今月は異世界ファンタジージャンルに注目。“ロボット”が登場する4作品をご紹介いたします! この異世ファン×ロボ、主軸に据えたものから脇に回して隠し味にしているものまで本当に多彩な切り口があるものです。書籍化されている作品も多数ありますし、まだ触れておられない方はぜひこの機会に!
 ここから話はいきなり変わるのですが、『カクヨムコンテスト11』の中間選考結果が発表されましたね。わたくしもエンタメ総合部門――巷では「闇鍋」、「魔境」と語られておりましたが――で読ませていただきましたが、全ジャンルを取り上げると膨大になってしまいますので特に強く感じたことに絞って所感をば。
 驚かされたのはSF作品の威勢でした。御自身ならではの切り口を探し求め、書き抜かれた作品が魅せる瑞々しい強かさは、SFジャンルが本当におもしろいと思い知らせてくださるばかりでなく、未来の明るさというものを実感させてくださるものでした。
 そして今回総合へ編入となった現代ダンジョンですが、まだジャンルとして若いこともあってか全体的に冒頭部でオリジナリティが出し切れておらず、成長過程にある感を受けました。
 悪役令嬢ものは多数の書き手さんが断罪という冒頭部を捻りに捻り、オリジナリティを絞り出すことで数々の名作を生み出しジャンルを育ててきましたよね。同じように創意と工夫を煮詰めに煮詰められたなら、この作品ジャンルもここからぐいっと伸びるものかと思うのです。
 また、以前も同じことを述べさせていただいたかもしれませんが、一部門に多数の応募作が集まるウェブ小説の賞において冒頭部は非常に重要です。ここでキャラのよさなりネタのおもしろさなり世界観の深さなりを押し出せていなければまず勝ち残れませんし、そこから勝ち抜けません。
 その重要な冒頭部で、キャラクターの名前を呼ばせるためだけの会話をしてはいませんか? 雰囲気を出したい意図だけで淡々としたプロローグを置いていませんか? 最後まで読めばおもしろいんだと、工夫を惜しんでいませんか? これは全体的なお話になりますが、三点リーダーと二連ダッシュの多用などで表現を放棄し、楽をしてはいませんか?
「読めるレベルではない」作品ははっきり言って皆無でした。それだけ書けているからこそです。もう少し意識していただくだけで、勝てる確率が大幅アップしますよ! ぜひ心のど真ん中に置いて勝負に臨んでいただけましたら幸いです。

ピックアップ

彼が駆るは量産機!プレイヤースキル頼みにジャイアントキリングを決めろ!

  • ★★★ Excellent!!!

 ルッタ・レゾンは前世の記憶を持つ以外、特別な才能も能力もない少年だった。そんな彼がアーマーダイバーの量産機ブルーバレットと出会うことで、始まるのだ。数々の強敵や難敵を、前世で培ったプレイヤースキルをもって討ち破り、ジャイアントキリングを成し遂げその名を轟かせていく英雄譚が!

 前世でプロゲーマーまでしていたロボットアクションゲーム、その愛機と同じ機体名を持つブルーバレッドと出会う。そんな王道ど真ん中なストーリーに強く目を惹き込まれるのは、ルッタくんの「命がけの好き!」が物語の芯に据えられているからこそ。迫られる選択は彼の芯によって説得力という信頼をいや増し、強大な敵に凡庸な量産機で打ち勝っていくカタルシスもまた高まって。読者は気づけば彼の背中に魅入られているわけです。この主人公の太さ、たまりませんね。

 そして彼の魅力を支える、細やかに作り込まれた世界観ですよ。それをうるさく感じさせず、且つ不足なく散りばめる構造の巧緻はすばらしいのひと言です。

 異世界×ロボットを最高に味わわせてくれる一作です!


(「鋼の異世界!」4選/文=髙橋剛)

最強精霊たちにまとわりつかれながら進める少年男爵の領土開拓生活!

  • ★★★ Excellent!!!

 樹海の魔獣から国土を守ることを代々の使命とするエンフィールド男爵家。新たな当主となったシキは守りの力である精霊の加護を受け継ぐのだが……前世の記憶を持つ彼は日本語で語る精霊の様から気づいてしまう。これはロボットだ! こうして総合支援AIのオルティエ始め換装式汎用人型機動兵器“スプリガン”たちとの樹海生活が幕を開けた。

『Break off Online』というソシャゲに登場する兵器のマスターとなって国防を担うシキくん。精霊ならぬAI兵器はすごいのですが、見どころはそう、物理的な強さよりも愛情の重さ!

 いや、彼女たちには日本語が理解できるマスターは貴重ですし、スキンシップ含めてどんどん過剰になっていくのも当然なのですが、その「当然」から始まるうざ絡みの重さが実に甘痒くて、そこへ絡んでくる若すぎる義母エリンさん始め他の女子もまた一癖で済まないクセを発揮してきて。シキくんの純潔が心配でつい次の章を確かめてしまう。これもまた主人公力ですねぇ。

 シキくんの明日がどっちなのか、それをぜひ追いかけていただきたく。


(「鋼の異世界!」4選/文=髙橋剛)

並行世界の侵略を防ぐ唯一の手段、それこそがダンジョン攻略!

  • ★★★ Excellent!!!

 見覚えのない部屋の中で目を醒ました上野群馬は、わけがわからないままゲームのようなミッションへ挑み、ダンジョンへ向かう。各国より選出される2名の“探索者”に自身がなってしまったこと、そして探索者だけが並行世界からの侵攻を防ぎ、干渉不能の障壁で完全孤立した自国を救う唯一の資源、魔石を獲られる存在であると知らないまま……

 まず目を奪われたのはオリジナリティの輝き。ステータスひとつとってみても視点の角度が絶妙です。

 しかも群馬さんを動かす物語的仕掛けが巧妙。細かに分けられたチュートリアルは彼をRPGさながらな冒険へと自然に導きますし、そこで綴られる彼の心情や行動が濃やかで、読者の心を鷲掴む。彼とヒロインの華さんの冒険は全国に生中継されていますが、視聴者がその瞬間なにを感じるかまで想像できる人物像の確かさ、すごいのひと言です。

 そしてだからこそ。彼が置かれた状況の真実と世界の現実とが剥き出されていく構成に震えを覚えずにいられません。

 惹き込む導入から続く濃密なドラマ、読み応えを求めるあなたにおすすめ!


(「鋼の異世界!」4選/文=髙橋剛)

アイテムボックスの中には人知を超えたトカゲが棲んでいて……!

  • ★★★ Excellent!!!

 ろくでもない前世を過ごし、なんの特典もないまま異世界転生したケンチは探索者として生き抜き、ついに「アイテムボックス」の能力を手に入れた。早速試してみようとした彼だったが誤って内に落ちてしまい、そして人の言葉を使うばかりかロボットを使役して文明的な居住空間を構築している青いトカゲ、マンマデヒクと出会う。

 見どころはなんといっても「マーちゃん初めて物語」! すごい力を持ちながらアイテムボックスという空間に封じられていたマンマデヒク=マーちゃんが、ケンチさんといろいろな場所に行って表す反応は本当に生き生きとしていて、実に微笑ましいのですよね。

 そしてケンチさんの生きる探索者世界もまた、やさぐれているくせに活気に満ち満ちていて、描写ひとつひとつから「生きてる!」感が力強く感じられるのです。

 探索者組合が宗教組織という設定も効いていますね。荒事と敬虔が融合して仁義へ昇華して。まさにタグにもあります“任侠”の風情を魅せてくれるのです。

 切り口のよさと意気のよさが織り成す小気味よさ、ぜひご賞味あれ。


(「鋼の異世界!」4選/文=髙橋剛)