前述の問題は結局のところ「どういう人間が生き残るか」に集約するのかもしれない。そもそも専門知識を持った人が生き残らなければ、その時点で終わりだし。ただまあ、なんとなくの知識はあるはずだから、残されたものから、これはどうやってつくられたかを推測していくしかない。
となると、お次の問題は「どうやって文明が滅んだか?」になる。
たとえば隕石とかでありとあらゆるものが破壊されてしまったら、「残されるもの」もない訳で。なんとか生き残った人々の頭の中にしか情報は残っていない。それを忘れないように書き残したものが、のちの世になって謎の壁画とかになってるのかも。
現代ベースの異世界ファンタジーについて考えると、そういう「全滅」パターンより、何かしらの方法で生き残った人たちがいて、その子孫がその異世界の住人たちである、という方が都合がいい。だって、ゼロから生命が誕生する、という状況にならなくちゃ世界が成立しない訳だし。でもまあ生命が新たに誕生するレベルまでの時間があれば、完全に別世界として描きやすくはあるけども。それならもう現代ベースじゃなくていいじゃん、ともなる。
そういう「ゼロベース」をやるなら、ちゃんと神様とかがいる、純粋なファンタジー世界をつくりたいところ。
なのでまあ、ほどほどな滅びがベストなのである。いかに現代感を異世界要素でカモフラージュするか、というところが設定のつくり甲斐があるというもの。考察できる深みをつくりたいのである。
生き残った人たちがいて、なんとかして文明を再興して、その人たちがやがて「神話の神々」となるような、異世界ファンタジー。を、つくりたい訳で。というか、「神話の神々」の正体が、実は大昔に滅んだ文明の生き残りたちだった、ファンタジー要素はどれもギリSFで通じるような説明ができる設定だった、と読者に開示できるものをつくりたいのである。構造的にはミステリーにも似ている気がする。
ところで、よくあるパターンの一つに「宇宙人が文明を授けた」感じのやつもあるのだが。神と呼ばれた存在の正体は、実は異星から来た人たちでした、というの。魔法の正体は宇宙人の技術によるものでした、みたいな。
ああいうオチは正直好きじゃない。まあそこに至るまでの物語が良いものであればそこまで気にならないのだけども、オチが宇宙人になるとそれはもう「なんでもあり」の延長線上でしかない気がするのだ。ちょっと意地の悪い言い方をすれば、作者が設定を考えるのを投げた、というか、斬新な展開を見せようとして結局宇宙人になった、みたいに感じる。
……まあそんなことを言い出したら、うちのこれも大概なんだけど。でも宇宙人オチよりはマシにしたいと思って試行錯誤。
ちなみに脱線だが、オカルト系の番組でUFOの映像出すのはズルだと思う。時間稼ぎというか、ネタがないから適当に埋めた感がある。見たいのは心霊映像なのだ。再現VTRはしょせんつくりものなので恐くもなんともないが、心霊映像はつくりものかもしれなくても、そこにリアリティがあって恐い。それが良い。壁のシミが人の顔に見える、程度はさすがにあれだが、奥の方に人が立っている、とか、気付いた時のざわっとした感じが良いのである。UFOはもうなんというか、上空を飛んでてもざわっとしないじゃん。まあリアルに体験すればさすがに違うだろうけど。
……あと、昔見た番組がすごく印象に残ってる。
UFOの映像があって、それを取り上げているのだが、そのネタ元をあたってみると、海外の映像制作会社に行き着く。その会社はUFO映像を自社の宣伝素材としてつくっていると公言している訳で。
どういうところから仕事の依頼が?と尋ねると、「日本のテレビ会社さ」みたいな返事。
……脱線してるので大雑把にまとめると、要するに「つくりもののニセモノ」だと分かったうえで、「UFOの目撃映像だ!」とさも本物みたいなノリで放映している……という、社会の現実。それを知ってからというもの、UFOだの宇宙人だのを取り上げる番組には冷ややかな目を向けざるを得なくなった。あと、一部の心霊映像もちゃんと掘り下げて調べれば、「現実の人間が映り込んでいた」とはっきりするし、「そこまで」をちゃんと放映する番組がある一方、「これは心霊映像だ!」と上っ面だけ放送する番組もある、という……。
エンタメ性でいうなら後者がいい在り方なんだろうけども、なんだかね?
そういう「間違ってる方」がつくったものだけが文明崩壊後も残ってしまった場合、のちの世の人々に間違った情報が伝わっていく……と考えると、だいぶ罪が重い気がする。
で。
欲を言えば、「滅亡」に関しては分かりやすく、理解しやすいものがいい。世界の謎が明らかになる瞬間って物語の終盤だろうし、展開は早く、情報は一気に伝わるのが理想なので。
そうなると、テンプレな滅亡が採用される訳だが。
パッと思いつくのは、上述のような「隕石からの大津波、大陸崩壊」みたいな災害パターン。もう一つは核戦争。人類の自業自得パターン。人類がやらかしたので文明が滅びました、という方が、その当時の技術力の高さを伝えられるのでちょうど良いところ。
で、で。
そうした滅亡から、いかに生き残るのか。そこが問題である。
ある時期、世界が滅亡する系の映画やら何やらが流行っていたクソみたいな期間があって、その当時の自分はそれを「クソ」だと思うくらいにはそういうのが嫌いだったのだが。ついでにいうなら「未来ってこんなディストピア」って感じのものばかり見せてくるSF作品全般も嫌いだったのだが、今はその真逆で、こんなものを書いているくらいにはいろいろ興味津々である。
なので、当時は嫌いだった映画も観れるようになって、そうした知識から考えるに……。
滅亡から生き残るパターンとしては、まず「箱舟」系。核シェルターでもいい。
これってあらかじめそうした「滅亡」を予見していて、備えている。だから生き残るのにじゅうぶんなだけの物質の備蓄もあるし、滅亡をやり過ごしたあとのことも考えていると思う。
それから、選民思想というか、「選ばれた人間」だけが助かる訳ですよ。選ぶのは権力者たちで、そこに加えて金持ちが「権利」を金で買う。金持ちだから一財産つくれるような技術とか知識があるのだろうけど……こうやって生き残った連中って、果たして……? のちの世の悪い支配者階級の見本みたいなイメージ。
まあ、「選ばれた人間」の中にはちゃんとした、人類にとって有益な貢献をした人たちがいるだろうけども。
そうして人為的に生き残った人たちとは別に、奇跡的に生き残った人たちがいたりして。その二つのグループがのちの世界で出会って争うんだけど、根っこは同じ人類だった、と気づくパターン。いやまあ、そういう映画を見た覚えはないが、どこかにありそうなやつである。
こういう風に分かたれることがその後の世界をかたちづくっていくんだろうけども、今はおいといて。
奇跡的に生き残るパターンがどういうものかはいろいろ考えられるが、隕石の落下による大津波から、高い山の上に逃げ延びて生き残ったパターンの映画を観たことがある。
水が引けば街に戻れるし、文明の復興も比較的簡単だと思う。街こそ文明の基盤だし。だけど、その大津波が一時的なものじゃなくて、ずっと水の高さが下がらなかったら、どうなるんだろう。それこそ「ビッグオー」で海の底の都市が描かれていた。ビルの中にまだ空気が残っている、というシチュエーションが印象的でよく覚えている。水圧で窓ガラスとか割れないんだろうか。まあそれはともかく。
山の上で避難して生き残った人たちは、それからどうなるのか。助かったのは一時的で、結局その後はどうしようもなくなるのか。やがて知性が退行して、自然に帰ることになるのかも。必要な栄養がとれなくなって絶滅するのが先か、自然回帰するのが先か……。そうして一度猿からやり直して、新しい世界を築いていく……みたいな。
そうなると、「過去の文明の遺跡」は海中に生じることになる。それとも海が干上がって、いろんなものの堆積の中からちょっとだけ顔を出す感じになるだろうか。電子機器類は全滅してるだろうから、あまり面白い発見は期待できそうにないかも。額に入った写真とかなら比較的無事かもだが、発見自体は面白くても、それが世界に何か影響を与えるとも思えない。自分が想像つかないだけかもだが。
何かこう、あるだけで便利なテクノロジーを、比較的無事な状態で残すことが出来るちょうど良い滅亡ってあるだろうか。
文明の基盤である「街」を無事なまま、人類を消し去る方法。
今思いつくのは2点くらい。
1,地球環境が悪化しすぎて、宇宙に脱出するパターン。
2,感染症などで大半の人類は死滅するパターン。
1の場合は「箱舟」に通じる。宇宙に出るのは選ばれた少数の人類で、大半は地球に取り残される。地球人の生き残りがのちの異世界人となったりするかも。それこそ「猿の惑星」みたいな展開が予想できる。宇宙からやってきた人たちが、そこが自分たちの母星だったと知る、というパターン。
完全な宇宙への脱出じゃなく、一時的な退避だとしたら、宇宙ステーション的な場所から、地球に残された人類に何か指示出しとかして、地球の環境整備をさせる展開もあるかも。そういう「宇宙の人」たちが神や天使としてあがめられていく感じ。
1もそうだけど、2もとりわけ近況リアルに感じられるパターンである……。
感染症っていうと生々しくなりすぎるけど、たとえばゾンビパニックみたいなものだと考えるとフィクションらしさがあって良いかもしれない。主要国家、主要都市の人類だけが感染して、これ以上の感染を防ごうと都市を爆撃とかしたりすれば、ほどほどに街が失われる。
で、そのウイルスに関して抗体を持つ、というか感染圏の外の、どこかの田舎とか離島に住んでる人類だけが最終的に生き残る感じ。外の世界に出てみると、そこには都市の残骸と、ゾンビ。描き方を工夫すれば、遺跡とそこに巣食う魔物としてあらわすことが出来るかもしれない。
ああだこうだと滅亡の要因を考えるのも、最終的には「現代文明感を感じさせない異世界の風景」をつくりたいからである。
割と重要なネタバレになりそうなのでタイトルは伏せるが、とある漫画の舞台に、砂漠の中に立つ謎の古代の文明の遺跡が登場する。そこが出発地点であり、物語の終盤に再び訪れる場所。
その漫画ではいわゆる異世界転移を繰り返していくなかで、異世界Aは異世界Bの「過去の時代」だったことが明らかになっていったりする(これが伏線)。
そしてとある現代風の世界では酸性雨が降っていて、一部のビルだけが無事のため、その中で生き残った人たちが暮らしていたりする。
……で、実はこの現代風の世界のビルの「はるか未来の姿」が、最初に登場した「砂漠の中の遺跡」の正体だった、という展開。
二つの角が砂漠の中から伸びているような見た目の遺跡。その正体は、酸性雨の影響でかたちが変わった二つのビルでした、という感じである。
要するに、滅亡の要因を考えていけば、おのずと「異世界らしい風景」が出来上がっていく訳で。一足飛びに「異世界の風景」を考えられればいいが、そこから逆算して元の風景を思いつければいいのだが、そういう発想力がないため、地道に可能性を探っていこう、という訳である。
なのでまあいろいろと滅亡の理由だったり生存の方法だったりを、普段から考えている今日この頃。直近だと、火山の噴火がどういう影響をもたらすかっていう番組を録画までして観て要点をメモったりした。
環境悪化とか感染症とか身近にリアルな話題について調べるのも、その一環。すべては創作の糧である。破壊と創造を繰り返している。「習慣」らしい「近況ノート」になったところで、終わる。