*前回からの引き続き
ミロの恋バナ披露しようかな発言からの〜スタート!!
「き、きっ、聞いていいんですか!?」
「R18指定とかにならないよーにひとつよろしく、ミロ姉さん」
「せっかく姉さんて呼んでもらったけど、あたし真珠の中では三番手で一番若くて、成り上がったばかりなのね。だから他の二人の前では霞んじゃうし、だいたい最初に客がつくまでに時間がかかって、とっても店に出るのが遅かったの」
「ルージュ・カッツェは、有力者たちが金にあかせて作った店で、独自のシステムとそこにしか生息していない特殊な血統の女たちで成り立ってる。どれも違法性の高い匂いがしているが、公的機関が調査に踏み切ったことはない」
「今、八神さんが言ったようなことは、あたしたちは知らされてなくて、生まれた時から、生きられる場所は人に管理されてる店の中だけってことを徹底的に教育されるの。とても視野のせまい決まりごとの世界で、はやく客に見初められてキラキラしたお店に出たいって思ってた」
「苦しかったり、怖かったりはしないんですか?」
「あたし勉強苦手だし、不真面目だったから、怒られてばっかりで、お店に出て売れれば厳しいこと言われないじゃない? それに、小さい頃に見た真珠の人が、すごくカッコよくて、女惚れしてしまったのね。あんな風になりたいって思ったの」
「システムがよくわからないんだが、最初についたパトロン(出資者)のものになるんじゃないのか?」
「そう。店を作った有力者たちは、私たちを持つことがステイタスになるように仕向けたから、色んな嗜好の旦那衆がいるけど、自分は抱かずに顧客の相手をさせるためだったり、自分の選んだキャッシュが真珠になるのを競ったり、そういう権威の張り合いとか遊びの肩代わりをさせられるわ」
「ミロさんは、その、パトロンさんがついたんですか?」
「ギリッギリでね。そこそこ旧い家柄のまだ若い当主で、経営手腕があったから彼の代で財を成したみたいだったけど、なんか女遊びするようなタイプじゃなくて、辛いことがあったのかしらね、散財したくなったみたいでね」
「それって、どんな気分なんですか? ずっと待ってたから嬉しいんですか、でも、相手のこと知らないんですよね」
「支配人がいろんな子を見せてる時に、まぁ高い子から見せるわよね、後の方だったあたしのこと『きれいな子だね』って言ってくれて、それだけで十分だったわね。今思うと施設ではわざと褒めないようにしてたのね、お前はダメだ、ここもあそこもダメだって言われ続けてたから、あたしたちを見たお客さんが褒める言葉に舞い上がってたわ」
「なんか手放しで喜べないんですけど」
「そうよね? あーこの人のために何でもしようって思ったの。でも、捨てられちゃイヤだから、彼には奥さんもいたし、ご家庭の事情とか、経営のこととかいっぱい勉強したわ。あんなに怠け者だったのに自分でもびっくりだけど」
「ミロさんは、そのご当主が好きだけど、ずっと片思いってこと? 熱心に尽くされたらあたしだったら、奥さんよりミロさんの方に傾いちゃいそうだけど」
「好きだけど、知ってくうちに本当は奥さんのこと愛してるって気づいちゃったのよね、奥さんとの間にできた溝をいつも気にしてるって。気づいちゃうとあたしきれいにストッパーかかっちゃうから、そこからは同情っていうか、何とか修復できないのかぁって考えちゃって」
「ミロさん、いい人ですね」
「ミロちゃんは娼婦としては損してる性格だと思うわー」
「え、これ恋バナじゃないじゃん」
「好きな人はいるもん」
「どこに?」
「た、退治局に?」
「はあ? そんな金持ちな局員なんているの!?」
「いるとは、思いますけど……」
「名前聞いていいか?」
「い、いくらトークでも、言わない」
「そいつ、お前を買ったのか?」
「八神さん、八神さん、尋問モードになってますー」
「どこで知り合ったのか、吐け」
「ひぃっ、買われてないし、あたしルージュ・カッツェから出たことないし! あたしの楽屋の窓の外に、隠れて逃げてるような人がいたのっ、だから匿っただけなのっ」
「ぅわー、けっこうベタなシチュエーションだねぇ」
「ミロさん、やっぱりいい人ですね」
「危ないと思うわーそういう拾い物ってキケンよ、ミロちゃん」
「だって、なんか面白そうだなって思っちゃったんだもん」
「助けたくらいで好きになるか? イケメンだったのか?」
「八神さんまで食いついた! でも美形とかは見慣れてるんじゃないすか? 好みど真ん中だったとか?」
「ちがぁうっ、あたしの好みはもっと男臭くて、野性味と色気のある大人のっっ、」
「パトロンさんはインテリなイメージですから、好みじゃないんですねぇ」
「じゃあ、その拾ったノラ犬はどんな感じだったの? ミロちゃん」
「顔が小さくて黒水晶みたいな大きな瞳で、あたしとタメはるくらい可愛い顔してるのに、口を開くと超ナマイキでニコッともしない可愛くないガキよっ」
「自分でかわいいって言った……顔? やっぱり決めては顔?」
「ミロさんくらい可愛い男子って、相当ですよね?」
「ギャップ萌え?」
「あぁ、伯母さん、なるほどねー」
「その場合、助けて終わりだろ?」
「いや、それが、その、それからもちょくちょく会ってるっていうか」
「さすが、ミロさん、相手の心をわしづかみですよ!」
「なんでそうなるんだ?」
「ぁ、あー、あたしが結局その子に興味持って、そのー、押したから?」
「押し倒したんじゃないのー?」
「……っ、遠慮したら相手に失礼でしょ、するわよそれくらい、そうでもしないと分かんない、分からず屋なんだから! ものすごく愛想悪いんだから!」
「あぁ。ミロさんて、ほっとけない性格なんですね」
「それを受け入れてるってことは、相手もまんざらじゃないってことだよね」
「大丈夫か、そいつ、お前だまされてるんじゃないか?」
「そんな器用な性格には見えないわ。だから、好きなんだけど」
「まさかの年下でしたねー、あー、ドキドキした」
「ぴあのちゃんご満悦だね」
「でもミロちゃん、その恋は前途多難になるわね」
「わかってる、引き際はちゃんと見極めるつもり」
「力になりたいのに、ここだけの話っていうのがもどかしいです」
「ありがとう、ぴあのちゃん。誰がいつ来なくなっちゃうかわからない世界だし、外に出られないあたしは、追いかけたりすがったりは出来なくて、諦めるしかないから、今とかこの瞬間に、後悔がないように生きてるわ。だから、このおしゃべりもとっても楽しい」
「はい。私もいろんな人とお話ができて楽しいです」
「んー、ぴあのちゃん可愛いっ、ぎゅうってしちゃう」
「ふわっ?! やわらかっ……ふわふわっ、ルッティさん、ふわっふわっで気持ちイイですっ」
「うん。うん、わかった、あんましリアルに実況しなくて大丈夫だから」
「世の殿方の悲願を一人占めねぇ、うらやましい。あたしだってキャッシュがどんな触り心地なのか興味あるのに」
「そういえば伯母さん猫耳揉んでたね」
「どうせ気になるのは刃物で裂く感触だろ」
「ぅふふ」
「っ八神さん、頼むから話題変えて、今すぐ」
「お前も冷月と同じ趣味か?」
「一緒じゃない。血縁だってここで知ったばかりだよ、これでも一応医者の娘なんで」
「そうか。私は両親のことはほとんど覚えてないが、父にも母にも似ているらしい」
「? そうなんだ」
「あらぁ、八神さんの恋バナ?」
「まぁな。気づいた時には、行くあてのない連中がたまってるような街にいて、大人は元気がなかったから、若い奴らが街を仕切ろうとナワバリをはってた頃、私もその中にいて、最後には街のまとめ役になった男の傍にいたんだ」
「なになに、あたしもぴあのちゃんもその話聞きた〜い」
「付き合ってたってこと?」
「そういうはっきりした境界線はないよ、役所や戸籍なんかもないしな。その当時、大陸は地殻変動が活発だったから、生まれた土地にいられなくなった者が、所々でがれきの山に街を作ってた」
「八神さんは大陸生まれなのねぇ」
「お前だって似たようなものだろ、国を持たない流浪の民だって聞いてるぞ、冷月」
「え、そうなの伯母さん」
「もう捨てたけど。ルインから聞いてないなら、あなたは気にしなくていいのよ、ルッティ。そんなことまで分かるのねぇ、退治局はおっかないわねーやっぱり」
「で。どこまで話したかな、腹心っていうか、相方というか、そういう関係だと思ってたんだが、なりは少年でも取り巻きの女たちからすると、心配らしい、実際、何もなかったわけじゃないしな。だから、別の仲間のとこで暮らしてた。今で言うルームシェアかな」
「八神さんて淡白ねえ、一緒に暮らしてた人って男?」
「そう。機械いじりの得意な奴で、おとなしいオタクだったけど、私は本当はそいつのことが好きだったんだろうな」
「本当はって、告白してないの!? 一緒に住んでて、何もなかったって言うの!?」
「ミロちゃん、鼻息あらーい」
「昔話でもほっとけないんですねぇ、ミロさん」
「昔の八神さんにツッコんでも、意味なさそうだけどね」
「いやー、怖がられてるかと思って、何も言わなかった」
「何ソレ! ぜったい勘違いだから!」
「そうかもな。……でも、みんな死んでしまったよ」
「な、んで?」
「大陸だからだ、地殻変動の他にも脅威があった。遺物として残ってる兵器が無人で戦闘を続けていて、衛星からの攻撃が街に落ちたんだ。仲間だけじゃなく、街も人もたくさんいなくなった。生き残っても地獄だった。他の街に移ろうと気力をふり絞って砂地を渡った住人は魔物の餌になった」
「貴女は強かったから、無事だったの?」
「まだガキで、今みたいな力はなかったよ。でも、養父に体術と魔物を避ける術を叩き込まれてた。本当はキャラバンについてくべきだったんだ、でも、がれきの山から立ち上がれなかった」
「それから?」
「いや、話が逸れたな、私に関わる男の恋バナをしよう。いいか?」
「はい。私は聞きます」
「今はない国だ、大陸に魔物を人材として登用する国があった。ある貴族の姫の養育係になった魔物は、大切に育てた幼い姫が理想通りに成長していくんで、師弟以上の気持ちを抱いたわけだ」
「八神さん、説明がぞんざいよ、せっかくいい話なのに!」
「いい話じゃないし、報告以外の話は苦手なんだよ」
「じゃあ、合いの手入れようかな。でもきっと、魔物とお姫さんは結婚できないよね?」
「助かる。魔物は気持ちを拒まれることを恐れて、妄執をひた隠しにした。近くにいられなくなるのは避けたかったからな。そのうち彼女は王に見初められて、男児二人と末の妹を産んだ」
「今度は子供の養育係になったとか?」
「冷月の姪っ子は鋭いな。女への執念さえなかったら、従順な臣下だったからな。だが、魔物は自分の思いでその頃にはもう、狂ってたんだな。娘を預けられた時、自分たちは両思いなんだと思い込んだ。王は憎いが敵に回しても勝ち目はないし、一人で立ち向かうほどの意気もなかった。どうすれば駆け落ちできるか、歪んだ思考で娘をさらうことを思いついた。子どもを連れて遠くに逃げれば、女に追いかける口実を与えられる。探しに来た女と三人で逃亡できると考えた」
「その計画、どこまで成功したの?」
「魔物しか踏破できないような危険地帯を抜けて、二人ががれきの集落に落ち延びるまで、だな」
「その後は、誰も見つけられなかった?」
「誰も来なかった。地殻変動で国ごと消えたんだ、それを知った魔物の悲しみは、私にはよくわからない。奴はそれから幼い子供の記憶を封印して、自分が好きだった女の名前をつけて、育てた。大陸で生き延びられるように仕込んだ。まるで、憎まれてるみたいだった」
「八神さんは、いつそのことを思い出したんですか?」
「養父の魔物が亡くなった時だ。解除されるようになってたらしい。厳しく育てられながら、私に対する暗い執着も感じてたから、そんな気持ちを抱えながら本心を見せない養父に対して、ずっと怒りがあった。しょせん娘では母の代わりになれないうえに、憎い男にも似ているから奴は苦しかったはずだ。私ができることはくだらない男の妄想に最後まで付き合うことだと思った。がれきの町の王の傍にいようと、誰を好きだろうと、私の決定権は奴に与えていたつもりだった」
「でも、何も言ってもらえなかったんですね?」
「成長するほど、何をするにしても反対されなくなったな、がれきの山の抗争が落ち着いた頃、勝手に亡くなっていったよ」
「……くやしいですね」
「いい話じゃないのかもしれないけど、ひどい話じゃないと思うわ。大陸の過酷な状況ともたらす悲劇は無念だけど」
「八神さんは誰の影を追ってるの? それ以来恋してないとか〜?」
「伯母さんよくへらへらしてられるね」
「だって、もう終わっちゃったことよ、体験した人しかその代償の払い方は決められないわ」
「のたれ死にしそうなところを、退治局にスカウトされて、都市に行くことになるんだが、入局する条件として、強さがほしいって訴えた」
「虚しさを埋めるために、そういう道を選んだのね」
「もう一度守るものを与えられたのに、守れなかったら、自分を二度と許せないからな。紹介されて〈竜の里〉に入り、そこで今の属種〈宿身〉になるため、森奥の主のもとで修行してた」
「ん? 恋バナ続いてるのかな、これは」
「ねぇ、竜の里ってナニ? やどしみってナニ?」
「えぇ? 箱入り娘なんだからもぅ、属種にはさ、生まれついたものが多いけど、後から身につけたものも、不可分なら登録されるの」
「不可分……もとには戻らないってことね?」
「ねぇ、八神さん、あたしはもともとの属種があって、改造でさらに追加されてるんだけど?」
「そんなデタラメな奴は普通いない。でも、アーキタイプが残ってるなら、複数の発現ってことで、後天的な部分は括弧書きになる」
「ふぅん」
「竜の里は、都市のはずれにある自治区のことです。都市ができる以前に開祖が混沌を、局地的に正常化して拓いたと聞いてます。ですよね、八神さん」
「自信持って発言しなさい、ぴあの。その始祖が竜だったからそう呼ばれてる、妖怪や精霊のために作られた土地だが、人も入植してるな。元来、身体一つに魂は一つだが、他の魂と身体を共有するのが、宿身だ。取り込んだ存在が大きければ、生体にフィードバックされる」
「え、他の魂が入ってるって、どうやってわかるの?」
「見た目じゃわからんし、計測する技術も今はまだないか……、中にいる奴と意識を交替してもいいが、それだと解離性同一症と区別がつかないしなあ」
「つまりリアルに多重人格なんだ」
「そんな風になるんですか、八神さん。の、乗っ取られたりしませんか?」
「乗っ取られた場合は、失敗だ。宿身として成立しないどころか、不適合な魂に体がなじむ前に、器の方がダメになる。だから、修行場を紹介されて、森奥の翁の指導の下で限界を見計らってもらっていたんだ」
「八神さんと冷月さんだとどっちが強いの? って素朴な疑問なんだけど、誰に聞けばいいのかしら」
「当人たちじゃない?」
「破壊力なら、八神さんね」
「勝負は時の運だ、お前に油断はしない」
「ちちぃ」
「それで、すごい歳上のそのお師匠さんを好きになったとか?」
「取り込んだ魂が、いい女かいい男だったって可能性は?」
「それ面白ーい、ありそー」
「ミロさんも、ルッティさんも、想像力が言いたい放題になってます……」
「いい湯治場があるんだよ、竜の里に。毎日ぼろぼろになって、そこで気絶してた時に会った奴だ。うちの師匠は開祖の孫だが、そいつも子孫の一人で、いくつか里の管理をしている家があるんだが、その中でも古い家の跡取りだった。歳が同じで話が合ったというより、がさつで野獣みたいに力に飢えてた私とは真逆で、角のない逆らうことをしない男で、話しやすかった」
「それで、それで、どっちから好きになったの?」
「修行を終えて都市に戻る時になって、あれ、戻りたくねぇなって思って、はっきり自覚したんだな」
「「遅っ」」
「それで今度はちゃんと告白したの!?」
「した。手のかかる男友達だと思ってた相手が、親友以上に慕って来るなんてちょっとショックだろ、それに、そいつに隠し事はできないからな」
「どこまでも、オトコマエね。なんなの、仁義抜きで動けないの? もどかしぃ」
「まぁまぁ」
「で、男友達だと思われてたんスか?」
「いやそれが、向こうはちゃんと私を女だと思ってたみたいで、『気づくのが遅い』って言われて、そんなようす微塵もなかったのに、実は好かれてたらしい」
「八神さんが鈍いだけでしょーがー!!!」
「ミロちゃん、どうどう、きっと仕方ないのよ、八神さん力が全てだったのよ」
「だって、両思いになっても、恋より仕事を選ぶんでしょうっ?」
「それとこれとは別だからなぁ。私は私で戦う場所があるし、あいつはあいつで竜の里を守る役目がある。信じられる同志がいるってのは心強かったけどな」
「なんで、過去形なんですか八神さん」
「昔、竜の里で事件があってね、当主を継いだばかりのあいつは役目を果たして、亡くなった。私はまだいい、あれには父親がいなかったから、母親とまだ小さな兄妹を残していくのはつらかったと思う。残された家の人の悲嘆は見てられなかった。それからは、交流を持つようにしてる」
「八神さんだって苦しかったはずです……」
「私が悔しいのは、まだ叶えたいことがあって、できることがあった奴らが、時間を止められてしまうことだ。ミロが言ったように、今を後悔なく生きることも大事だ、だが、すでに抗えないほど大きな後悔がある時は、その衝動に突き動かされる。苦しくても悔やんでるから、膝を折らずに生きてこられたんだ」
「ぅう。いつか八神さんの現在進行形の恋バナが聞きたいっス」
「いや別に、その後誰とも付き合ってないとか、言ってないぞ」
「えっ、あ……」
「ま、どれも上手くいかなかったから、もういいだろ」
「ルッティさん、どなたか八神さんに紹介してもらえませんか?」
「えっ、さすがに、ちょっと思いつかないなー、ごめんね?」
「できれば、八神さんを敵に回したくないわねぇ」
「とっくに敵だよ、お前は」
「なぜかしらー困ったわねぇ」
「人殺しだからでしょ」
「そういえば、ぴあのちゃんは話さなくていいの?」
「何をですか?」
「私はあまり聞きたくないな……黙って聞いていられる自信がない」
「恋バナよ」
「…………したいんですが」
「ぴあのちゃん?」
「ないです」
「うわぁ、涙ぐまないでっ。大丈夫だからっ」
「おい、ミロ」
「えぇっと、じゃあ、どんな恋がしたいと思った?」
「……みなさんの話はどれも、ルッティさんらしくて、冷月さんらしくて、ミロさんらしくて、八神さんらしくて、うれしかったです。素直に恋をしたいと思いました」
「それが一番いいと思うわ」
「何かあったら相談に乗るよ」
「ありがとうございます!」
「いい男じゃなかったら、反対するけどな」
「大人げなーい」
「ぃやかましい」
*
奥付。
「ルッティさん、お付き合い頂いて、ありがとうございました!」
「いや、こっちこそ。しっかし長かったねー」
「そうですね」
「結婚してる人がいないのが、意外だった」
「あ、そうですね。治安の悪い世界のバトルものですから、主婦はなかなか登場しませんね。誰それのお母さんという方が多いです。……一人だけ現役局員で主婦の方がいらっしゃいますけど、公開してる話の関係上、ご出演はいただけませんでした」
「ほーん」
「あの、本編以外は『HBN』の主人公は女性なんですよ?」
「なんのこっちゃ」
「ルッティさんと、ランちゃんと、冷月さんがそうです」
「……それって絶対レズだってこと書かれるよね、嫌なんだけどちょっと。あんなに特に面白くないって言ったのに、サイアクだよ」
「13支部だけだと、高水準都市や裏組織の産業系の話が出て来ません」
「あぁそう」
「ランちゃんは、大陸の地殻変動がやまない件に関わってるので、大陸の案内人として」
「あのへっぽこ魔術士がそんな大ごとに?」
「そうです。冷月さんは今ほど退治局が盤石ではなかった頃の、暗殺が横行していた暗黒時代のお話に登場します」
「まんま伯母さんの仕業じゃん」
「八神さんとミロさんはどういうチョイスだったんですかね?」
「あんー、恋バナ基準じゃない?」
「なるほどっ」
「あたしはディビットが出てこなくて良かったと思ってるよ」
「はっ……そう言えばっ、呼ぶの忘れてました!」
「忘れてるのはそこじゃないっしょ、あれは正真正銘のオカマだかんね?」
「でも心は立派な、」
「ダメダメ、えげつない恋バナとか聞きたくない」
「ぶぅ」
「何それ、かわいいな。じゃあ、ま、お疲れってことで」
「はい! お疲れさまでした! 現在、おおよそ14900文字ですね〜。すごい。お付き合い頂いた皆さまも、ありがとうございました! これにて閉幕です。また、お会いできることを楽しみにしてますっ!」
Fin