• 異世界ファンタジー
  • ミステリー

ボコイを飼う今日このごろ。〜 Writer at Work 10/22

 数日前から「ボコイ」と「マチウ」に〝スマホ対応フォーマット〈SP format〉〟というのを導入しました。
 見ればすぐにわかるとおり、ページがビッシリと文字で埋まっていたものを、改行を多くし、行空けなどもして、もうすこしゆったりとした形に変えたということです。

 きっかけは、高校生にスマホで私の作品を見せてもらったこと。一見して画面を埋めつくす大量の文字に愕然とした。しかも、慎重にスクロールしないと、どこまで読んだかすぐ見失ってしまいそうなこと。

 そこで、生徒たちや同僚の講師たちにも聞いてみると、今やこうした記事を閲覧するのはほとんどスマホだという話。コンピュータを持っていても、家族と共用で自由に使えなかったり、ゲームやレポート書きでしか利用しないという話も。

〝Web小説〟というのは、単にディジタルメディアを媒介しただけの、たとえば「電子書籍」という出版形態のように、雑誌や書籍というメディアの印象をそれなりに残した代替物、レプリカ的なものではないことを痛感した。

 しばらく前に〝ケータイ小説〟というものが流行った。横書きで見かけはスカスカ。内容もそれ相応のものだと、ファンを自称して何冊も持っているという女生徒本人から聞かされたものだが、書店で見かけなくなって「やっぱり一時的な流行だったか」と思っていた。
 だが、あれはまだスマホが一般的でなかった頃のことだ。現在のすくなくとも手軽で気軽な読書スタイルは、さらに高度に変質を遂げ、今やもっと広汎な年齢層、読者層にわたってあの小さな画面を通して行われるものになりつつあるのか、と。

 カクヨムには、このような小説サイトでの〝必勝法〟を指南してくれるような記事がいくつも載っていて、それはそれで興味深く読ませてもらっていた。
 そこで言われている〝読みやすく書く〟というのは、たいがい同じ文中で勧められているような「最初の数行でその世界がわかるように」とか「キャラの特異さを強調して早めに読者の興味をつかむ」といったような、悪くいえば読者に必要以上に媚びた方法論のひとつか、と思っていたのだ。

 もちろん、〝読みやすさ〟のニュアンスの中には、文章のレベルを落としてでも気軽に読めるようにとか、興味深さや新鮮さよりはなじみやすい文章で惹きつける、といった意味合いもあるのだろう。しかし、物理的な、読書に使用されるツールの問題も含まれていたのである。

 そうとわかれば実験あるのみだった。
 まず「ボコイ」を表示した画面をスマホレベルに縮小してみた。400字づめ原稿用紙1枚程度の分量しか表示できない。
 しかも、カクヨムにアップした時点ですでに横書きになっている。私はもちろん縦書きで執筆しているから、横表示されただけでリズムにギクシャクしたところが出たり、改行の意図がわかりにくくなったりしている。
 たしかに、これでは見にくいばかりか、内容も入ってきにくいし、私がエンターテイメント小説には不可欠な要素だと考えるリズム感、ノリをこちらの意図どおりに伝えることなど望むべくもない。絶えずスクロールする必要があることまで含めると、まったく別モノを見る思いがした。

 ためらいも何もなく、すぐその場から直しを入れはじめた。スマホを模したその画面に向かってである。それなりに練ったはずの文章を切り刻むのだから、さぞ苦痛な作業になるにちがいないと思いつつ……。

 ところが、そこには意外な発見が待っていた!

※ この稿はまだ続くので、また日をあらためてということにします。

 では、次回の更新で。

コメント

コメントの投稿にはユーザー登録(無料)が必要です。もしくは、ログイン
投稿する