いつも二人は、冒険とも金とも違う目的で旅を共にする、成り行きの冒険者だった。
旅の終わりに、パンサはバールの実家に立ち寄った。
相棒としていくつも不慮の死線をかいくぐって来た二人だったが、これまで互いの素姓をまともに聞き合ったことはなかった。
話すような間柄でもなかった──かもしれない。
普段から冒険者らしくないバールの実家での印象はまた違っていて、さらにただの町人然としてこちらが本来の姿だと得心が行く自然体ぶりであった。
自然と大家族の好奇心はパンサに注がれたが、苦手な空気の中、キレずに耐えている相棒の意外な姿もバールには新発見だった。
そうしたことがきっかけだったのか、「目的」のない二人は話すことがなくなり、酔いも手伝って、かねてから疑問であったバールはなぜ冒険者なんて似合わないことをしているんだという、大して知りたくもないことに話は及んだ。
おしゃべり好きのバールが、嬉しそうに「話していいの?」「聞いてくれるの?」と輝いた目をする。
しまった──とパンサが思った時にはもう遅かった。
どうやら冒険者になった経緯は語れば三日三晩かかるという。
つまらなかったらソッコーで居眠り決定という条件のもと、もちろん一晩しか泊まる予定のないパンサは、高級葡萄酒をなめる間だけバールが口を開いていいことを許可した。
かくして、超ダイジェスト(バール的に)で送る『こんなおれでも冒険者になれました』生誕秘話が始まる。
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