• SF
  • 詩・童話・その他

『SINGULAR BLADES』設定メモ3:シングラル&装甲技術

人型全領域戦闘機とその防御機構について。
毎度のことながら、今後の設定メンテで内容が変わる可能性は常にあり。
------

【シングラル】
 人型全領域戦闘機。サイズは凡そ縦軸20~30m程度。
 重力工学の粋を集めた機動兵器であり、兵器体系の常識や戦場の法則を打ち破る性能・戦法からSingular(特異点)の名を冠せられた。
シングラルのパイロットは俗に「アクター」と呼ばれ、これは後述の特殊な操縦方式に由来している。

 鉄壁の防御機構「IDeA」や「DiSc」を備え、真空炉<ケノンリアクター>を搭載することで大出力の兵装をドライブ可能。
かつ多数の斥力干渉器<リパルジョン・インターフィアラー>を全身に内蔵し、秒速10000km以上のスピードまで瞬時に加速する。
単機で惑星を滅ぼすことすら可能な恐るべき兵器だが、恒星間戦争の時代にあってはこれすら戦闘の一単位に過ぎない。

 シングラルが従来兵器に対して持つ最大のアドバンテージは操縦方式にある。
アクターの脳神経電位をフィルタリングし変換、機体の制御シグナルとして利用する脳介機装置の一種「QFI(Qualia Feedback Interface)」により、人間はシングラルを自らの肉体として操る。
換言すればこのシステムは、ニューロンを駆け巡る信号のすり替えを行い、巨大な人型兵器を「自分の身体である」とアクターの脳に誤認させることで成り立っている。

 QFIは操縦桿や物理スイッチ類を介さないため、アクターの意思が機体の行動に反映されるまでの時間がきわめて短い。
また直感的思考で操縦できるということは、現代の戦場で重要な電脳戦(ロジカルコンバット)に対応するための論理的思考リソースをより多く確保できるということでもある。
従来兵器と一線を画する反応速度に、素人でも乗りさえすれば動かせる究極のマン-マシンインターフェースを兼ね備えるシングラルこそ、宇宙空間において行われる超高速マルチタスク戦闘の速度域に、人間が唯一追随し得る兵器なのである。

 前述の通りパワードスーツの要領で直感的に操作できるため、従来の戦闘機などに比べ慣熟訓練期間が格段に短く済むという利点もある。
徴兵された一般人を促成で戦力に仕立て、物量で敵を圧倒するという前近代歩兵戦さながらの戦術が取れるのである。
 一般的な機体は斥力干渉器の集中した脚部が主推進機関であり、シングラルは自ら生み出す斥力を足場に、空間そのものを「蹴って」加速する。
この際、拡散する重力波面が局所的に電磁波のスペクトルを歪め、同心円状の光輪となって可視化される。


【IDeA】
 Ineatial Deflexion Armor(慣性偏差装甲)の略称。「イデア」と発音。俗に「斥力装甲」とも呼ばれる。
 リパルサー・テクノロジーを用いた防御フィールド形成技術であり、厳密には装甲ではないが、機体や艦体の実体装甲表面を鎧うように展開されるためArmorの名を持つ。

 理屈としては、防御主体から見て外向きの斥力フィールドを展開し、突入してくる質量体の運動ベクトルを偏向させる防衛機構。実弾兵器および粒子ビームに対し絶対的と言ってもよい防御力を誇る。
ある程度はレーザーなど電磁波も曲げられるが、質量ゼロかつ減速しないという光の特質上、波長が伸びるだけで偏向効果は薄い。
フォトンドライバーのように強力なレーザーに対してはダメージ軽減も微々たるもので、そのため対レーザー装甲(多態分光装甲)と併用しての二重防御が一般化している。

 排熱が追いつく限り恒星内部への潜行すら可能とする防御力は、反応弾など従来の主力兵器を悉く無力化した。
それゆえ兵器の火力インフレーションを招いた直接の原因ともされる。


【DiSc】
 Distortion Screen(歪曲障壁)の略称。「ディスク」と発音。
 IDeAの斥力フィールドを単方向へ集中することでシュヴァルツシルト面に匹敵する重力勾配を発生させ、光さえ弾き返す円盤状の空間歪曲面を形成する。
正面からは白い光の円に見えるが、裏側(つまり展開主体側)から見ると黒い円に見える。

 局所的に一般相対性理論を破綻させる障壁であり、質量弾、粒子ビームはおろか戦艦主砲など高出力のフォトンドライバーを以てしても突破できない。
破るには同等の斥力フィールドで重力偏差を補正する(DiSc同士をぶつけて相殺など)か、天体現象並みの高エネルギーで力押しに押すか、あるいは単純な斥力では防げない特殊な攻撃(マイクロブラックホールカノン、相転移砲など)を行うほかない。
 DiScを展開しながら体当たりするだけでも凄まじい破壊力になるため、攻撃手段として応用する事も可能。
歪曲空間を刀剣状に形成したディストーションスライサーなどが該当。

 弱点として、DiScはIDeAとの同時展開が基本的に不可能な点が挙げられる。
これは原理的な問題ではなく、一般的なシングラルの重力制御能と供給エネルギー量がIDeAとDiScの併用に耐えうるほどのレベルにないため。
艦船は総出力こそ高いものの、それ以上にカバーしなければならない面積が広すぎてDiScを局所的にしか展開できず、効果が薄い。
(展開面積に対し、DiScの消費エネルギーはIDeAの二乗倍で増加する)



【多態分光装甲<ポリモーフ・プリズマティック・アーマー>】
 一般に「耐レーザー装甲」と呼ばれるもののうち、現在の主流である汎用電磁装甲システム。
多態フォトニック結晶である編光晶体の特質を最大限に生かし、あらゆる波長の電磁波を吸収・反射・停滞・増幅・変調…と自在に制御する。
 恒星やブラックホールが発する強力な宇宙線も、至近距離で起きた核爆発の輻射も、問題なく処理できてしまう。
この装甲を光学兵器で破るには、エネルギーを極端に集中したパルスレーザーで装甲の光学処理能力を瞬間的に上回る必要がある。
現用兵器でそれが可能なのは、反物質を線源とするフォトンドライバーのみ。

 効率でいえば、実弾兵器や粒子ビームで装甲の結晶構造自体を破壊してしまうほうがよい。
が、この装甲を使用できる技術レベルであればIDeAも同時配備できる可能性が高い。
実際これらは複合装甲として、実弾/光学の二大火力に両対応する場合がほとんどである。
結果的に、実弾でIDeAを抜くよりはレーザーで多態分光装甲を抜く方がまだしも容易、という結論になる。

 微細電磁格子力場のクッションで衝撃を分散させられるため、単純な物理強度に関しても素材の物性のみで構造を支えていた旧式装甲より遥かに高いが、リパルサーウェポンに対しては気休め程度の防御力しか持たない。

コメント

さんの設定によりコメントは表示されません