「ちょっと俺、母さんと話してくるから」
一条さんにはそう言って、慌ててその場から離れようとすると、ワイシャツをやさしくつかまれた。
「どうしたの?」
珍しいなと思って振り返ると、一条さんは不安そうな視線を送ってくる。
そうかと思って自分のミスに気付いた。
まだ、感想を言っていないんだ。トリートを選んだけど……
「どうですか、私の仮装。初めてしてみたんですけど」
その反応だけで理性がどこかに行ってしまいそうだ。
「正直、似合いすぎている」
なんとか短い感想を言うと……彼女は微笑んで追撃が始まった。
「か……かわいいですか?」
下を向きながら顔を赤らめている彼女は少し震えている。俺も真っ赤になるのを自覚させられる。
「う……うん、かわいいよ」
まるで初心な恋人同士みたいな反応で余計に顔が熱くなる。
「ほんとうに?」
彼女はこちらを少しだけ困らせるようにつぶやいた。
「うん。黒い衣装が白い肌を強調していてすごくきれいだし、ケモ耳でいつもの凛とした感じから砕けた感じになっていてギャップがあるし」
そうつらつらとよいところを挙げていくと、彼女はさらに真っ赤になった。
「わ、わかりました。もう大丈夫です。これ以上はうれしくてダメになりそう。早くお母さんの所に行ってください」