そろそろ部屋を掃除しなければ、と言い続けて1ヶ月が経った担当です。あっという間に9月も終わり、今年も残すところあと3ヶ月ですね。なんてこと……と毎年のことながら言葉を失っております。時の流れのはやいこと。
今週の特集も幅広く、「激しい愛」にフィーチャーいたしました。重たい愛を描くヤンデレもののラブコメから、パンデミック禍のサスペンスラブストーリー、いつも一緒の親友が実はガチ恋のVTuberだった、というハートフルな百合ラブコメ、そして罪を犯した父とその娘の人生を描く重厚なドラマとさまざま。
ようやく「読書の秋」の言葉にふさわしい気候に近付いてきた今日この頃、皆さまのお好みに合わせて、作品を手にとっていただければ何よりです。
ヤンデレをテーマとした作品にどのような印象を受けるだろうか。ヤンデレ作品を読む人達は恐らく「ヒロインの重い愛」を一番に求めていると私は考えている。ということは、ヤンデレ作品は「ヒロインの重い愛」が表現されていれば物語の掘り下げや設定、登場人物の過去や生い立ち等、物語を展開していく上でかかせない重要な要素が不十分であったとしても成り立ってしまうのではないだろうか。
しかし、この作品は感情の移ろいを始め様々な要素が丁寧に表現されており物語に一気に引き込まれてしまう。ヒロインは物語開始時から重い愛情を向けているわけでなく、どのようにしてその感情を抱くようになったのかその過程も楽しむことができる。そして「ヤンデレ普段読まないよ」という人でも軽い気持ちでプロローグと1話を読んでもらいたい。
あ、そうそう書き忘れてた。ヒロインめっっっっっっちゃ可愛いよ!
主人公に優しくしてくれる人たちがいる反面、そうでない人は容赦ない。
物語に必要だとしても、どうしてこんな理不尽な目に遭わないといけないのか、吐きそうになった。しかし読む価値はあると思う。知る必要はある。
こんな理不尽で締め付けられているからこそ、作中の優しさや主人公に向けられた言葉に重みがある。
顔の良い女がふたり、自分の感情に鈍感で、お互いの距離感はバグりまくっている。そんなの何もおこらないはずがない!
ふたりの同級生になって行く末を見守りたい!
はよくっつけ!という感情と、いやこのままくっつかずもだもだしてほしい!という感情がせめぎあってしまう。
勘違いすれ違いハートフル百合コメディです。
この物語は「罪」を犯したジーンの物語から始まります。戦争難民収容所、実は「人体実験施設」に赴任したジーンが負う過去はあまりにも重く、善人であるが故に彼の苦悩は計り知れません。罪を犯すのは何も悪人だけではない。それでも、善人たる彼は世間一般からすれば悪人でしかないのです。それでもあまりにも善人である彼の、娘を愛する気持ちに嘘はありません。
犯した罪と罰の重さを読者に問いかける物語でもあります。だからこそジーンの行動に、過去に、目を背けたくなりながらも目を逸らせない自分がいるのです。
ジーンの負うものを見た一部の後で物語は一転して、二部ではジーンの娘であるアイリーンの物語が書かれます。
罪を犯した父を知った娘の苦悩が書かれるのです。
ジーンが真に悪人ではないからこそ首を絞めつけられるような苦しみがありますがそれを真っ向から書いているのです。
一人一人の登場人物を丁寧に描いた作品は頁をめくる手が止まらない程に深く、深く惹き込まれていきます。彼らの人生を、彼女の苦悩を最後まで見届けずにはいられないのです。
どうか、この物語を最後まで見届けて欲しいです。
残酷な思想を持つ人間だけが罪を犯すわけではない。ままならぬ中でそれでも生きようとした人間を愛おしく思う物語です。