近況ノートを久しぶりに書こうとして、ハタとタイトルも変えねばならないことに気づいた。前回(なんと、3月!)は『ボコイを飼う今日ころごろ。』だったのです。飽きっぽい性格はさまざまな面でわざわいしているのですが、近況ノートのこともほぼ、キレイさっぱり忘れ去っていました。
作家の律儀さ、誠実さは、本文の内容についてのことだけで十分――という居直りグセがぜんぜん抜けていませんね。あとはせいぜい締め切りや更新の頻度くらいに気を遣えばいいだろう、と。(さらに居直ってますな)
ということで、タイトルを元に戻すことにしたのですが、これもすっかり忘れていて、今別画面で見直しながらやっと入れたところです。そうか「マチウをめぐる今日このごろ。」でしたね。いやはや……。
この期間には、でもカクヨムでは「地球獣ボコイ」にかかりっきりになっていたわけで、けっしてご無沙汰感はないのですが、ノートを放置していたことは事実。こういう肉声っぽい文を楽しみにしてくださっている方も多いでしょうから、できるだけ書くようにしていきたいものです。ハイ。
で、今回は、タイトルを戻したことでもおわかりのように、再開「マチウ」についていくつか。
[揺籃篇]再開以前の最終更新がほぼ1年前だった(!)ので、頭をいったんそこまで巻き戻す必要がありました。そこからあらためて前を向いて構想をすすめたわけです。ほぼ原稿のストックは尽きていたのですが、「北国の再会」の原型はありました。なので、今のところは中断前からあらかじめ想定していたものを具体的な形に仕上げている、という感覚です。
去年のGW休暇に書きかけの段階で発表し始めたのが[揺籃篇]。決定稿とはほど遠いもの、という認識でいたので、エピソードの前後を入れ替えたり、キャラの名前を変えてしまうくらいの事後処理もありうると断っていました。事実、序章を「食いっぱぐれの傭兵たち」と「罠の真っただ中」に2分割するとか、まとめ方が難しかった「マルリイの盟約」のエピソード群の前に発表した「わたくしをお召しかかえください!」を後に本来の位置に入れ直し、しかも2分割するとかの調整も行いました。
[胎動篇][生誕篇]でも、一本の長編あつかいだったものを事後に2分割したり、さまざまな手直しをほどこしましたが、あれはいわば推敲というべきものだったり、カクヨムという発表メディア向けの改造でした。つまり、実際の執筆はほぼ完全にあの順番で行われたわけです。1エピソードごとに2つ(ないし3つ)の場面が交錯して描かれるという体裁になっていますが、各エピソード間にはあっても数時間のズレしかなく、私としては眼を交互に振り向けていくという感覚でした。なので、エピソード順を後で入れ替える必要はほとんどなかったということです。まったく別の雰囲気、理屈で並行している場面を交互に書き分けるのは大変だろうと思われるかもしれませんが、場面が転換していくリズムというか、「そろっとあっちも次が始まりそうだ」と気を配る感覚はそれなりに自然な流れに乗っている感じで、そこをちゃんと評価してくださっている方もいてくださるのが嬉しい限りです。当然わかりにくいと苦言を呈される方もいらっしゃいますが、私としてはすくなくともふつうに読んでそこが障害になるような書き方はしていないつもりです。
それに対して、[揺籃篇]は、いくつかの連続するエピソードがまとまった形でつづき、また空間的・時間的に離れたところからおもむろに始まるという体裁になりました。先に公開した「キールの巣窟」関連のエピソードも、まさにそういう形になっています。ところが、私の原稿ではその前に書きかけの「北国の再会」がずっとはさまっていたわけですね。たぶん、そのときの私としては、これまでのスピリチュアルの帝国を中心とする大陸南部からすればまるで異世界である北方王国の全体像――その大地、風物、状況、人の気質、主要な新キャラ像を丸ごと考え出してそのどこから手をつけるべきかと迷うより、キールのダンジョンやツェントラーなどとの再会、そして〝周旋屋デュバリ〟が語る傭兵の情報網の仕組みなどのほうが手をつけやすく興味も惹かれたということだったと思います。
私にとっては、現在執筆中の〝北国篇〟が時系列的に先行しており、本来先に読まれなければならないものであることは自明のことでした。なので、おそらくもうすこし書き進んだ時点で、またもやエピソードの並べ替えをやることになりそうです。その上、章の切れ目をはさんでそれを行う必要もありそうな気配です。発表されたエピソードを順に追ってくださっている、熱心かつ最良の読者の方々にはご迷惑をおかけすることになるかもしれません。
しかし、幸いなことに、たとえ現在の順番で読み進んでいただいた場合でも、今のところ理屈の面で矛盾が生じたり、情報の面で前にもどって読み直しが必要になるようなことはなさそうです。物語の印象にすこしズレができてしまうかもしれませんが、それは全体を通した場合の不自然さを解消するためだとご承知いただき、ご容赦願いたいと思います。公開再開段階から本来の位置に入れていくという方法もありましたが、一挙にまとめて公開できない以上、途中に書きかけの部分がはさまるほうが不親切なのは当然だし、だいいちどこまで読み進めたのかわかりにくくなることだけは避けたいのです。
なので、再開してからの「北国の再会」「傭兵が生き残る道」「蜃気楼の都」とプラスアルファの部分が、その次に来るエピソードの公開と同時に、おそらく本来あるべき位置に移動することになります。言い訳めくのを承知で言えば、第一回Webコンテストに出した「純真なマチウ」というシンプルなタイトルのもとに書かれたものがひと続きの〝生誕篇〟であったように、第3部としてある[揺籃篇]も元々その〝生誕篇〟に匹敵する600ページを超える構想の〝揺籃篇〟という大長編だったわけです。体裁は変わっても、骨太な本来の構想は変えていません。それを実現させるためにどうしても必要な処置なのだとお考えいただければ幸いです。
では、また次の更新で――