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忘れられた森田主任

以前某所で、今回初めて挑戦するオネエが正しく(?)書けているのかドキドキだというようなことを言ったはずなのに、夜、歯を磨こうとしたら唐突に森田主任のことを思い出した。

「なぁ頼むよキイちゃん、うちの社員になってよ」
外回りから帰ってくると主任がせっつく。
窓の外では橙の空が闇夜に侵食されてビルの谷間に沈もうとしていた。
「スンマセン。おつかれさま」
キイは主任をやんわりふり切って事務所を後にした。

「もう、なんでうちの社員になってくんないのかしら。給料は上がるし、保険にも入れるのにねぇ」
お姉言葉の森田主任は残念そう。
「あいつ下手すっとオレらん中で一番腕いいですからね。あとは経験かなって感じだけど」
古株の作業員がそう言った。
「件数ダントツにこなしてるから、経験値もあっという間に積んじゃうんじゃない?」
紅一点の女性作業員が冷やかす。
「誰か理由知らない? 今度それとなくきいてみてよ。頼むよ丹波ちゃん。 じゃ、おつかれさま」
森田は古株の作業員の肩を叩くとデスクに戻った。



現代ドラマでした。
一見ノーマルなおじさんがオネエさんです。
レオン・マクシミリアンより以前に書いている……。
チョコボールみたいに色黒の森田主任は、薔薇族系のゲイなんだろうか。
何を言ってるんだわたしは。
それとも砕けた話し方をする時にオネエぽくなるだけなのか。野放図な部下たちに手をやきながら、決まりごとに厳しく、客の気持ちより業務の遂行を優先させたい。そんな扱いにくい人間で、世間体を慮って家庭も持ってそうな先走り感。
主人公のキイ(鼻ピアス)には一歩引かれているうえ、やんわり嫌われているし、丹波と黄純(女性作業員)からも一種独特な生き物と思われているけど、森田主任は仕事のできる機械みたいに淡々としたキイがのどから手が出るほどほしい。
物語の中心はぜんぜんそこじゃないけど、背景として職場の人間模様はそんなすれ違いの攻防。

職業は個人商店やご家庭相手の電化製品修理。inアキハバラ。


それにしても、外見と性格と年齢(森田くんはレオンより幾分か歳上)が違うとオネエ言葉の印象もずいぶんと変わる。


と思いました。




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