ラストが秀逸な小説って何度も読み返したくなりませんか。どこに伏線があったのだろうと、二回目の方が真剣に読んだりすることもしばしば。欲を言えば、最後の一文でストーリーがひっくり返るような「どんでん返し」があると最高です。
さて、今回はミステリージャンルの短編小説からおすすめ作品を選びました。切ない話、心温まる話、不思議な話と、テーマや切り口は色々ですが、オチの巧みさは共通しています。いずれも一万文字以下なので、細部に注意して読むのをおすすめします。エンディングの妙を味わってみてください。
父子殺人事件の背景を探る主人公の気持ち、仕事との線引きをしながらも、どこか予感めいたものがあったのでしょうか。
もう少しだけ気づくのが早ければ……そう思えてなりません。
とても心情描写が丁寧で、観察力の長けた文章で、最後まで読まずにはいられませんでした。
幼い我が子の七夕の願いを叶えようとする母の奔走する姿はまさに愛情そのもの。夫婦で娘の為にと考えた『星祭りの怪盗』は、娘の本当の願いを知るきっかけでもあった……。
この物語の中には人間の素晴らしさが描かれていると思います。父の愛、母の愛、そして娘の愛……親子三人が幸せであることを願わずにはいられない、そんな短編でした。
因みにこちらは作者さんの作品『いろのひめごと。』中に描かれた七夕祭りの別視点です。とても温かく優しい気持ちになれるお話なので、是非とも両方読むことをお薦めします。物語の世界は更に広がりますよ?
愛犬と共に朝の散歩をする主人公。すると、朝早くに神社にお参りする女性を見かける。彼女の事が気になりつつも、日課を続けていると、ある日彼女が血相を変えて石段を下りてきた。
次の日、新聞にその神社で殺人事件があったという記事を見て…!?
日常にふっと入り込んだ恐怖。
彼女は殺人犯なのか、それとも…?
病弱で屋敷から出られない少女カタリナと彼女を毎週診察に来る医師シモンの心温まる交流、のはずなのですが、シモンの愛国心が、カタリナの父のカタリナへの親子愛が、そして誰よりカタリナの無邪気な笑顔が平和を叩き壊していく──
けれど物語は続いていく。
終わらない。
歴史はけして終わらずに続いていくのです。
その輪の中に囚われたシモン医師はアイザックの言うとおりきっと永遠に輪の中をぐるぐると回り続けるのでしょう。これほど滑稽な悲劇があるでしょうか。
カタリナもまた物語の最後を知らないままだったかもしれません。それは果たして幸福なことだったのか、それとも……
完全犯罪は、むずかしいです。
目撃者、警察、いろいろな目を掻い潜る必要がありますし、
人間は生きている限り、目に見えない色々な痕跡を残します。
事件が始まった瞬間から、犯人が死ぬまでの間。
ひとたび犯罪に手を染めれば、逃亡劇の始まりです。
どこで足がついてしまったのか。
事件の始まりから、終わりまで、
目をそらさないようにしてください。