まだ幼い頃、座卓で無心に絵を描いていると、おばあちゃんはおかっぱの横髪をパッチンピンで留めてくれた。
「うるさいからねぇ、ほら目が近いよ」
反対側にも回って、留めてくれた。ピンクのハート形で、ふわふわのパッチンピン。
おばあちゃんは新聞紙を敷いて、私を座るとプゥと鳴るカエルの椅子に座らせる。櫛目の大きな青いコームを使いながら、髪を切ってくれた。
だけど、私はプリンセスになりたかったから、短い髪は好きじゃなかったの。
ーー美容院は、黒い針金のランプシェードを掛けた白熱灯をいくつも提げる。
根本から縛られた髪が切られる。三十五センチ。
この髪で、おかっぱのかつらが作られるのだ。
誰かの頭で、またパッチンピンを着けてもらえるかしらと、子どもらしい艶はなくなってしまった髪の毛の束を、茶封筒へと封じた。