久しぶりにCharles Dickensの"A Tale of Two Cities"を読み始め、今佳境に入っています。 Dr.Manetteが獄中で書いたメモで娘婿を自らの手で追い込んでしまったことを悔い獄中で行っていた靴職人の仕事を再開しようと喘ぐ姿、Cartonが悩みつつも自らを犠牲にする行為に突き進む姿、Lorry老人の誠実さ。そしてMadame Defargeの"Tell Wind and Fire where to stop but don't tell me"という呪いの言葉。Wind and Fireとは燎原の火が嵐を得て燃え盛る民衆の怒りのようなものを示しているのでしょうか。
フランス貴族の横暴を非難しつつも、行き過ぎた革命に翻弄される人々へのしっかりとした眼差しをDickensは持っています。
以前「二都物語」というタイトルで翻訳で読んだのは新潮文庫の確か中野好夫さんの訳だったと思います。その時読んだ記憶はもう朧気で、まだ文庫本がパラフィン紙に包まれていた、そのパラフィン紙が茶色に煤けてしまったような漠とした記憶でしかないのですが、次第にその時の感動が蘇りつつあります。古典というものはたいしたものですね。
それと並行して読んでいた岩波文庫の「中世歌論集」の中にある近代秀歌で定家が、「世くだり、人のこころおとりて、たけもをよばず、ことばもいやしくなりゆく」と嘆いていたことを思い出しました。文章を書くことの難しさ、というのを古典は教えてくれますね。