ブルゴーニュの町外れ、野原にはサーカスが来ていた。パレード、高い八角屋根のテント。夜には花火も上がった。
カルーゼルもあった。木彫りの白馬、十三騎が上に下にと動きながら、右回りに進む。天井の天使たちはラッパを吹き、玉を連ねた電球は赤々と照る。軋む木の音と、か細いオルゴール。
朝刊の一面には、オーストリア=ハンガリーがセルビアに宣戦布告したとあった。今に戦争が始まる。
夏の盛り。次を約さぬランデ・ヴー。彼は私を白馬に乗せて、自身は握り棒に手を添えながら、私を見上げる。徴兵されゆく彼。
カルーゼルは戦火を免れなかった。彼もまた。
今でも思い出す。夏の夜、浮かんでは沈み、巡る景色。軋む木とオルゴール。揺れる焦茶の瞳。