初詣を済ませたあとで、俺は彼女の手を引いてエスコートする。やはり、まだ歩くことに慣れていないようだ。混雑しているからしっかりエスコートしないといけないと思って、手に力が入ってしまう。
昨日は何もなかったことを母さんに叱られてしまった。それでいいのかと思いつつ、自分のヘタレ具合にも反省させられる。
「あっ、おみくじ! やっていきませんか!」
そう言われて「いいね」と短くつぶやいて、俺たちはおみくじ売り場に並んだ。
おみくじなんて久しぶりだ。
※
結果は、どちらも大吉だった。気になる恋愛運は……心の声に従え。朝の母さんの言葉みたいで思わずうなってしまった。
愛さんは「大吉」だと教えてくれたのに、中身の詳細は教えてくれなかった。気になるんだけどな。
彼女の手は本当に繊細だった。
初詣客をかき分けながら、物憂げな声色で俺の耳元でつぶやく。
「今でも十分、幸せなのに……これ以上幸せになっちゃいますね」
少しだけ遅れて、それがさきほどの「大吉」の件だと気づく。
思わず彼女の繊細な手を壊さないように優しく握りこんだ。
「今まで大変だった分、幸せにならないとおかしいじゃないか」
そう言うと、彼女は優しく微笑んだ。
「それについては、結構自信があるんですけどね、私」
「どうして?」
人が少なくなったところだったから、彼女は立ち止まって俺の目をまっすぐ見て言う。
「だって、センパイが私のことを幸せにしてくれるのでしょう?」
その言葉の破壊力に思わずもう一度、うなってしまう。
俺は言葉にならない悲鳴をあげて、ゆっくりと歩く。直視できないほどドキドキする。
「ねぇ、センパイ?」
これは追撃だ。そうわかっているのに、甘い声に思わず反応して振り返ると彼女は楽しそうに笑っていた。
「ありがとうございます。私の手をずっと離さないでくれて……あの屋上からずっと。こういう風に繋いでいると、初めて会った日……一緒に学校を抜け出したときのことを思い出しますね」
そういえば、あの日もこういう感じだったな。かなり慌てていたけど、初めて俺たちは手を握り合ったのは、あの日の学校からの逃走の時だった。
「うん。絶対に離さないよ。今までも、そして……これからも」
彼女は「うん」と答えてくれた。