母の手はいつも荒れていた
特に中指の先が割れたまま治らなかった
食器洗いのときには、辛いからと、半透明のベージュ色をした指サックを着けていた
たまに、食卓の上に母の指サックが置かれていた
切断された指が落ちているようで、私は気味悪がり、
見るたびに、母へと文句を言った
「気持ち悪いから、嫌だったら!」
母は、ごめんねと笑いながら、それをエプロンのポケットに仕舞った
長じて、大学生になった
レストランのアルバイトで、皿洗いを行う私の手も荒れるようになった
お母さん、あのときはごめんなさい
お皿洗ってくれて、ありがとう
そう送りたいのだけれど、
いつもどおり、
「お米届いた 元気にしてるよ」
としか書けないのだ