小説を読むとき、次に読む作品を探す手がかりのひとつとなるのが「おすすめレビュー」です。作品の魅力を深く伝えるレビューには、未読の人にとっては興味をもつきっかけになり、既読の人にとっては作品の面白さを再確認したり、新たな視点をもたらします。カクヨムには、そんな思わず「いいね!」を押したくなるレビューがたくさんあります。

今回の特集では、2025年1月に投稿されたおすすめレビューの中から、特に「いいね!」が多くついたレビューをピックアップしました。
気になるレビューがあれば、ぜひ読んでみてください。新たな自分好みの作品に出合えるはずです。

また、「このおすすめレビュー良かった!」と思ったら、ぜひ「いいね!」を押してみてください。レビューを書く人の励みになり、良質なレビューが増えるきっかけになります。

そして、まだおすすめレビューを書いたことがない方は、作品を読んだ後にはぜひレビューを書いてみてください。あなたの感想が、誰かの「次に読むきっかけ」になるかもしれません。

ピックアップ

儚くもどかしい感情の揺らぎを繊細な文章で書き綴った美しい作品

  • ★★★ Excellent!!!

好きですと、まずは叫びたい。
とりあえず一章だけ読むか、とリンクをタップしたその手が最終話まで止まりませんでした。一気に読みました。それだけの魅力が詰まった作品です。

なによりも素晴らしいのが繊細で丁寧な文章。この作品の一番の魅力。すれ違い続ける二人の想いはとにかくもどかしいが、すっきりと整理された文章でそれを書き綴っているので、引っ掛かることなくすらすらと読める。感情の揺らぎをしっかりと捉えながら、一方で過剰に文章を飾りすぎない、この塩梅が実に美しい。
 個人的にぐっと来たのは、小夜の過去の描写だ。彼女の境遇が悲惨であることは疑いようもないが、それについて彼女自身はそこまで酷く悲観的でもない。「まあそんなものか」というある種の諦めをもって自身の過去を受け入れている。しかし、料理や物書きを覚えようとする中で、その傷の深さは彼女に影を落とす。痛々しさが滲むようなその描写に、読者としてつい胸が苦しくなる。しかしそれによって健気な小夜のいじらしさが際立ち、つい彼女のことを見守ってあげたくもなる。
 もう一つ気に入っている描写をあげたい。小夜が初めて弓彦に出会った際、「笑うと目尻に皺ができるんだな、と思った」という描写がある。これまで他人から敵意しか向けられていなかった彼女が、初めて自分のことをまっすぐに受け入れてくれる人と出会った。嘲笑ではない純粋な笑みを初めて他人から向けられた、という描写だと思うが、彼女の過去の痛みと現在感じた温かさをこれほどまでに端的に表現できることに心から驚いた。このような細かい描写がこの作者様は本当に上手い。

 ただ、いくら文章力が高いとはいえ、それだけでこれだけの長編を読ませることは難しい。それを支えるのが、物語の構成力の高さだ。
 二人の想いは常にすれ違い続ける。そのもどかしさはこの物語の核である一方、話が進展しないというストレスも確実に与えられることとなる。これが単なる男女間の物語であれば、そのストレスは読む手を止まる要因にもなり得る。ただこの作品は、その解決方法が上手い。
 小夜は人を愛したこともなければ、愛されたこともない。しかしそれは暁も同じで、それぞれ過去に深い傷を負っている。現在には二人の間を阻むものは何もないはずなのに、それぞれの過去がお互いの気持ちを強く縛り付ける。その過去の境遇やエピソードが、進展しない二人の関係に高い説得力を与えている。だからもどかしい二人の関係をすんなりと許容できる。この構成の仕方が非常に上手い。
 正直に言えば、序盤の方で「この設定は安易すぎやしないか」と思った部分があった。小夜の寿命延長に関する設定だ。神と人を隔てる絶対的な壁をあまりにもあっけなく取っ払われてしまったので、味気なく感じたことは事実である。しかし、この寿命という障壁をなくしてしまったことが、のちの二人の関係に大きな亀裂を走らせる。これがなければもっとすんなり和解できたかもしれないのに、これのせいで二人のすれ違いはさらに加速する。一見安易に見える設定をこのように活かすという手腕には、本当に素直に脱帽した。作者の手の平の上でまんまと転がされたという悔しさと心地良さが押し寄せてきた。
 すごく乱暴にまとめてしまえば、この作品は身分の違う二人が出会い、すれ違い、しかし最後には結ばれる。ただそれだけの物語である。世界や国を巻き込む大事件が起こるわけでもなければ、神々の世界を揺るがす禁忌に触れるわけでもない。小夜の人生を左右する出来事は起こるが、それこそ彼女と出会う前の暁からすれば、孤児が領主に娶られるなど取るに足らないつまらない出来事で、そこに神が介入する余地など一切なかったはずだ。
 しかし、そんな取るに足らない出来事に暁が怒りを露わにし、生の感情をむき出しにするからこそ読者の心は激しく揺さぶられる。この物語を通して領内の問題は確かに一つ解決するが、それはあくまでも副次的な効果に過ぎない。小夜と暁が結ばれても世界は何も変わらない。だからこそ良い。だからこそ二人の関係のみに、純粋に心を傾けて読み進められる。だからこそ二人が結ばれたことを素直に祝福できる。もうお互いに手放すなと、二人の美しい関係だけは何百年何千年と輝き続けていてねと願うことができる。こんなに幸せな物語があるだろうか。

 大変長くなりましたが、一言でまとめれば私はこの作品が大好きだということです。こんな取るに足らない感想を伝えるためだけに、だらだらと長文を書き綴って申し訳ありません。
 作者様のこれからの活動も応援する次第です。素敵な物語をありがとう。

セリフも状況もぶん回し主人公

  • ★★★ Excellent!!!

個人的に好きなところなのですが、インテリジェンスが高めなキャラクター(主人公や貴族階級のキャラクターなど)のセリフ回しがとにかく丁寧なんです。好きな人には突き刺さると思います。
身分の差は絶対。庶民と貴族は見ているスケールが違う。そんなことが読み取れる丁寧な文章です。

そんなきっちり描写された階級社会を状況ごとまるっとぶん回す、地に足つけてるつもりで天まで届きそうな主人公が大変面白いです。まずは1章だけでも読んで欲しい。素晴らしい作品です。

在りようとしてのヘビ

  • ★★★ Excellent!!!

この作品を読んでいると主人公について種族としての蛇というよりも、知恵の実を食べるように唆す方の象徴としてのヘビを思い浮かべる。
目的のために手段を選ばないし周りからは嫌われるし、でも不思議とうまく立ち回る様は見ていて飽きがこない。
物語としてはガチのヴィラン側なのでそっち方面が読みたい時の作品。

カクヨム読者もカクヨム作者も、読むべき短編

  • ★★★ Excellent!!!

作者に対して、今更にどれだけ称賛の声を送った所で
ただのファンレターになるので、この作品を読んでみようかな?と一瞬でも思った人の為に書きたい。

まず最初に、外伝かぁ、と思った人。
大丈夫、まったく問題ない。なんならフルメタを一度も読んだ事がなくても大丈夫。
この短編を楽しむにあたって必要な情報は全て短編内にある。
つまり、必要最低限で必須の情報が読めば分かるようになっており、そしてキャラクターが分かるのだ。
この時点で本当に凄い事なのだが、読んで実感してほしい。
セリフが少なくて、と思うかもしれないが、数行読んだ時点でその懸念は霧散するだろうし、最後まで読んでいるだろう。
いいから、読め。
とにかく今すぐ読め。
このレビューなんてブラウザバックして良いから。

シリーズありきのストーリーなんでしょ? と思ったそこの人。
何一つ問題ない、読め。
少女が一つ経験を積み、成長する、その過程を書いた物語で
恐ろしいほどに短編として完結している。
シリーズ読者は完全に出てくる名前にちょっとニヤって出来る程度だ。
数多の作者がやろうとしてもなかなか出来ない、キャラクターが行動によって変化し成長する様子を、実に巧みに書いている。
ほんの少しのネタバレにもならないようなネタバレを書くが
最期に少女が父親に声を掛けられるが、そのセリフが無くても読者は少女が成長した事を実感しているだろう。
父親の最後のセリフは作者の気遣いに他ならない。
なんだこれ、完璧か。

そう、実に完成度の高い短編なのである。
小説を書いている人間の端くれとして、奥歯ギリギリさせながら悔しいでも面白いと
ジタバタしながらレビューまで書けるほどに良く出来ているのです。

良いから読め。