さあ、今回から始まりました『カクヨム公式レビューをねらえ!』、その先鋒を務めさせていただきます、わたくしですっ!
226本ものご応募をいただき、五体投地でありがとうございます! 本当は全作にレビューをつけさせていただきたい気持ちで満ち満ちているわけですが……涙をこらえまして、みなさまにぜひ出逢っていただきたい4作品を厳選いたしました。
それにしてもですよ。エッセイ・ノンフィクションとひとくくりに言っても本当に様々な切り口があるものです。普段のレビューでもこちらのジャンルはよく取り上げさせていただいているのですが、こうして向き合うことでまた、新しい発見をさせていただくことができました。その学びを元に、今後も魂込めてレビュワー道へぶっ込ませていただく所存でございまする!
と、毎度毎度なわたくしのどうでもいい意志表明はさておきまして。レビュー本編、行かせていただきますー。
10日間アメリカ大陸横断の旅、その中で「みんなが変態になれば世界は平和になる」となぜか悟りを得た著者さんによる、超壮大で超ささいなエッセイ!
きっかけは著者さんの既存作をご参照いただくとしまして、こちらが結局なんなのかと言えば、1話完結型の小話です。たとえば好きなスポーツを愛でたり、悩みへの対処を論じたり、経験則を語ったり。
小話ですから、ひとつひとつはささいなものです。ただ、そこへ「変態」を掲げる著者さんの心情や信条がマシンガンのように撃ち込まれることで、ささいな話は思わぬ方向へ流れていって、最後にすとんとオチるんです。
そうです、なに言ってんだこの人? と思わせられずにいられない文字列のすべてが、実は太い伏線になっているのですよ。その有り様はまさにパンチライン! 文章の小気味よさというものを、これでもかと味わわせてくれるのです。
主張、妙味、余韻。全部乗せな言葉の連打に、ぜひともノックアウトされていただきたく!
(「カクヨム公式レビューをねらえ!」Vol.01/文=髙橋 剛)
他の書き手さんが書き上げた作品をさらに磨き上げる作業、それこそが添削! 手間のかかるこの作業をボランティアで担う著者さんが綴った、添削者視点からのお話です。
普段意識することのない視点なだけに、読み物としておもしろい! しかも執筆における注意点が各話でまとめられていて、実に興味深いのです!
書いているときはどうしても前のめりになりがちなもの。著者さんはそのうつむいた顔をやさしく引き起こし、文章の「読みやすさ」を軸に文章の構成法を説いてくださっているのですね。実例がふんだんに挙げられた上、正誤ばかりでなく文章というものの印象にまで解説が及んでいて、理屈的にも心情的にもすごくわかりやすいんですよ。この細やかにして濃やかな校正もとい構成に著者さんの深い文章愛が感じられるのもすばらしい。
こうした基礎的なことをやわらかく解説してくれる指南書はなかなかありません。自作のブラッシュアップのため、書き手さんはこの機にぜひご一読くださいまし。
(「カクヨム公式レビューをねらえ!」Vol.01/文=髙橋 剛)
群雄が鎬を削り、ドラマの花咲かせては散らしてきた戦国時代。そこに生きる武将や他の者はどのような姿をし、どのように考え、どのように生きたのか? さまざまな角度から解かれる「戦国」の形!
こちらは数ある江戸知識ものではなく、家康公がまだ戦場で右往左往していた戦国時代の四方山話が書かれた作品となります。
それだけでも希少価値は高いのですが、注目していただきたいのは戦の合間の日常の様子であり、当時のスタンダードな風俗であり、人々の作法や所作なのです。
キャラクターへ命を吹き込むには、その世界における「当たり前」が不可欠。その当たり前が軽やかに描き出されているのは本当にありがたい! 戦国風の洗髪にチャレンジした著者さんの経験ネタや、軍馬についての細かな解説など、読み物としてのおもしろさも抜群です。
戦国とは武将ばかりで成るものならず。歴史にちょっと興味がある方、そして戦国ものを書かれようとされている方に強くオススメしたい一作です。
(「カクヨム公式レビューをねらえ!」Vol.01/文=髙橋 剛)
プロの漫画家という道から降りて小説という新たな道へ踏み出した著者さんが、経験から得たものや飾らない心情を綴ったエッセイです。
人には転機があります。著者さんの場合、それが生きる道までもを転じることになったわけですが――人には適職と天職とがあり、どちらを選ぶかで大きくその先が変わるのだと、著者さんの経験談は教えてくれます。
そしてここが重要。これまで積んできた経験は、けして無駄なものではないのだと。
著者さんは作中で漫画家時代のお話をしておられますが、本当に希有な経験をされてきています。さらにそれが書き手の筆にどう生かされているかも透かし見えてくるのですよ。
エッセイは書かれている“人”の有り様が見えるほどおもしろいものですが、様々な経験を積んだ著者さんの視点や物事の捉え方、それによって綴られる言葉のひとつひとつ、魅せる域にまで達していて美しいのです。
花も嵐も踏み越えて、小説道行く創作者。その背中に魅せられていただけましたら!
(「カクヨム公式レビューをねらえ!」Vol.01/文=髙橋 剛)