第2部に「2 英雄エルンファードの迷い」と「3 カナリエルがめざした地」を加筆して第1章はこれで完結ということになります。気ぜわしい事件が起こらない淡々とした章ですが、[生誕篇]を読まれた方なら新展開への導入部という感じで、第1部へのそこそこ補足的な説明などもあり、すんなり受け入れてもらえるのではないかと思います(期待していた反応はまだほとんどないので、こちらの推測にすぎませんが)。
私が迷っていた「カスケード城」のほうがプロローグにふさわしいのではないか(その場合は「南国の晩夏」が序章のタイトル)という件ですが、やっぱり結論は出ていません。ただ、「カスケード城」「英雄……」「カナリエル……」と続けて読むと分かるように、場面の時系列が連続しています。すると、「英雄……」を第1章の冒頭に持ってこないとおかしいのと、「傭兵狩り」を第1章のタイトルとするとやっぱりインパクトの面からも追いつめられた傭兵たちのシーンを章の冒頭にすえたいということもあり、矛盾が生じて悩ましくなるわけですね。
つまらないこだわりのように思われるかもしれませんが、小説を展開しようとする作家の工夫や苦労なんてそんなことの連続なのです。もちろん、今の形のほうが自然に読めていくことは確かなので、しばらくはこのままにしておきます。
というのは、実にバカヤロウな話ですが、プロローグの候補はもうひとつあるからなのです。実際、第2部で最初に手をつけたのはその場面からでした。今では「南国の晩夏」も「傭兵狩り」も両方とも気に入っているタイトルなのですが、その第三候補のタイトルは新体制となった帝国の運命を左右する最重要なことがらを示したものなのですよ。タイトルとしての耳障りもいいし、捨てがたかったのですがね……。
たぶん、今の形で行くなら、次回、つまり第2章の幕開きでそれをご覧に入れることになるはずです。それはそれでご期待ください。
新しく付け加えた「2 英雄エルンファードの迷い」と「3 カナリエルがめざした地」は、あまり迷うことなくスラスラと書けたものです。キャラクターが安定してきたので、彼らに好きなように会話させておけばスムーズに進行するという、典型的な例ですね。そこに「1 カスケード城」で出てきた新キャラと[生誕篇]でほのめかし程度に書いておいたことをうまくからませればこういう風に出来上がるというわけです。今までの一章分のボリュームとしては短めですが、これはこれでもいいのかな、と公開してみると納得しつつあります。
私としては、ロッシュとエルンファードの再会や、アラミクの賢妻ぶりに対する感想などが欲しいところなのですがねえ……。では、また次回。