さーて、今月のおすすめ4選は!? 戦いもしくは闘いをテーマに含んだ作品を選ばせていただきましたー!
あらためて確認をさせていただきましたらば、今回は捻りの利いた作品がそろいぶみですね。エンタメにおける戦闘は不変にして王道のテーマではありますし、だからこそさまざまな捻り具合で魅せていただけるのがうれしい! こうした喜びと真っ先に出逢えることはまさに、レビュワーだからこその役得です。
と、前置きはこのくらいにいたしまして。それではレビュー行ってみましょうー。

ピックアップ

心なきケモノは生まれ変わる。心ある人間として――!

  • ★★★ Excellent!!!

衝動に突き上げられるまま壊し、殺し、食らうばかりの“ケモノ”がいた。しかしケモノはより大きな力を持つ“モノ”と対して破れ……与えられた安らかな眠りの後、人間として転生する。

破壊のケモノが人となり、それまで持ちようのなかった「心」を育んでいくお話なのですが! いろいろ見ていただきたいのですがその中でもまず、主人公のティグルくんを見てください!!

物語を進めていくには主人公に目標や目的が必要です。だからこそ、自分の理想の有り様を思い定めて未知なる未来へ踏み出していくティグルくん、「主人公はどうあるべきか?」の問いに対するひとつの解答かと思うのですよ。線の太い主人公はそれだけで千金の価値があります。

そしてリズムよく、オリジナリティあふれる文節(ふし)回しが気持ちいい地の文章もいいんですよねぇ。バトルシーンの“間”が実によく表現されていて、たまらない臨場感を演出しています。

主人公がどんと中心に据わった闘いと成長の物語、どどんとおすすめです!


(「戦いか闘いか!?」4選/文=髙橋 剛)

自由のため、誇りのため、立てよ川崎市民!

  • ★★★ Excellent!!!

横浜市を第二の東京とすることを目論む横浜市長は、強引な手を使って川崎市を併呑し、市の勢力拡大を図る。しかし、心ある川崎市民はそれを受け入れなかった! 一定の暴力を容認する新法『闘争隊法』の下、川崎とその周辺域の反横浜勢はゴム弾銃で武装し、果てない闘争の幕を開ける!

登場人物が譲れない理想と心情を振りかざし、フルスイングでぶつけ合う様、実に熱いんです! 80年代の大友克洋さんや押井学さんの作品さながらな学生運動のにおいもするのですが、そこから血生臭さを抜いて妙なる生臭さを演出しているあたりも本当に興味深い!

そして、要所要所に時事を練り込んだ舞台構造と物語設定は緻密のひと言なんですけど、それが逆に騒動を馬鹿馬鹿しく盛り上げてくれていて、作品の醍醐味を「トンデモでーす!!」と全力で知らせてくれているのが小気味いいんですよねぇ。

ボタンひとつ掛け違え続けたらこうなるのでは? と思わずにいられない、細やかで濃やかな抗争劇!


(「戦いか闘いか!?」4選/文=髙橋 剛)

説教かざして打つ撃つ討つ! 無敵の人、ゲーム世界に顕現!!

  • ★★★ Excellent!!!

超不人気ホラーゲーム動画配信者、六道久(38)。今日も新作SFホラーゲーム『デス・スペースシップ』のプレイ動画を撮り始めた彼だったが――突如アラーム鳴り響き、見えなくなった目をこすろうとした手が固いなにかに当たる。ここは今までいた家ならぬゲーム世界であり、久はパワードスーツをまとってクリーチャーと戦う主人公となっていた!

内容はゲームトリップものとなりますが、普通ならチートでゴー! とか、ゲームヒロイン集めてハーレムうはうは! とかが内容のメインになるじゃないですか。もちろんこのお話にも要素はありますが、注目していただきたいのはそこじゃありません。お話の軸が「説教」なところなのです!

なにせ主人公がいちばん最初に決めることが「クリーチャーを殲滅しつつ、ゲームのキャラクターに文句を言うこと」ですからね。たとえ見慣れたネタであれ、捻りようによって唯一無二の魅力を香らせるものだなと感心いたしました。
敵どころか味方も赦さぬ捻りの利いた説教戦記をあなたへ!


(「戦いか闘いか!?」4選/文=髙橋 剛)

伝統派空手の徒が今このときの空手を語る!

  • ★★★ Excellent!!!

沖縄空手三大流派のひとつにして空手護身術の四代流派のひとつである剛柔流。それを15年学び、指導員をも務めた著者さんが、空手にまつわる小さな疑問や謎へアンサーする!

というわけで、空手がテーマのエッセイ調な日常の謎(?)ですね。空手の発祥はどこか? から始まり、その内容は章が進むごとに深部へ踏み入っていきます。

その中のひとつを例に挙げれば、「空手はキックボクシングより弱いのか?」。ポイントはまさに、ずばりと答えているのが近代格闘技をも経験している伝統派空手の遣い手である点ですね。ふたつのものを正しく比べるためには当然、どちらも知っている必要があります。ですから、それをきちんと踏まえた上で「一対一ならどちらが強いか?」を語る本作には大きな意義がありますし、空手という“道”を語ることに逃げ込まない論の潔さと強さに心打たれるのです。

――いつになく真面目に語ってしまいましたが、読み物としても考察用資料としても一読の価値ありありな一作ですー。


(「戦いか闘いか!?」4選/文=髙橋 剛)