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ねこねこまたまた

 久井諒子先生はなー、面白いマンガ書くんだけどな―、なんかなー。

猫又。 多田克己『幻想世界の住人たち4』でも村上健司『日本妖怪大事典』でも、「しゃべる猫」は収録されるが、化け猫~猫又記事で、『耳嚢』にある、「二本足で立ち襖を開けて閉めたのを飼い主に見られたと知った」ぬこ様が行方不明になったと言ふ話がない。『和訓栞』他で、狼の牙を持つなどとされ、『明月記』も狂犬病にかかったやつではとか言はれる他、徒然草(正体がペットの犬)とかあと南方熊楠が文献を紹介しながら、かつて「猫狗」と言はれてたのが、猫跨になったと言ふ説を出す。エゲレスのぬこフォビアとの関連性を認めはせん!!認めはせんぞぉ!!(バスカビル家の犬のネタ元は猫に決まっとる説等)

 どう(猱)または「じゅう」(豸+戎) テナガザルらしい。このドウが支那の文献に出てくるらしい。なんかのおさるらしいこれは、収録された書籍が和訳された際に、秋津島の生き物だか何だか(「ムクザル」といふ根拠不明な解説と「土佐の白髪山にいる猫」説がある)で「また」と言ふ語が充てられたさうである。でこの「テナガザルに似て毛長く黄赤色 またいわく、尾長く金色をなす」おさるファーは馬の鞍の飾りに使はれるとされる。毛の長さが一尺とかなので若干盛られとる可能性が。しかもこのおさるは、南方熊楠によると「よく睡る」さうなので多分夜行性のキツネザルらしいのだが傳聞なので、おさるを食ふといはれる(この辺の情報が明代からアレした過程あるけどいいや)。
 南方熊楠『猫又』(平凡社刊 『南方熊楠全集』第六巻P502)での、攀木性のある肉食猴、とその傳播してどうのなアレでそのアレっぽい猫と、本に出てくるマタ(ぬこぢゃないらしい)との合成によって、「また」が適当な字になり猫跨~猫股となったといふ説、これは後にD=ディクソン『アフターマン』で、ぐるんぐるん腕に拇指対向性手足と肉球&纏じょう性尻尾を獲得したぬこ様がおさるを食ふと言ふのと謎の親和性を持つ。
 その『アフターマン』でアフリカのサヴァンナ捕食者はカルノパピオと呼ばれる肉食二足歩行のバブーン系おさるであるが、南方熊楠によれば、支那の文献に「独」と呼ばれる陸生肉食おさるが出てくる。いろいろあってこれの方のモデルはマンドリルらしい。南方先生は『猫又』の方でこの独を「ちなみに」語りで出してゐるが、荒俣宏『世界大博物図鑑』によれば、津軽では猫又と狒々を同類とする。

 なんかのフォーマット。山の神へ、一年に一辺「をとめ」(成人した女性を指したとかはいいや)を捧げるある村で、どっかのホモサピ系ヒーローが犬を連れあるいは、わんこだけがその使徒をやっつける。

 「早太郎(狒々退治の筈の信濃犬)めっけ犬(狢殺しの丹波犬) 眼検枷(めたてかい) めっき しっぺい太郎(狒々退治の信濃犬) 三毛犬 四毛犬(狢スレイヤー) べんべこ太郎(たぬ殺信濃犬)」と言ふ犬に関して調べるモチベがない。さらに多田克己先生によると山の神のお使ひはおさる、狒々の他に狸、猫、蜘蛛ともされる。えー。女性の経血を舐める犬とか魔除けとして犬デザインの「生理用品(破瓜の証拠など)入れ」とかの「女性と犬」。


 柳田國男『禁忌習俗事典』によれば、山で「おさる」は禁忌とされ「山猫」と言ひ代へる地方があった。
 ぬこ様は山とかでおさる、蛇の次に、牛と共にタブーとされ名前を忌まれ、マガリ トリスケかトリ チョウタ ジンタ ヨモとか言はれた 八丈ではかつてお正月にぬこ様を指して「カハブクロ」と言ってゐたさうである。あとジャパニーズボブテイルの言訳で、尻尾が下がってるのは下がり猫と言って忌まれたさうである。尻尾の長い近所のぬこ様が十歳を超え尾が不気味にうにょろんうにょろんと動くが、多田克己説でかう言ふのは猫又になる言訳ださうである。色々あるので、イタチ科は総じて言ってはいけない名前であるが、南津軽でのクマの異称がクロゲの他にイタチ 北秋田でも「イタチ」とかあるので世の中侮ってはならないのである。

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