• に登録
  • 異世界ファンタジー
  • エッセイ・ノンフィクション

かっけーん!

書けないうえは、練習を。
えっと、シチュエーションはなんでもいいや、誰にしよう。寸劇で。


・通常版

荒野に一軒、その店は町の入り口にある。

見渡した距離に町はないが、荒野を渡る者にとってその店は目印だった。

「パンサ、お待たせ」

開店前の酒場から出てきたバールは、崩れかけのレンガ塀に近づいた。
本来、馬をつなぐために作られた日除けの壁は、一本の木が作る木陰のなかで、役目を忘れられてしまった。

「町の場所はわかったよ、行こう」

壁の上に危なげなく腰かけた、黒い肢体のそばを行き過ぎる。

「バール」

からかうような声が降ってくるが、無視した。

「聞いたのはそれだけじゃないだろ?」

でも、ダメだった。

パンサはレンガ塀の上で体を長く伸ばし、この話題が済むまで動く気はないと、くつろいで見せる。

舌なめずりしてバールの後頭部を見ているに違いない。顔を向けなくても、わかる。

「な、」

なにも、他には、聞いてない。

「今度は何に間違えられたの?」

振り仰いで口を開いたら、ツヤとハリのある声にさえぎられた。

果実のような紅色の瞳が、バールを笑う。白く筋肉痛な体が短パンとベストからしなやかに伸び、服の下の胸や腹はぴったりと下着のような黒い生地でおおわれ、なだらかな形も隆起もよくわかる。

バールは見慣れた相棒の活動的な姿と、肩口でばっさり切った黒髪から飛び出す、とがった耳を見つめた。

いつ見ても、

「……魔法使いって」

いつ見ても、パンサはカッコいい。

「一度で魔法使いって言われたわけじゃないでしょう?」

でもって、意地が悪い。

「……き……」

「き?」

「木こりって言われた」



・努力版

荒野にぽつんとその店はあって、行き交う人の休憩所になっていた。

いちばん近い町への道しるべであり、実質的にその町の入り口ともいえる。

話を聞くついでに開店準備を手伝って、バールは酒場を出ると、木陰になっているレンガ塀に近づいた。

崩れかけた壁の上にいる、パンサ・マティアに弾んだ声をかける。

「パンサ、お待たせ」

砂漠色の髪にくすんだ空色の目をしたバーレイ・アレクシアは、先端を布で包んだ長ものを肩にかけ、返答のない相手に急いで言葉をついだ。

「町の場所は聞いたよ、行こう」

促すように行きかけた背中へ、からかうように甘い声がかかる。

「バール」

果実のように芳しい声が、 バールの行動には目もくれずに問う。

「聞いたのはそれだけじゃないだろう?」

たっぷり毒を含んだ声には、ツヤとハリがある。

「今度は何に間違えられたの?」

バールは、ギギギと音がするようなぎこちなさで、観念したように振り向いた。

いったい自分のどこが不審だったのかわからないが、あきらかに見透かされている。

「魔法使いって」

パンサのはっきりとした瞳が、全体に小作りな顔の中で、大きく紅色に輝いてバールを笑う。

「一度で魔法使いって言われたわけじゃないんでしょう?」

細く筋肉質な身体に、ぴたりとそって輪郭をあらわにする下着のような生地と、その上から短いベストとパンツだけの軽装は、身軽な彼女の職業そのものをあらわしている。

肩口でばっさり切った黒髪からのぞく、とがった耳を見つめながら、バールは相棒に答えた。

「……き……」

「き?」

パンサは、いつ見てもカッコよかった。

「木こりって言われた」

だけど、意地悪だ。



通常版はいつもの書き方にのっとっていますが、ネーム切ってない即席です。その分きちんとしてない。
でも、こちらの方が慣れてて、安定して書ける。

努力版は、読み返すと色んなところが、あれ、ここどうなってるんだろう?
書いてる時はわかってるのに、後から見るとわからない。
いやすごいブレるな、大変だ、不安定!

努力版は通常版を読んだうえなら、読みやすいですが、初見で読んでも意味が通じるだろうか。

4件のコメント

  • こんにちは~(*´▽`*)

    ……一緒に叫ばせてもらってもいいですか?(笑)
    いや、私の場合、文章がというより、ストーリーで詰まりながら書いている感じですが(苦笑)

    昨日、近況ノートを拝見して、睡眠を経て忘れているだろうと、次は努力版から読みましたけど、どちらも通じないとは思いませんでしたよ~(*´▽`*)

    あ、でも、もしパンサさんをもっと読者に印象づけたいのなら、私ならもうちょっと初出の部分に力を入れるかなぁとは思いましたが(自分ができているかは棚に上げて言う)

    どちらも文章も、私は好きです(*´▽`*)
    といっても、私の場合、かなり守備範囲が広いので、参考にならないかもしれませんけれども(´-ω-`)

    こちらは現在、文章よりも先に、ストーリーで悩んでいます(*ノωノ)
    書きにくーい! なんでだーっ⁉ と、叫んで気づく。

    ……あ、これ、今回。自分が書きやすいタイプから外れたストーリーだった、と(><)

    男性主人公が拗らせてたり、三角関係(?)ぽい感じだったり、lager様に綾束作品では見たことがないと言われている、お色気お姉さん(脇役ですけど)を出そうとしていたり……。

    そりゃあね、なかなか進まないよね! ふだんと違うことしているもんね!( ゚Д゚)ノシ
    と、セルフツッコミが入ったところで、まあでも、芸風を広げてようと試みてみるのも必要だろうと、ちみちみ取り組んでおります……。
    どんな結果になるのか、自分でもはらはらしていますけれど(>﹏<)
  • 作風ではなく、芸風!

    わかります、いろんなもの書きたいですよね!(いろんなもので遊びたい)

    遅筆なのでやりたい設定や人物は話の中に取り入れて消化してしまうことが多いような気がします。それを経て準備運動してから、一本立ちしたり。李川が他の話から回って来た頃からそんな現象が。

    わざわざ間を空けてお読み頂きありがとうございます〜!!
    お手間をとらせました!!

    なんの説明もなく、パンサを出してしまいました。

    エランダーズは過去に向かって思いついていった話ですが、カクヨムでは時系列通りバールが魔法使いを目指すところから、書いていました。

    マリテュスで苦労してますが、いつかきっと獰猛なエルフが相棒になってくれるはずです。(合掌)


    書いてる方ってたしかに、想像力が豊かでこちらのイメージを越えてくれるので、うろたえたりします!

    私はニッチな読者なせいか、努力版から読んで、この人(自分)何が書きたいのかわからない、という箇所がまばらにいっぱいあって声も出ません。
    とはいえ、通常版は淡々としてるし、努力版はやりたいことが出来ているけれど、意識は出来ていない。(意識して書けるようになりたい今すぐ)どっちもどっちだぁあああ。


    綾さんならパンサを印象的に前に出すんですね。主人公がバールというイメージが中心にあって、盲点でした!
    え〜どんな風になるんだろう。

    今までに初期イメージと、いざ書いてみると話し方が違うキャラが二名いて、パンサはその一人で、私の中で葛藤とブレがあります。
    一度心を決めたイメージから生まれた声がそれなら、くつがえせたりしないのですが、わずかでも寄せる可能性を探ってフォローしたい、初期イメージが好きだから。(なのでパンサを書くのはお預け状態)

    バールが当たり障りないので、パンサを目立たせていいような気がします、パンサ、ヒールなんだけど……。


    そして、新作を書いてらっしゃるとな!!

    拗らせ男子に三角関係、色っぽい女性ですか、すでに不穏な。けれど恋愛ものですね!? 今度はどんな世界観を描かれるのか、とても興味あります!!
    (積ん読がッッッ)

    しかし、かけーん!なのですか、いっしょに叫びますか。夜空に向かって。

    たぶん、書きたいものはあるのに、思うように進まん!なのは同じ気がします。

    キロールさんは底なし沼な感じがわかる、と仰ってましたね。
    「ばけとり」は主役の二人、それに羅と狼鬼以外、出演者は決まってなくて、話も複雑じゃなかったはずなんですが。
    前作「エランダーズ」の時、暗闇をかき分けていく体力がもともとなくて、どこに向かいたいか決めてから書いていたら、それすら説明でいっぱいいっぱいになってしまったから、

    もうやだそんなの、注力したいところに注力したいんじゃわー、ってどっかでキレたんでしょうね。
    「ばけとり」は設定的なナゾをなくして、場面を書くことに神経を注げるようになり、思い切りストーリーを風まかせ、場面まかせにしてます。

    前の話数の何かしらをバトンとして受けて、その指向性は回を追うごとに確実になっている気がします。
    李川と瞑旡の気持ちに流れが生まれたからかな、と思います。

    苦手な感情面をどう描くのか、が今の課題。
    今回の練習はネームがないため各場面の尺の取り方を考えてなく、テーマがないため何を見せたいのか絞れてないです。
    通常版はその上で場面を説明して状況をわかるようにしようとしてる、という感触です。

    努力版は感情面を中心に、同じことをしようとしましたが、どうもうまくありません。
    心理を説明したいわけじゃないし、説明はしない。
    今までずっと状況があって感情が生まれるのだと思って書いてきたけど、
    そういう順序じゃなくて、
    その前からもう始まってるんじゃないか。何かを感じてすでに気持ちは発生してるんじゃないか、
    状況よりも気持ちを追って、状況を書けない?

    やってみたら、事実的な流れがカッタカタ。でも二人の気持ちは見えやすくなった。しかし、所々一人称になってしまっている。(アウト、それをやらずになんとかせいと言ってるわけで)

    もうほとんど独り言になってますが、こまごま考えながら、最終的にどーんとした答えを探してます。
    通常が細かいから、感情にシフトするなら、わかりやすいスイッチをしたい。

    綾さんに、どちらもわかると仰って頂けたので、すこし光明が見えたかもしれません。
    まだ慣れてないから、何この書き方?だし、カンタンに崩れてしまうと思うので、特徴をとらえたいですね〜。
    ありがとうございました。


    新しいことに挑戦するのは、やりがいがありますねー。

    綾さんの新作が(しかもこんな所でちょっぴり内容に触れているけど!)洞窟を抜けて明るいところでのびのび描かれますように。
  • こんにちは~(*´▽`*)

    なんででしょうね、読んだ瞬間、ああっ、もうちょっとパンサさんを描写してほしい! って思ったんですよね~(≧▽≦)
    絶対、魅力的なキャラだから、この人! っていう嗅覚が働いたというか( *´艸`)

    自作の場合、主人公以外でも、重要人物はできるだけ「暖簾を分けてさっと出る!」みたいな印象的な書き方をできたらいいな~、と思いながら書いています。ちょっとでも読者様の印象に残ってくれたらいいな~、と(*ノωノ)

    新作、なんちゃって中華風の恋愛物(?)ですよ!
    ええ、たぶん、おそらく、きっと……そうなると、いいなぁ……(汗)
    まだ序盤なので、自分でも掴めていないところがいっぱいです(*ノωノ)


    和泉様もキロール様も、それぞれ自分なりの書き方を会得なさっていて、すごいですよね(*´▽`*)
    日竜様は、作品によってそれぞれスタンスを変えられている印象です(*´▽`*)
    作品ごとに深く追及されている真摯な姿勢がすごいです!ヾ(*´∀`*)ノ

    新作、迷いながらですけれど、それでもやっぱり楽しく書いています!(≧▽≦)
    「これ、面白いのかなぁ?病」にはちょくちょくかかっていますけれど、それでも!(*´▽`*)

    日竜様もご自身が満足いく答えを見つけられますようにと、祈っております~(*´▽`*)
  • こんにちは〜

    ありがとうございます〜。イジメッ子ですがパンサに注目して頂けて。
    バールというキャラが生まれた時に、なんか物足りないなーと、相方の女の子をかわいくて色気があってそそのかす超悪いやつにしてみたら、ぴったりだったので完成したのを覚えています。
    (小悪魔さんは私の引き出しにはいないタイプだけど、対バール用と思えば生まれる)

    色々時間が経って、かわいさがカッコよさに移行しちゃったところが、悩みどころですが。(かっこよさへの憧れが強すぎるせいだー)

    こんなことを思い出したおかげで、パンサの修正にはバールの修正が鍵になるなってことがわかりました。
    ありがとうございます!

    新作は中華風ですか〜、魅力的ですね〜!
    きっとそうなりますよ〜、きっと!

    おもしろいかな?病は罹患しない方がどうかしてるぜ、ですが、
    楽しく書くことは、楽しさや面白さへの第一歩だと思います!



    コメントを思い直して修正したため、もしかしたら、和泉様やキロール様の心理描写の技術について、考察した部分をお読み頂いていたかもしれないと思い、消してしまった部分をいちおう追記しておきます。

    (先方に断っておりませんが、削除要請には速やかに応じますので、よろしくお願いします)

    *追記
    キャクターの心理描写に悩む考察。

    和泉くんの書き方を思い出してみたりしたんですが、三人称で心理描写がリアルで、寄り添ってて、心理の主体を一人に絞っているイメージ。

    私なら一人称になってしまうし、主体を絞れない、複数持ちたい。

    キロールさんは重厚な言葉で、心理戦を展開してて、こちらもがっつり踏み込んでいらっしゃる。三人称というより語り手のなかで心技体が立体的に組み上がっているスタイルの確立。

    こんなギミック無理なんですが、描写として俯瞰した姿勢は書きやすいなぁと思います。でも、「ばけとり」の書き方では私はそれを禁止されてる気がして、俯瞰しちゃだめ、なんだろうな。



    >「暖簾を分けてさっと出る!」みたいな印象的な書き方

    さっと出るイメージがなかったので、新鮮でした。

    暖簾は好きなんですが、手でよけてこれから通るよという合図を送ってから出る印象があるせいですかねー。(料理屋に手伝いに行ったくせに、両手がふさがった状態で暖簾の前で立ち尽くし、ゆっくり突撃して頭で引きずった無作法者です)

    さっと出たらびっくりしますね、そりゃあ。
    登場の仕方がその人らしかったら、驚かなくてもいいやーって思ってました。

    自然な流れで!重視ですね〜、印象的にって色々ありますね〜、考えてみようかなぁ。(ぼんやり)

    いつもいつもありがとうございます!

コメントの投稿にはユーザー登録(無料)が必要です。もしくは、ログイン
投稿する