インターネットエクスプローラーのサポートがついに終了したそうですね。一時はインターネットブラウザの代名詞的な存在だったのに、どんなものにも終わりが訪れるものですね……。だが、終わるものがあれば、新たに始まるものもある……ということで新作特集の「金のたまご」です。
今回はパーティーから追放された主人公がチート能力に目覚めたと思ったらさらに奈落の底に落ちる話や、軍人たちが現代兵器でダンジョンを攻略する話、マスク装着が当たり前の時代に甦る口裂け女の話など、かなり個性的な作品をピックアップ! またレビューの書き方を指南してくれる作品も紹介しているので、これを読んで是非あなたが推す作品を我々にも教えてください!

ピックアップ

チート主人公の『罪と罰』

  • ★★★ Excellent!!!

カクヨムオンリーのタグをつけておきながらこのタイトル……作者はなかなかいい根性をしている……。

物語は主人公である冒険者のライトがパーティーから追放されるところからスタート。一応「イージスの盾」というユニークスキルは持っているのだけど、ぶっちゃけ頑丈なだけで実用性が低いからね、仕方ないね……。しかし、これがただの盾ではなかった! このスキルの真の使い方に気づいた瞬間、追放者だったライトの冒険者生活は一変! ステータスを自由自在に操れる最強の冒険者が誕生する!!!!!

…………うん、どっかで読んだことあるな、こんな感じのやつ。僕はこういうの好きだよ……。しかし本作が真価を見せるのはライトがこの力に目覚めてからである。
タイトルを見れば予想がつくように、この後ライトは誤って人を殺してしまう。ギャグとかではなくガチの殺人である。

何とか現場から逃げ出したが、その後は罪の意識に苛まれ、その一方で自分が犯人だと気づかれているのではないかという不安にも襲われる。せっかく手に入れたチートな力も下手に使うと殺人犯だとバレてしまいそうでなかなか披露できない……さっきまで調子に乗っていたライトが、一気に曇っていく激しい落差が本作の最大の読みどころ。

この心理描写が実に絶品で、追い詰められた人間の不安定な心情を見事に描き出している。また自分を追放したパーティーの意外な秘密も徐々に明らかになるなど、ストーリー面でも先が気になる内容になっている。今後の展開が全く想像つかず、是非リアルタイムで完結まで追いかけたい作品だ。


(新作紹介 カクヨム金のたまご/文=柿崎 憲)

地獄と化したダンジョンを軍人たちは行進する

  • ★★★ Excellent!!!

突如現代社会にダンジョンが出現し、平凡に暮らしていた人々は突如冒険をすることに……という作品は無数にあるが、その中でも本作はちょっと異色。だってダンジョンを攻略するのが個人じゃなくて軍隊なんだもの! それも2065年の超ハイテク仕様!

というわけで少し近未来の日本を舞台に、日本情報軍に所属する的矢陸翔大尉が部下と共にダンジョンを攻略していく、ミリタリー×ファンタジーな一作。

ゴブリンやオークといったファンタジー世界の住人に鉛玉に浴びせていくのは実に爽快。偵察用にドローンが活躍したり、バンカーバスターを投下して複数のフロアをまとめて貫いたりと様々な兵器したかと思えば、祝詞を唱えてアンデッドを討伐したりとあの手この手で次々にダンジョンを攻略していく。

この津波のように押し寄せるアクションシーンの一方で、人間でありながらダンジョンを崇めるカルト集団、同盟国から送られてきた信頼できない外国人兵士たち、的矢にだけ聞こえるかつて殺したダンジョンボスの声……などなど、不穏な要素も数多く散りばめられている。

圧倒的火力を有しても戦うのはあくまで人間、的矢たちは血みどろの地獄と化したダンジョンを正気を保ったまま攻略することはできるのか!?


(新作紹介 カクヨム金のたまご/文=柿崎 憲)

マスク装着が当たり前になった現代にあの都市伝説が甦る!

  • ★★★ Excellent!!!

大きなマスクで顔を隠し、「私キレイ……?」と尋ねてからマスクを外して襲いかかる口裂け女。何十年も前から伝わる有名な都市伝説だが、近年は口裂け女業界にある問題が起こっている……今は誰もがマスクをしているのだ! 季節外れのマスクで顔を隠すという口裂け女の神秘性がすっかり失われている!

そんな誰もがマスクをする時代に口裂け女を描いたのが本作品。本作の口裂け女はただの口裂け女ではない。口裂け女に噛まれた者は感染して口裂け女あるいは口裂け男になるのである。ゾンビのようなものなのだが、ゾンビと違って皆マスクをしているせいで誰が感染したのかわからない!

かくして、暗躍する口裂け女によって街はパニックに陥り、その存在を知った中学生のロエリとレイン(どちらも本名)は口裂け女にされた友人を救うべく心霊ユーチューバー(教師)とともに奮闘する。

じわじわと街が侵略されている恐怖はあるのだけど、その一方で登場人物が妙にポジティブでピンチになっても明るい感じで会話をかわしていくので怖くなりすぎずに楽しく読める一作。ピンチになったらホームセンターに逃げ込んで武器を調達するというホラーのお約束を踏襲しているのも楽しい。


(新作紹介 カクヨム金のたまご/文=柿崎 憲)