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twitterがバズった話&レビュ返

 twitterのつぶやきがバズりました。

 一昨日からおよそ二日かけて9000リツイート&10000いいねを越え、現在進行形で増加中です。僕は去年の10月末にtwitterを始めてからこれまで400程度しかツイートしていないため、自分が9ヵ月かけて呟いたツイートの20倍以上が他人の手によって二日間でネットに拡散されたことになります。固定ツイートとして置いてある「彼女が好きなものはホモであって僕ではない」のPVも1000以上増えました。僕はtwitterを宣伝ツールとして捉えておらず、適当に思ったことをつぶやきながらカクヨム内のレビューや近況ノートで絡みのある人がフォローして来た時にフォロバする程度の使い方しかしていなかったのですが、ちょっと本腰入れて活用方法を考えた方がいいのかもしれません。まさかこんなに効果があるとは……

 さてそのバズった呟きですが、以下のようになります。

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 「イケメンで頭が良くて立ち回りもスマートな彼氏の頼んだ海老天丼の衣がありえないぐらい汁を吸って膨らんでいたから愛が萎えた」という体験談を読んでリアルな女性心理を書くことを諦めた
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 大本になった「体験談」はこちら(http://oniyomech.livedoor.biz/archives/41737207.html)。このサイトじゃなかったかもしれませんが、読んだのはこの話で間違いありません。いわゆる「理不尽冷め」というカテゴリに属する体験談エピソード。僕は人間心理という謎めいたものを謎めいたままを見せつけてくれるこの手の話が好きでして、その中でも最大級にわけわからないものを読んだ衝撃をツイートしたら同じように衝撃を受けた人々の手でバズった、という流れになります。

 ぶっちゃけ、この話が「リアルな女性心理」を表現しているかというとたぶん違うでしょう。twitterには「分かるー」みたいな感想を残している方も結構いましたが、大半の反応は女性であっても「なんだそりゃ」でした。理不尽冷め体験談のほとんどが女性視点であることを考えると「女心と秋の空」という言葉にはある程度の信憑性があるのでしょうが、海老天萎えレベルの逸材は特殊事例と考えて間違いなさそうです。僕がこの話を読んで最初に思ったこともあくまで「これは書けねえ」であり、その「書けない理由」を「性差」に転嫁した結果がバズったツイートへと繋がった節があります。

 せっかくなので本当に「書けない」のか、今一度、冷静になって考えてみましょう。

 実のところ「完璧だと思っていた人のほんのわずかな情けないところを見て失望した」話はそれほど珍しくありません。例えば京極夏彦は『魍魎の匣』で、神聖視している同級生の少女のにきびが許せずにその子を線路に突き落とす少女を書いています。

 ですが『魍魎の匣』で少女を失望させたものは「にきび」であり、神聖視していたクラスメイトに属するものです。海老天萎えは違います。海老天を彼氏がふやけさせたならともかく出て来た時からふやけているのでそこに彼氏が介入する余地は(ほぼ)ありません。よって膨らんだ海老天で愛が冷めた女性は京極夏彦が「イカれた思想の持ち主」として書いたはずの少女よりワンランク上のぶっ飛び方をしており、この海老天エピソードをゼロから執筆するためには狂人描写に定評のある京極夏彦が足を踏み入れなかったゾーンに発想力一つで飛び込んで行く必要があります。

 無理。

 まあ、仮に一万歩ゆずって思いついたとしましょう。しかし思いついただけでは足りません。『魍魎の匣』のように全身のネジが外れた人間がバラバラになった己のパーツをぶつけあうような狂気の伝奇ミステリーならともかく、海老天萎えは現代の恋愛劇。読者の理解と共感が重要になるジャンルです。さらに、この桃鉄で言うと『新幹線カード』や『のぞみカード』ではなく『ぶっとびカード』に相当する心の動きを他者視点から書くのは至難の業なので、物語は一人称、最低でも三人称彼女視点ということになるでしょう。つまり海老天萎えを書く作者は彼女の視点から彼女の心理を克明に綴り、彼氏の頼んだ海老天丼の衣を見て恋心を失う心の機微を読者に「納得」させる必要があるのです。

 不可能。

 というわけで「事実は小説よりも奇なり」という言葉を160km/hで顔面に叩きつけてくるエピソードを前に、僕はただ自らの矮小さを噛み締めて打ち震えるしかないのでした。そりゃバズるわ。ただ、どうも漫画『あたしンち』の中に「好きな男性の背中にハエが止まって女性の恋心が萎える」話があるらしく、この理不尽さが妙に海老天萎えっぽいので「もしかしてやっぱり女性(『あたしンち』の作者は女性)にとってはあるあるなのか?」という疑念も抱き始めています。誰か教えて。

 なお彼女視点じゃなくて彼氏視点だとどうなるんだろうと考えもしたのですが、好き好きオーラ全開だった彼女がデート中に昼食を取ってから急によそよそしくなって戸惑うイケメンの心理を想像して悲しみがノンストップでした。こういうパーフェクトなイケメンってだいたい性格もいいから「俺、何かしちゃったかな……」とか考えて落ち込んだと思うんですよね。原因が汁吸いまくった海老天だとも知らずに。泣ける。


-----(「彼女が好きなものはホモであって僕ではない」のレビュ返)-----

 犬飼鯛音 様

 「この世界に現実として確実に存在している痛み」という言葉が心に沁みました。前に別の方にも言ったのですが、この世に存在しない架空の痛みではないんですよね。それが伝わるように書けていたことを誇りに思います。


-----(「小笠原先輩は余命半年」のレビュ返)-----

 藤璃 様

 まず、3/31からずーーーーーーっと★99だったこの作品を★100越えさせてくれたことを感謝させて下さい。ありがとうございます(7/29に★が入ったけれど評価済の誰かが退会していたらしくプラマイゼロで動かなかった)。ノリのいい話の中に潜ませたどうしようもない本音が、狙い通り刺さったようで良かったです。


-----(「僕とぼくと星空の秘密基地」のレビュ返」)-----

 犬飼鯛音 様

 評価や思い入れから考えると僕の代表作はカノホモで間違いないのですが「人間を書く」という面では僕はこの話の方が上だと思っていて、それを犬飼様に感じ取って貰えたのかなと感じました。書かれなかった人生を書けていたことを今後の創作への自信に繋げたいと思います。


-----(「曇り空のZOO」のレビュ返)-----

 アオヤマ 様

 もう何回も言ってますけどこの作品は本当に自信がないので「ずっと読んでいたくなる」と言って頂けたことは光栄です。舞台が動物園である理由は実は僕もはっきり言語化出来るわけではないのですが、最終話を読んで感じ取ったのならきっとそれで正解です。

 氷月あや 様

 深く読み込んで頂きありがとうございます。話が「父親」に寄ったのは確かに仰るような面もあるんですけど、ぶっちゃけ、男が手なりで書いたから男の子と父親に寄ってしまった面もあります。この作品はテーマの大きさに筆力がついて来なかったなあ。いつかリメイクしよう。

6件のコメント

  • 今「マンガでわかる心療内科」というマンガにハマっているんですが、その中で理不尽冷めに通じると思われる内容のものがあったのでこちらに失礼します。

    それによると、非論理的で意味の通らない思考のことを"連合弛緩"というらしいです。

    例を挙げると「誰からもメールが来ない→私は誰にも愛されていない」というような。冷静に考えるとそんなことないけど、本人にはその判断ができない。

    ということは、「彼氏が注文した海老天が汁を吸ってふやふやになっていた→愛が冷めた」も連合が弛緩してる傾向にありますよね。若干ゆるっゆるですよね。

    マンガで得た程度の知識なので私には専門的なことはわかりかねるのですが、そういった非論理的な思考は「一般的に疲れてくると起こる」と書いてありました。もしかするとこういうことは女性に限ったことではないのかもしれないですね。

    なんだか"疲れ"というパワーワードで捩じ伏せられた感はありますが、それを読んで私はなんとなくスッキリしました。恋の盲目さを加え、ガッと燃えてガッと視野が狭まっていたらそういうこともあるかもしれないですね。知らんけど。
  •  確かに「モルダー、あなた疲れてるのよ」ばりに理解できない事象をパワーワードでどうにかしようとしている感はありますが、連合弛緩を起こしやすい精神状態だったというのは一つの可能性ですね。

     ただ「誰からもメールが来ない→私は誰にも愛されていない」は「メールが来る→興味がある」を裏返して「メールが来ない→興味がない」を成立させたのだと論理的にメカニズムを理解できるけれど、「彼の頼んだ海老天丼がふやけている→彼が情けない」を成立させる論理的メカニズムはピンと来ない……。前者がジャンプだとすると後者はワープと言った印象があります。この矢印を論理で繋ぐのは不可能で、もう感情の問題でしかないんでしょうね
  • 初めまして。ツイッターでこちらの近況ノートを知り、やってきた者です。

    私は心も体も性別は女ですが、「海老天冷め」の心理について

    「そもそもその女性は、その男性単体に恋をしていたのではない」
    「彼女が恋をしたのは、素敵な男性と過ごす時間と空間だった」
    「見苦しい海老天によって、その時間と空間が汚された」
    「よって、冷めた」

    と感じます。

    化粧品の品質だけでなく、そのパッケージやコマーシャルによって作り出される「素敵感」を消費しているのと同じ感覚ではないでしょうか?

    思慮の浅い、あくまで感覚的な話で恐縮ですが。

    突然のコメント、大変失礼致しました。
  •  初めまして。twitterで行われていた考察もそのようなものが多かったですね。「シチュエーション萌え」という言葉を使っている人もいました。僕もそれが一番理解しやすいと感じます。好きな人のやることなら少々カッコ悪くても許せる「あばたもえくぼ」が適用されないどころか真逆に働いているので、彼のことが好きというか彼を中心として展開されるシチュエーションが好きだったのかなと。

     まあシチュエーション萌えにしては「奈良公園の土産物屋の二階のぼったくりみたいな食堂で天丼を食べる」ところまではOKだというのがいまいち解せませんが、その時点で少しもやっと来ていたものが汁だく海老天で爆発したと考えれば分からなくもないです。

     彼女は恋をしていたのではなく、夢を見ていたのだけなのかもしれませんね(上手いこと言った)
  • はじめまして。私も「理不尽冷め」エピソードを読むのが大好きな者です。
    海老天丼は「理不尽冷め」カテゴリにおいてトップクラスの面白さ、殿堂入りまちがいなしである!と私は確信していまして、いまだ廃れることなく己の心の中に大事にしまいこんでおります。
    知人数名にこのエピソードを紹介し、これを読んだ私がどれだけ爆笑したかを力説したところ、案の定、誰にもこれといってウケませんでした……!
    笑いのツボは人それぞれですから、自分と同じくらい笑ってほしかったというわけでなく「私はこういうのが大好き!」と伝えたかっただけでした。
    知人は海老天冷め彼女に共感を寄せるなんて事は当然なくて、不完全燃焼な恋の終わりにモヤモヤするだとか、落ち度のない彼が気の毒だとか、そういった諸々が気になって笑えない、という意見でした。

    私は実話・創作にかかわらず、ある程度の「不謹慎さ」や「未熟さ」のような一見すると負の要素が文章をより面白おかしくすると思っています。
    読み手が不快にならないラインというのが人によって違うため、一番面白いギリギリセーフなところを狙って書くのはまず不可能です。

    海老天が実話ならば、海老天彼女はこの話を書くのに相当勇気が要ったのではないかと想像します。
    面白くしようと狙ったとは到底思えません。
    だから余計面白いと思うのです。

    天然にまさるものなし、です!
    おそるべし、天然!!


    海老天彼女の思う「自分に不釣合いなほど理想の彼氏」という存在は、浅原ナオト様もおっしゃっているとおり、そもそも土産屋の二階にあるぼったくりみたいな定食屋に入ってはいけないし、そこでどんぶりものをオーダーするなどもってのほかです。もっと遡るなら(場所にフェイクを入れたにせよ)奈良公園でデートもダメなんでしょうが、そこは彼女の望みでしたね……。あぁ、理不尽~!
    ダメな要素は他にもあったと私も思うのに、彼女の中での決定打が、膨らんだ海老天だけだったなんて、とてつもなくいじらしいと思ってしまいます!
    この感情は性差かな?よくわかりません。


    そんな彼女の潔癖なまでの乙女心、ツッコミどころはあるにせよ、実は私はなんだかとてもよく分かります。
    私が同じ体験をすることはまずないのに、不思議と共感できてしまうのです。
    しかし仮に同じ目にあったとて、他人に話すことはないでしょう。たとえネット上でもです。笑ってもらうどころか怒られる想像しかできなくて怖いからです。

    それだからこの海老天彼女は凄いのだと思います。
    匿名の場だからこそ現われてしまった天才です。


    いきなり海老天冷め彼女への熱い想いを語ってしまい、すみませんでした。
    この話が本当に好きなので、まさか今になって話題にのぼっているなんて、興奮してしまい書かずにいられませんでした。


  •  雨森オドリ 様

     初めまして。控えめにいって天才ですよね、ミス海老天。僕も大好きなんですけどtwitterでも「彼氏の気持ちを考えろ!この(ピー)が!」みたいなマジおこ勢が結構いたのでリアル知人にウケないのも分かります。めっちゃおもろいのに……

     天然最強は間違いないですね。創作を疑っている人もいましたが仮に創作だとしたら天才過ぎるし、それにこのぶっ飛び感はやっぱり創作だとは思えない。「ありえない」からこそ「ありえる」という逆説的リアリティ。これぞ人間心理。理不尽冷め話の醍醐味です

     共感、出来ますか。何の落ち度もないイケメンを一人振り回していることには間違いないので、共感できる派の意見はなかなか表明しにくいですよね。でも実はtwitterの反応を見ていると、結構います。夢見がちなところや身勝手なところを端的に表現していて詩的で美しいとまで言っている人もいました。雨森様のいう「潔癖なまでの乙女心」「いじらしさ」を感じ取っているのだと思います。かくいう僕も嫌いじゃないですしね、ミス海老天。完璧とはほど遠くて被害に会う可能性がゼロだからかもしれませんが……

     この度はコメントいただきありがとうございました。「全く面識のないミス海老天ファンにコメントを貰う」という不思議展開で一連の騒動にオチがついた感があります。貴重な体験をありがとう、ミス海老天。貴女のことは忘れるまで忘れない
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