「ボコイ」の第二章をアップしました。前回ちょろっと書いてしまった「十五少年漂流記」へのオマージュという部分ですね。
無人島――好きなんですよ。高台に登って、その向こう側がどうなっているのか、期待と不安の中でパッと視界が開ける瞬間。地形のうねり具合をとらえるとか、何かの目印になりそうな奇岩を見つけるとか。そして、登ってきた経路をふり返ってみて、この風景全部が今は自分のものだとあらためて実感する喜び。じわじわとわいてくる愛着。
森の中で小鳥の鳴き声に混じってかすかな音を耳にし、コケのビッシリ張りついた岩の間に冷たい湧き水を見つけて狂喜するとか。また、洞窟とかあって、ひんやりとした湿った空気を肌に感じつつ、松明をかかげて奥へ奥へと探索していくとか……。
無人島というか、財宝が隠された〝宝島〟の地図というのも大好きでした。「夏至の日の朝日が沖の奇岩のむこうに昇るとき、その影の先端が指す一本の巨木の根元を掘れ……」とかね。それを暗号化したりとか。島の地形をデザインして、……湾だとか△△山だとか□□森だとか目印の◯◯岩の名前をひねり出すとかね。小学校くらいのときかな、よくやりました。
リョウマとおいらの生活も、そんな風にもっと描きこみたかったのですけどね。話の筋と長さを考えるとこれくらいの分量ですませるしかないかなと、泣く泣くはしょった場面がいくつもあるのです。「十五少年漂流記」には、あと、岩場に生息するアザラシを捕獲して貴重な油を手に入れるスペクタクルな場面なんかもあったような……もう、クラクラするような〝冒険〟の連続なのですよ。
それに、今回リョウマたちは完全に〝待ち〟の状態なのでそれほど関係ないわけですが、無人島に漂着してしまった十五少年たちにとっては、日々の生活を充実させ、自分たちだけの〝領土〟を築いていく喜びとは裏腹に、その彼方に果てしなく広がる海をなんとか越えていく方法も考えていかなければならないという大きな課題を同時に抱えてしまっているのです。やみくもに突き進むことが冒険じゃない、命が危険にさらされるギリギリのところを慎重に見計らいながら道を切り開いていく、これぞ冒険の醍醐味なのです。
その代わり、というか、第二章の最後に待ち受けているのが「おいら」にとって衝撃的な事実と向き合う場面です。これはネタバレなしで、みなさんもその瞬間に立ち会っていただきたいと思います。これまで私家版で読んでくれている人は、たいがい「エッ?」となったようです。これから読まれる方は、どうぞお楽しみに。
第一章とこの第二章が、細かく分けると『孤島篇』ということになります。リョウマとおいら、そしてボコイの旅は、次は『北海堂篇』へと入っていきます。まだ開拓の手がつけられたばかりの北の大地の雄大な自然とともに、つぎつぎ興味深いキャラとの出会いが待ち受けていますよ。
では、また次回の更新で。