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くだんの件

 くだん 日本国語大辞典によれば、泥棒の隠語で豚を指す「くだん」と言ふのがあったさうである。

 さう言ふわけで人牛で、牛だかから生まれ、三日ほど生きて、豫言して死ぬと言ふ。
 西日本では「人牛」として親しまれたらしい。水木しげる先生が『妖怪事典』で件を紹介する際 民俗のない地元である鳥取(@西日本)で、御父上から聞いた話を書いてゐる。

 日本国語大辞典によれば陰茎を指す語で「くだんの物」と言ふのがあるさうである。これはいいか。

 氷厘亭氷泉『日本怪異妖怪事典 関東』109頁に関東の伝承で、もろこしで麦を守護する「くだん」と言ふ犬が出たと言ふのがある。その話では「拠って件の如し」に関する言訳説話が入ってゐる。

 この手のフォーマット
 ダイシといふ、足の悪い女性が、ファンタジーな方法でバーラト星系とかに行き、なんか犬の吼える畑から、穀物を持ってくる。柳田國男先生はここまでしか書いてない。くだんん。

 ダイシは冬至にやってくると言はれる。ダイシは天台宗では智行大師、真言宗では弘法大師に代るってふか、さういふ僧が婆ちゃんをなんかするといふパターンがある。ここで、上人様をおもてなしするためにアレな方法で材料を持ってきた老婆をあれするため、御坊は足隠しの雪を降らせると言ふのが語られてゐるが、空海上人自身も、なんぞ非合法的な形で、支那から麦を盗んで隠し持ってきたので麦にはその時の褌の痕である線が、とか言はれる。

 「稲は南方の作物」とし秋津島での栽培は微妙といふ押井守説が、それをアフリカンカルチャーの一環で「鉄板でインド起源だと思ったら支那らしい」とする中尾佐助あるいは、南方での二期作(ヒツジと呼ばれる二度目の穀物がちゃんと実る一株で二度おいしい)を紹介する佐々木高明説に近い。とか言ひながら押井守著『ジブリのなんとか』改訂版を見てない。そこの宮崎駿評「生産関係が出ない」が、出来る言訳。諸般の事情で没になった『シュナの旅』の主人公は麦を取りに行く人で、神の土地で習った輪栽式、中耕作業、ヤックルの舎飼ひ、豆系の飼料の開発をやったシュナがうんたらかんたらに行かない。稲の他に移植栽培(種をまいて適当に成長すると耕地Bへ移動)をやるシコクビエ(「反当り四石取れるので4石稗」説と「四国でとれるので」四国稗説がある)といふ、チベットにはちべっとも生やしてないしその形跡もないらしいものをモデルにした臭い、ヒワビエの移植栽培がぴゃっと出て終る。『千と千尋の神隠し』でヒロインがお湯屋で働いてたり『ラピュタ』で一応百姓が経験則に基づく太陽の出るところから方角を言ったりがある上、『トトロ』に至っては、百姓があっちで、何したりそれしたりしてをり昭和三十年代、核家族をなし得た考古学の先生が作る娘がトトロに会ふわけだし。犬が出てくる原典は『もののけ姫』的なアレが。

 大麦ぃ~。それこそ件のシコクビエは、日本書紀に記述がないが、コウボウビエ、ダイシビエと言ふ呼称はある。大麦。

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