事故死に見せかけた殺人事件。その犯人の偽装工作と、犯人にたどり着いた警察の捜査が描かれた作品。シリアスな視点で思わず手に汗握ります。逮捕につながった犯人の小さなミスも何気ない小さなミス。こういうミスを全くゼロにして犯行を成すのは難しいんだろうなぁと思いました。ただ金田一少年の事件簿の犯人たちの事件簿を読んでいると「トリックの粗を探すのヤメテ」ってギャグっぽい想像をしてしまう(笑)
このレビューは小説のネタバレを含みます。全文を読む(108文字)
過剰な情報で読者を惑わす罠など存在しません。ただただ、最初から最後まで緊張感を維持して一気読みすることを、強くお薦めします。
殺人を試みた犯人。前半にて殺人の直前と心情が描かれて、後半にて警察が犯人を問い詰めます。つまり、前編が問題編、後編が解答編なのです。…………最後のセリフが、インパクト強い!気づかなかった……ちっとも気づかなかったよ私は……!!!
完全犯罪は、むずかしいです。目撃者、警察、いろいろな目を掻い潜る必要がありますし、人間は生きている限り、目に見えない色々な痕跡を残します。事件が始まった瞬間から、犯人が死ぬまでの間。ひとたび犯罪に手を染めれば、逃亡劇の始まりです。どこで足がついてしまったのか。事件の始まりから、終わりまで、目をそらさないようにしてください。
『殺人』とは人間が動いているという『事実』です。殺人者は自らが望まぬ限り絞首台にはいきたくないでしょう。だからこそ極めて精緻な『知』を準備する。それは動いている『事実』を消すことに努めることにつきるでしょう。本作品は短編ながらも読者にそうしたミステリーとしての芳醇な香りを充分含んだ秀作だと思います。是非、これから朝の一日が始まる前に読んでいただければ自分に見落としがないよう注意深い一日が過ごせるかもしれません。日南田ウヲ
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