こんな使い方をする日が来るとは思わなかった。
小説家ほしおさなえ先生(近刊『まぼろしを織る』、手触りの感じられるよい小説です)が主宰するオンライン文芸コミュニティ「星々」。そこが発行する雑誌『星々』に掲載される作品を募集するコンテストにて、佳作を受賞しました。
視覚障害者として現を生き、夢の中で《界図》を作る少女にとっての「地図」の話です。
興奮しているので、そのままに備忘録として書きあがるまでの話を書きなぐっておきます。
さて、このコンテストは今回で3回目、お題は「地図」でした。
(ほかに全然書けることがなかったので)プロフィールにも書きましたが、私は学生時代に地理学を専攻していました。
分野内分野にもよりますが、地図を一枚も描かずに卒業することはほぼない分野。
脳裏をよぎる「自分の得意なことで勝負しなさい」という旨の円城塔の言葉。
募集告知を見かけてからすぐに執筆を始めました。
最初は全然違う話を書こうとしていました。タトゥー師のところに「世界地図を彫ってほしい」と風来坊がやってきて、しばらく通ってくるもののやがて来なくなるという話だったと思います。
その物語の切れ切れの画面は浮かぶのですが、フックが出ない。
「地図」の魅力、欠点、切実さ……それを表すためのものが出ない。
(と書いていたら、今フッと頭に浮かぶものがあったのですが、それでうまく書き上げるには筆力が足りない気がします)
そうこうしているうちに迎えた締め切り日のお昼休み、なぜか降って来たのが前述のあらすじでした。
最初がちっともキマらない状態、通称400文字の壁が越えられたので、勤め先がフレックスなのをいいことにコアタイム終了後すぐ退勤し、書いた、とにかく書いた。
私は1時間に1200字ぐらいが限界の遅筆派、かつ初稿の日本語がドがつくほどのヘタクソ人間なので、直しの時間を考えると5000字部門の作品にしかならないことは分かっていました。
一度書き終えてから転結のおさまりの悪さに唸り、とりあえずご飯とお風呂で頭をリセットして、滑り込みで投稿しました。
文字数当たりで過去最短の書き上げスピードでした。
もちろんその弊害もあって、見返すと微妙な描写や意図と反した受け取り方をされかねない部分が散見されます。
自分がマイノリティであるから、万全を期してマイノリティが出る作品を書きたかった、とは思います。
でも、せっかく評価いただけたのは紛れもない事実なので、ご指摘あらばそれを受け入れて、次に活かしていきたいです。
最後に。
これを書くための全てのエッセンスを未熟な私に叩き込んでくれた、院生時代のポスドクTさんに感謝を。出身校へのご栄転、おめでとうございます。