ああ、落ちる、落ちていく──彼が善良だったばかりに。

病弱で屋敷から出られない少女カタリナと彼女を毎週診察に来る医師シモンの心温まる交流、のはずなのですが、シモンの愛国心が、カタリナの父のカタリナへの親子愛が、そして誰よりカタリナの無邪気な笑顔が平和を叩き壊していく──
けれど物語は続いていく。
終わらない。
歴史はけして終わらずに続いていくのです。
その輪の中に囚われたシモン医師はアイザックの言うとおりきっと永遠に輪の中をぐるぐると回り続けるのでしょう。これほど滑稽な悲劇があるでしょうか。
カタリナもまた物語の最後を知らないままだったかもしれません。それは果たして幸福なことだったのか、それとも……