ごめんなさい。実は担当、今までの人生でガールズラブに触れたことが全くありませんでした。しかし、以前から一体どんな世界なんだろうと興味だけはありまして。「せっかくならガールズラブに詳しい皆さんにおすすめを聞くのが一番だ!」とレビューを募集させていただきました。ご参加いただいた皆さん、本当にありがとうございました!
そして、集まったレビューは凄まじいほどの熱量のものばかり。作品の魅力がびしびし伝わってきました。みなさんの素敵なレビューに誘われて作品を読んでみると……これは新たな扉を開いてしまった予感!ぜひこの特集を機に、皆さんもガールズラブの沼にハマってみてはいかがでしょう?
ある事故で意識不明だった少女、美桜(みお)は、約一年ぶりに目を覚ました。 リハビリと経過観察のために入院生活を送ることになった美桜は、同じく入院している車椅子に乗る少女、真璃(まり)に出会う……。
物語は、主人公の一人である美桜(みお)が約一年振りに病室で目を覚ましたところから始まります。
一年も意識が戻らなかった原因は、自宅の階段から落ちたことだよ、と説明された美桜は、本当だろうか? と釈然としない思いを抱えます。
けれど、違和感は、他にも様々病院内に存在していたのです。
仕事で海外に出ているから、という理由で見舞いに来ない母親。
時折不自然な対応を見せる、顔馴染みの看護師。
初対面のはずなのに、やたら近い距離で接してくる少女、真璃(まり)。
さらには、病院内を彷徨い歩く不思議な少女。
これらの謎は、適切なタイミングで物語の中に配置されていきます。ごく自然にページを捲らせる引きの上手さと構成の巧みさは、特筆ものです。
さて、最初は真璃の対応を訝しんでいた美桜でしたが、次第に彼女が描く絵画と彼女の存在そのものに惹き付けられていって……?
本作、いわゆる百合、というジャンルに属する恋愛作品なのですが、ミステリーものが好きな方も、楽しめるのではないでしょうか。
もっとも、百合、とは言っても身構える必要はありません。女の子二人による甘酸っぱくもじれったい純愛ものなのですから。いちゃいちゃする二人の様子にほんわかさせられます。
章ごとに視点を変えつつ進行していく一人称は、しっかりとした描写をしつつも決してくどくなく、柔らかい地の文で綴られる文章に、ごく自然に情景が頭に浮かびます。
会話文と地の文の比率が、ライト文芸というジャンルにおける理想値に近いのでしょうかね? 兎に角読みやすいのです。登場人物の動きの中に織り込まれる心情に、見事なまでの伏線。書き手としても参考になる部分が多いです。
しかも驚いたことにこの作者さん。これが処女作なんだそうです。
これは最早、才能ですよ。ほんと、勘弁してほしいですね (苦笑)
珠玉の百合作品。この機会に触れてみませんか?
謎が謎を呼ぶ展開に、またきっと、彼女たちに逢いに行きたくなることでしょう。
作者さんが「薄味」、「胃に優しい」と言うだけあって、するっといけます。
pixivに掲載されていた頃に完結まで読んでいるので、最後まで読んだ上で言います。
強いです。シンプルに。
胃に優しいと仰っていますが、確かに胃には優しいです。
世界最高級の米とエベレストの雪解け水(なんだそれは)を用意して、最強の和食料理人に作らせたお粥って感じ。
多分、最後に千年くらい昔のバチクソ高級な梅干しが乗ってる。
ご本人の言葉を解釈すると、当たり障りのない、読みやすい、ということでしょうが……それってつまり、余計な味付け無しでブン殴ってきてるんですね。
こんなの最強でしょ。
みんながお化粧で頑張って可愛くしようとしてるのに、すっぴんで周囲を公開処刑しながら歩いてるヤベェ美少女みたいな作品。
押し付けがましく無い、というか普通に読んでるだけじゃ気付かない気配りが満載です、多分。
正直言うと、私もよく分からないんですよね。ただの読者なので。
何気なく出された器も実は200万くらいするんですソレって感じの。
スプーンとかこっそり御神木でできてそう。
百合小説を読んで一回でも嫌な気持ちになったり辛くなったりしたら死ぬ奇病に罹った人が「どうしても百合小説を読みたい」と言ったら、この作品を勧めます。
キャラの名前がお母さんと一緒とか、よほど特殊な事例でも無い限り、きっと最後まで読み切れるでしょう。
え? 書こうと思ってたものが似てる上に、これより上手に書ける気がしない?
……よしわかった、一緒に集中治療室行こうな。
謎めいた香の存在感が際立っている。
戦後間もない頃であれば、まだまだ親の意向によって見ず知らずの男性との結婚を強いられることは、ままあったでしょう。とすれば、香の取った行為は、自らの愛情の永続を願ってのものだったのでしょうか。
そこをまさに香らせながら物語は意外な方向に転がり出します。この転がり方のキュートさと奇抜さが、おぼろさんの持ち味ですね。
風吹くや隠れ顔なる乙女椿 (楠本憲吉)
乙女椿はまじまじとは見られない魅惑があって、本作にもその設定が生きていると思います。
ちなみに作中に話が出てくる親指姫って、最後に幸せになりますが、それまで出会ったヒキガエルやコガネムシたちを踏みつけ犠牲にしているという批判がありますね。香もそうなのでしょうか。
それから、椿はふつう枯れる前に落ちますが(落ち椿)、乙女椿は落ちずに枯れると言われます。香と玲子は枯れていても、まだ落ちていないのかも知れませんね。
いい…。
浸るのはこのくらいにして真面目に語ります。
ごく普通のJKだった主人公はある日、年下従姉妹を守るため事故に遭い瀕死の重傷を負ってそのまま意識を失ってしまう。
10年間意識を失っていた主人公が次に目覚めた時目の前に現れた美女。それは成長し(身体的に)年上の存在となった従姉妹だった。
事故に遭う以前に従姉妹と交わした何気ない約束。
しかし主人公が思っていた以上に当時から「ガチ」だったためそれを完遂してしまっていた従姉妹。
お互いの想いに多少の(?)温度差がある二人の織り成す日常物語。
成長し恐らく完璧超人と呼んで差し障り無さそうな存在になった従姉妹が、主人公の前では10年前のお姉ちゃん大好きっ子に戻るのが微笑ましくてキュンキュンきます。
そんな従姉妹に翻弄されたりしたりする浦島状態な主人公も、変化に戸惑いつつも自分に向けられた想いに誠実に向き合っておりとても良い。
主人公が眠っていた間に世間にとある大激変が起きていた事もあって、環境や周辺諸々の問題による二人への大きなトラブルは生じなさそうなのも安心できる。
これからも2人の甘々な日々が楽しみです。