「多数ある太陽を英雄が射まくって一つにした話」の射手を、アマンシャグメがビッチとして担当する話の詳細が不明。さらに、南方熊楠の引く傳承でアマンジャクは7つの内の6つを射落として(全集第四巻p584『アマノジャクが日をうち落とした話』)ゐるが、氷厘亭氷泉『日本怪異妖怪事典 関東』によれば、茨城の傳承で、9つの凶悪な太陽が日向の国で多数射落とされたうち、常陸の国まで逃げてきた2つを、名アーチャー友永が射落としたと言ふ玉取、一の矢、二の矢などの地名起源のものと、埼玉で橘諸方さんが偽物の太陽を射たので射魔(いるま)の地点は入間といふ話があるさうである。
アマノジャクと言ふ呼称で、秋田県では、チャタテムシ(村上健司『日本妖怪事典』20頁)、地虫(「ざっくりコガネムシ科の幼虫」を一般の用法とする日本国語大辞典によれば蟻地獄も指すさうで)が言はれたとかであるが、氷厘亭氷泉によれば、茨城、神奈川など関東広域で、ジャコウアゲハ(蝶だ)の蛹をさう称し「お天道さまによって折檻される」といはれる。ひょーせん大先生は、その「後ろ手に縛られた」人間に見える蛹へ「あまんじゃくじゃくなんで縛られた親に不幸で縛られた」と囃す歌を紹介してゐるが、何で太陽に折檻されてるか起源は書いてない。本『日本怪異妖怪事典 関東』はペーパーバックの割に「人を×せる厚さと重さ」なのだがこの辺が「CoviD-19のばかぁ!!」案件であるらしい。この辺ではなんかで、『精霊の守り人』の土人とアレの人傳承張りに、太陽アーチャー傳承と折檻された傳承がくっつく筈なんだ。その作業をするためのエビデンスが、オキアミレヴェルですら無いn、あ柳田國男『桃太郎の誕生』で雨蛙を指してアマンジャと呼ぶ地方があるとか言ってるけどいいや。
折口信夫先生の、壱岐で「孵化した蟷螂」を「後ろ手に縛られて折檻されるアマンシャグメ」と称したとするアレを南方熊楠大先生が『烏の金玉』で引用してゐるのだがインデックスに記載がない。REグィリー『悪魔と悪魔学の事典』400頁によれば、アメリカのオザーク州にある迷信でカマキリは、「Devilの乗るもの」で、タバコの汁を吐いて人の目を悪くするといはれ、Devil's Horse(マンティスと嫁)を有毒とする地方が結構あったといふ。カマキリを「なんかきもい生き物」としてるのがアメリカにもあった。
シシ虫 と呼ばれる、庚申の日に天へ昇って人の寿命を決める三尸の関係虫はチャタテムシだと言ふのが南方熊楠説であるが、南方大先生はちいチャタテムシの亜種にアトロポスを上げる。南方全種第三巻584頁くらゐ。荒俣宏『世界大博物図鑑』によれば、小豆洗いのババア、あるいは隠れ座頭の音とされる。
デスウォッチビートルと呼ばれ、欧州では声を聞くと死ぬとか言はれるシバンムシ(甲虫)も、小泉八雲はチャタテムシとか言ってゐるらしいのだが、REグィリー『妖怪と精霊の事典』にある「Deathwatch Beetle」の訳語がチャタテムシ。