今回の特集の四作品は自分に身近な題材から個人的に刺さった作品を選んでみました。例えば、いまではライターをしている私ですが、前職はSEで大学ではプログラミングを専攻していました。当時は、ちょっと社畜と呼ばれてもおかしくない勤務状況でしたねぇ……。それと実は母親が地方公務員で、幼い頃からいつも仕事で忙しくしていたのを見て育ちました。公務員は毎日定時退社できる安定した職業なんていうのはデマですからね。歴史好きで、NHKの歴史番組や大河ドラマはよく見ています。江戸時代と、産業革命の時代が好きですね。マイナーな題材に思えても誰かにとってはメジャーなもの。自分の身近な題材や好きをつきつめればそこに個性が生まれると思います。独特な個性もそれはそれで味があっていいものですよ。

ピックアップ

惑星の余命3ヶ月。社畜が挑む惑星救済プロジェクト。

  • ★★★ Excellent!!!

 現代日本で社畜だったコウジ・アラカワが転移したのはSF世界の輸送宇宙船スケイル号。宇宙海賊に襲われ、未知の惑星へと墜落したコウジたちは太古の惑星管理AI・ユニに救われる。ユニの管理する古代遺跡を拠点に命を繋いだコウジだったが、ユニから余命3ヶ月の惑星を救って欲しいと頼まれ……。

 異世界転移した社畜が、人型ロボットに乗り込んで惑星を喰らう宇宙生物と戦うSFバトルものです。

 主人公のコウジは、どんな雑用でも率先してやる社畜の根性の持ち主。だけれどそこには幼い頃の悲しい境遇も絡んでいて、ときに行きすぎた自己犠牲が社畜の域を越えていて驚かされます。

 惑星のコアに寄生する宇宙生物ティンクルイーターを討伐するため、コウジが中心となって立場も利害も対立する者たちをまとめて立ち向かう。

 原住民のグーマ族、スケイル号の船長ジュエルや船員たち、そして自分たちを襲ってきた宇宙海賊まで集めてワンチームを築いていく姿は、なんと日本のサラリーマンらしいことかと思ってしまう。

 宇宙生物よ、お前の敗因は日本の社畜を敵に回したことだ。社畜の戦いぶりを是非ご覧あれ。


(新作紹介 カクヨム金のたまご/文=愛咲 優詩)

世界の謎を科学で解き明かす。歴史は壮大なヒューマンドラマ

  • ★★★ Excellent!!!

 歴史の授業に興味を持てない高校2年生の山口ユキと、歴史少年の星野宇宙(ソラ)が、数千万年に遡る壮大な人類史を紐解く歴史談義を始めます。

 紀元前四〇〇〇年頃に歴史に突然現れたシュメール人の謎。実は謎でも突然でもない?
 ピラミッドは当時の技術や道具で建築可能?
 数学的に地球から観測可能な銀河に宇宙人はいない?
 アトランティスやムー大陸は地質学的にありえない?

 UFOやオカルト、陰謀論に惑わされる純朴なユキを、毎回星野君は科学的な解釈で導きます。

 一見すると夢もロマンもないようだが、ひいてはなぜ歴史を学ぶのか、人類はどこから来てどこへ行くのか。過去の世界を理解することで現代の世界が見えてくる。未知を解明して、未来へと繋げていく星野君の語りに歴史の奥深さと科学の面白さを感じます。

 歴史は数千万年にもわたって繰り広げられるヒューマンドラマの物語。私たちもその登場人物の一員なのだと思うと、退屈な歴史の授業にも興味が沸いてきます。


(新作紹介 カクヨム金のたまご/文=愛咲 優詩)

女子高生とプログラム。今日からはじめるプログラミング入門

  • ★★★ Excellent!!!

 私立くすのき女学院高等部に編入した星野あかりは、プログラミングの授業で早乙女ルイに助けられたことで、彼女の所属するプログラミング部へと入部することに。しかし、プログラミング部はスクールカースト最底辺のFランク部だった!

 主人公のあかりは料理好きな普通の女の子、同級生の早乙女ルイは、コンテストで優勝経験もある天才少女だが、ある時を境に不良へと転向した問題児。正反対な二人だが、いつも元気で無邪気なあかりにヒネクレ者だが根は優しいルイが振り回される姿が微笑ましい。

 プログラミング部に入部したせいで、リア充の集まるチアリーディング部に目の敵にされたり、学校のWebサイトの改ざん事件の容疑者にされてしまったり、プログラミングのハッカソンに参加させられたりと、さまざまな事件や騒動に遭遇していきますが、初心者のあかりがプログラムを作っていく楽しさや面白さに満ち溢れています。

 いまやプログラミングの授業が小学校で必修化する時代、プログラミングをテーマにした学園モノの先駆けとなるかもしれません。


(新作紹介 カクヨム金のたまご/文=愛咲 優詩)