライラさせる天才だな!


「おい、ふざけるなよ!ティラノドラゴンみたいな竜の魔核、盗むにしても市場に出回っていないだろう!」

「さあて、なんのことやら。しかし私も鬼ではありません。今すぐ魔核を置いて、当ギルドから去って頂ければ大事にはしませんよ」

「くっ……こいつ!」


 周囲の冒険者達は、前回同様ニヤニヤと傍観するのみ。

 そして職員は……今回は俺の周りを取り囲み始めた。

 言う通りにしないと、本気で警察に引き渡すらしい。


「貴様ら……」


 ― ブチンッ


 キレた、完全にキレたぞ!


「上等だぁ、ここまでコケにされて黙っていられるか!ベラと言ったな、この代償高くつくぞ!」


 ― バシュンッ!バリバリバリバリ! ゴオオオオオオオオ!!!!!!


 全身に紅蓮の炎を纏い、雷を放ちながら抜剣!

 ギルド内を熱波と雷が荒れ狂う!


「ひ、ひいいいいい!!!!あ、あんたいいの!?本当に警察を呼ぶわよ!?」

「警察だろうが軍隊だろうが好きなだけ呼べ!いいから死にたい奴からかかってこい! 」


 もうこんなギルドなどしったことかああああああああ!

 全部まとめて灰にしてやるうううううう!

 それに騒ぎを起こして名を売った方が仲間がやって来た時に無事であることを知らせる事ができる。

 うん、よく考えれば良い事尽くめだな!ならば、なるべくド派手に暴れてやるぜ!

 今さら泣いて謝ったってもう遅いからな!さあ覚悟しろ!


 ― ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……


「ちょっと、落ち着いて下さい!ベラさんでしたっけ?私が証人になります。こちらの方は確かにティラノドラゴンを倒しましたし、そのサインは確かに村の代表たる村長直筆のもので間違いありません。私を始め、村人全員が見ていましたから」


 そう言ってミヤビは割って入り、証人になってくれた。


「あんた誰よ!部外者は首をつっこんで……」

「私はラミア族の巫女ミヤビです。あなたこそ、そんな態度で大丈夫ですか?」

「何がミヤビよ!ラミア族がなんだって……ミヤビ?」

「はい」

「もしかして連邦から現人神認定されているミヤビの村のミヤビ様?」

「そうですよ」

「…………」

「にこり♪」


「ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!
 嘘よ!あんたがミヤビであるわけない!そんなこと絶対に信じ……」


 ― どろん


 ミヤビは人間形態から亜人ラミア形態にチェンジした。


「絶対になんです?」

「絶対に……信じます……」

「ありがとう♪」


 ベラはガックリと首が折れた。

 そして、


「きーーーーーーっ!」


 クシャクシャクシャクシャ!ビリビリビリィ!

 よほど悔しかったのか、ベラは討伐依頼完了書を控えもろとも破り捨てた。


 うん、実に悔しそうな良い表情だ。グッジョブ、ミヤビ!


 他の職員が慌てて破り捨てた書類を回収するも全ては集まらなかったようだ。

 それでも手続きに問題は無く、その後は可及的速やかに手続きが済み、俺は討伐代金40万ルブルをキャッシュで手にした。

 もちろん出禁も解除だ。


「これだけ現金を手にすりゃ、別に出禁でもかまわなかったな」


 カードに預金しようかとも思ったが、どうもこの国にいる間は預けるより現金で手にした方が良さそうだ。

 俺とミヤビは、ベラ、ギルド職員、冒険者達を侮蔑の目でガチ睨みしてから冒険者ギルドを後にした。

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